【夏季トップインタビュー】三ツ星ベルト
池田浩社長
世界最適生産体制を推進
M&Aによる事業拡張にも注力
三ツ星ベルト 池田 浩社長
【足元の業況について】
今期(2024年3月期)の滑り出しとなる第1四半期においては、中国市場の停滞に伴って主力分野の一つである工作機械と射出成形機の動きが鈍化し、当社の一般産業用ベルトの販売も少なからず影響を被った。一方、米国では多用途四輪車向けなどの販売が持ち直しの兆しを見せており、昨年は半導体をはじめとする部材不足や顧客の在庫の積み上がりによって振るわなかったが、OEM製品に関しては復調の一途をたどっている。今期がスタートしてからも、原材料価格などが高止まりしており、先行きの不透明感は拭い去ることができないものの、今年5月に発表した通期業績予想の数値は据え置いており、下期にかけては主力需要分野の回復もさらに進む見通しであることから、第2四半期以降も市況や為替動向に振り回されることなく今期の計画必達に向けて気を引き締めて取り組んでいる。
【一層の効率化に向けた生産再編について】
ここ数年で大きな課題として浮上していた世界最適生産体制の構築については、各地の生産品目の見直しをはじめ、拠点間のバランスを考慮しながら効率化に重きを置いた再編を進めている。2025年度をめどにまずは第1段階の再編を完了させる予定であり、今年4月に稼働を開始したインドの新工場ではインド国内のおう盛な需要に対応していくとともに、タイ、インドネシアに続く伝動ベルトの主要な生産工場として、やがては輸出拠点としての機能も持たせていきたい。また国内においてはBCPも念頭に、綾部事業所において新たな生産設備とラインの増設を行っている。EV車の普及に伴って今後の内燃機関用ベルトの需要縮小が見通される中、EPS(電動パワーステアリング)やパワースライドドアといった次世代自動車向けのベルトの需要はますます拡大していくと見込んでおり、そういったニーズに的確に対応していくため、目下生産能力の増強に余念がない。EPS用の部材については、日系カーメーカーだけではなく海外メーカーからも多くの引き合いを頂いており、海外ではタイ工場においても、EPS用ベルトのライン増強を予定している。
【物流体制の整備については】
現在、名古屋工場においては伝動ベルト以外の搬送ベルト、建材、樹脂製品といった今後さらに拡販していきたい製品の生産を行っているが、物流面の新たな取り組みとして、新しいシステムを導入した自動倉庫の建設を進めている。2026年の完工を目指しており、これによって四国工場、綾部事業所で生産された自動車用伝動ベルトについてもひとまず名古屋に集約し、より効率的な供給に向けた一元管理を行う。またベルト製品の販売を担う三ツ星ベルト販賣においても、国内各地のしかるべき地域に倉庫を設置し、各営業所からの迅速なデリバリーを実現することで、お客様のニーズに的確にこたえていきたい。
【今後のさらなる拡大を狙う分野と製品は】
神戸事業所で生産している発泡射出成形による「エンジニアリングストラクチュラルフォーム(SF製品)」については厚肉樹脂の軽量化、複雑な形状への対応、寸法安定性に優れるといった特長が認められ、医療機器の筐体のほか幅広い分野での採用が進んでいる。今後も電子材料としての導電ペーストとともに、三ツ星ベルト販賣の営業担当者も一丸となって新たな需要先の掘り起こしに努めていきたい。また、M&Aによる事業拡張にも力を入れており、グループ企業の防水材の販売・施工を手掛けるネオ・ルーフィングが、今年2月に日本水研より土木防水工事に関する事業を譲受したことによって、高速道路の橋りょうの改修など社会インフラの補修工事における拡販を図る。そのほか農機用ベルトについては、コンバインなど大型農機用ベルトの製品開発を推し進めており、綾部事業所に試験システムも導入し、海外市場における採用に向けた取り組みを加速させている。海外展開の強化については、近年クローズアップされている食の〝安全・安心〟を背景に樹脂搬送ベルトは国内はもとより、東南アジアでの拡販にも力を注いでいる。2021年に設立した販売会社(PT・MITSUBOSHI BELTING SALES INDONESIA)によって当社の製品を現地で販売できる要件を満たしており、一層の拡販に向けてまい進する。
【今後の展望と企業としての信条を】
世界的な潮流として近年、ESG経営が重要視されているが、当社としては以前から「人を想い、地球を想う」という基本理念に則り、事業活動を展開してきた。今後も〝高機能・高精密・高品質な製品の提供を通して社会に貢献する〟という指針を大切に、地球環境保全の取り組みにもさらに注力し、お客様と社会に必要とされる企業として事業の歩みを進めていく。