新春トップインタビュー2024
住友ゴム工業
先進性さらに発揮
変化先取りで新価値創造
【2023年を振り返って】
世界的な金融引き締めと地政学的な緊張によって一部の地域では弱さがみられたものの、事業を取り巻く環境は持ち直しの動きが表れた一年であった。国内経済においては、賃金上昇を追い風に景気回復への期待を抱いていたが、為替変動や物価の上昇などで不確実性が高い状況が継続した。しかしながら、経営環境自体は海上輸送コストが高騰した一昨年との比較では大きく好転しており、原材料価格やエネルギーコストの上昇にも一服感が見られることから、大幅に改善が進んだ。こうした中、当社としては市場ごとの動向を見極め、価格とのバランスを取りながら高機能商品の拡販に注力し、構造改革と将来を見据えた〝種まき〟を積極的に推進してきた。昨年は新中期計画のスタートの年であったが、計画の着実な実行と収益改善に全社を挙げて取り組んだ結果、確かな成果を収めることができた。中計推進にあたっては、社員と思いを一つにして臨むため、国内拠点を回って対話を重ねてきた。各拠点の職場を視察する中で、改めて当社の現場の底力と目標達成に向けた強い意志を感じ取り、大いに意を強くしている。今後も一層の改革と改善に取り組んでいくとともに、将来のEV化への対応やサステナビリティ長期方針で掲げた施策の実行に必要な投資をしていくため、長期的に利益を出し続けることができる経営基盤を作り上げていく。
【中期経営計画の進ちょく状況について】
2025年までは既存事業の選択・集中と、成長事業の基盤づくりに注力する。ターニングポイントとなる2026年以降は、事業ポートフォリオの最適化と成長事業の拡大により、2027年の目標の確実な達成を目指していく。新中計では北米事業の改善を最優先課題と位置付けており、生産性改善を進めるとともに、高機能商品の生産構成を高めていくことで利益の向上につなげていく。北米市場で人気が高い4WD・SUV専用タイヤ「ワイルドピーク」シリーズの増販と海上輸送コストの低減により、北米事業全体では計画通り2023年は黒字化を達成すると見込んでいる。
既存事業の選択と集中については昨年10月、市場が縮小傾向にあるガス管事業からの撤退を発表した。これによって、成長事業へとリソースを集中させていく。
運営・組織体制の再構築については、今年1月にタイヤ事業本部を設立した。製造・技術・販売の一気通貫体制を敷くことで、迅速な事業推進を実現させる。タイヤ事業における責任者を明確にし、ベストなタイミングで全体最適な判断を可能にする組織体制を整えていく。また、11社ある国内タイヤ販売会社を1社に統合し、カンパニー体制へと移行することで、自動車関連ビジネスを取り巻く環境が大きく変化していく中、迅速に変化に対応できる組織づくりに専心する。
【新たな技術について】
構造改革に取り組む一方で、成長事業の基盤づくりとして将来の事業拡大に向けた種まきを進めている。その中の一つが昨年、ジャパンモビリティショー2023で初公開した独自技術「アクティブトレッド」だ。水や温度などに反応して性能がスイッチするという画期的な技術で、EV向けをはじめとする次世代タイヤ市場をけん引する技術と自負している。今年の秋、この技術を一部搭載したオールシーズンタイヤの発売を予定している。非降雪地域や準降雪地域を中心に、お客様の〝安全〟なドライブに貢献していきたい。
タイヤセンシング技術「センシングコア」については、今年から本格的にビジネスを開始する。2030年には事業利益100億円を目指している。車両部品の故障予知で実績がある米・バイアダクト社と共同実証実験を進めており、同社のAIを活用したタイヤ以外の車両部品の故障予知サービスと当社のセンシングコア技術を組み合わせることで、車両全体の故障予知サービスの実現を目指す。
【タイヤ事業の展開について】
EV車用タイヤのラインアップ拡大に注力しており、2022年に中国で当社初の市販用EVタイヤ「イースポーツマックス」を発売開始した。既に中国自動車メーカーからも多くのオファーを頂いており、EV化が急速に進む中国市場で大きな反響を呼んでいる。また昨年、欧州ではファルケンブランド初のEVタイヤ「イージークス」を、日本では国内初のEV路線バス向けタイヤ「イーエナセーブSP148」を市場投入した。今後も先端技術を搭載した高性能EVタイヤのラインアップをさらに拡充し、急速に拡大しているEV市場のニーズにこたえていきたい。
【今年の方針と意気込みを】
中期計画の2年目の年として、目標の達成に向けてより強固な組織を作るため3つの全社方針の下、推進する。一つ目は”全社が一丸となって変革を推進する”。2つ目は〝ありたい姿の実現に向けてイノベーションを推進する〟。3つ目は〝多様性を尊重し、組織力を高める〟と掲げた。当社はこれまで世界初となる技術や商品を市場へ送り出してきた。こうした先進性をこれからも発揮し、ありたい姿の実現に向けて変化を先取りし、新たな価値を今後も生み出し続けていきたい。