2024年1月10日

新春トップインタビュー2024
TOYO TIRE

中計の各施策を羅針盤に
先を見据え力磨く

【昨年を振り返って】
2023年は、2021年から取り組んできた5カ年中期経営計画の折り返し地点であったが、計画前半の2021年、2022年においては、当社にとってもコロナ禍の中で事業を推進してきた厳しい時期であった。先行きが不透明な中で難しい経営の舵取りを迫られたが、それは今なお継続していると言える。コロナ禍が収束に向かう一方で地域間の戦争が激化し、経済の混乱と社会の分断に見舞われた。物流コスト、原材料価格、エネルギーコストの続騰だけではなく、インフレ、景気の冷え込みなど、常に何かしらの問題が顕在化していた一年であった。しかしながら、そうした状況だからこそ学んだこともあり、見通しがきかない状況では、頼るべきは自らが立っている足元だと痛感した。これは言い換えればともに働いている仲間であり、これまで踏ん張ってこられたのは、全社員が力を一つにして臨んだ成果だと改めて感じている。

2023年12月期第3四半期の業績については、主力を形成する北米市場において、SUV・ピックアップトラック向け大口径タイヤを中心に販売が好調に推移したことで売上高は前年に引き続き過去最高を更新した。また、利益面についても海外輸送費の安定と、為替の円安などが追い風となり、営業利益、経常利益、四半期純利益とも第3四半期の実績としては過去最高となった。これまでの業績推移と事業環境を踏まえ、通期業績予想を営業利益は650億円、当期純利益を600億円に上方修正した。

2022年12月、当社初の欧州工場となるセルビア工場を開所したが、昨年は新たな事業基盤の一角である同工場の立ち上げに余念がなかった。同日開催した開所式には、セルビア共和国のアレクサンダル・ヴチッチ大統領とアナ・ブルナビッチ首相に来賓として出席して頂き、ともに祝って頂いた。工場では生産設備を順次導入してレイアウトを整え、除々に生産能力を増強している。同工場の役割は、欧州市場のビジネスを地産地消で推進するだけではなく、主力の米国市場に向けても供給を補強できる戦略的基地と位置付けている。グローバル供給戦略の幅を広げる生産拠点として、その役割を担うために十分な能力を持つ工場へと仕上がってきている。

【注力商品と新商品について】
昨年、上半期においては、北米で人気が高いインチアップに対して一時の勢いが見られないことで、現地を訪れて情勢を見極めるとともに、海外関係者とのコミュニケーションの強化に努めた。下半期辺りからは除々に大口径サイズのタイヤが動き出し、ディーラーも意欲的な販売をしてくれたことで前年を上回る購買に結び付いた。

当社では、SUV・ピックアップトラック向けの本格大口径タイヤにおいて圧倒的なプレゼンスを持っていると自負している。これを強みとして、さらに磨きをかけながら差別化された商品群を重点的に市場投入していく。一方、日本においても、アウトドアブームも相まってSUV・ピックアップトラック系の車両が人気の高まりを見せており、「オープンカントリー」ブランドは本場米国で不動のステータスを誇ることから、国内でも指名買いされるまで浸透しつつある。昨年、米国で開催されたSEMA Showにおいては、当社はEV向け大口径タイヤの「オープンカントリーA/T Ⅲ EV」を参考出品した。開催期間中は来場者からの大きな反響に確かな手ごたえを感じた。米国・日本・欧州の〝R&Dグローバル3極体制〟で開発された製品で、現行商品のオープンカントリーA/T Ⅲのオフロード性能とパターン性能を継承しつつ、オフロードでの力強い走りとオンロードでの操縦安定性・快適性を両立させている。タイヤが路面に接して回転する際に生じる空気抵抗の低減をサイドウォールに搭載した「エアロウイング」によって実現しており、転がり抵抗についても大幅な低減を達成している。

今後、さらにEV化が加速していくと予測される中で、バッテリーなどで車重が増した車両を支えるためにはタイヤの大口径化が必要なため、当社にはアドバンテージがあると考えている。

【労働環境の改善に向けた取り組みについて】
昨年6月から8月にかけて本社のレイアウトを変更した。コロナが5類移行後は在宅勤務を選択肢に入れた新しい勤務形態を取り入れており、出勤時でも業務の性質や体調に合わせて働く場所を選べるフリーアドレス制を導入した。社員が効率的で柔軟に働くことができることを念頭に職場環境を整えた。改装後に行ったアンケート調査では従業員に好評を博しているようだ。

【2024年の方針と意気込みを】
中計後半へと入った今年はこれまで推進してきた取り組みをしっかりと熟成させ、さらにその先を見据えて力をつけていく年にしたい。中計の各施策を羅針盤として、変化の荒波にもまれても適応しながら、全社が一丸となって乗り越えていく。これだけ変化が常態化している時代においては、それはハードルの高いチャレンジかもしれない。しかしながら、当社は挑戦の連続の中でひたむきに前進してきた会社であり、これからもそういう企業であり続けたい。