2020年1月10日

横浜ゴム
インタビュー

全社一丸となって挑戦を継続 
20年代も飛躍を続けて成長果たす

横浜ゴム 山石 昌孝社長

【昨年を振り返って】
 国内の経済状況については、消費増税などによる内需にけん引される形で景気は横ばいとなったが、海外においては米国における良好な雇用・金融環境が個人消費を下支えしているものの、景気回復に減速が見受けられた。欧州では、製造業の低迷が長期化しているほか、中国では米国による関税引き上げなどの影響により、景気の低迷が続いた。こうした経済環境にあって、当社の第3四半期までのタイヤ事業については、売上収益は前年同期を上回ったものの、事業利益は伸び悩んだ。新車用タイヤは国内での販売が低調で、海外においても中国における自動車生産の調整が継続したことから売上収益は前年同期を下回った。市販用タイヤは高付加価値商品の拡販や、値上げ、消費増税に対する駆け込み需要などにより、売上収益が前年同期を上回るなど好調に推移した。MB事業についてはホース配管、工業資材、ハマタイト、航空部品の全事業とも好調に推移し、MB事業全体としても売上収益、事業利益とも前年同期を上回った。ATGにおいても、オフハイウェイタイヤ(OHT)の販売が堅調に推移し、売上収益、事業利益とも前年同期を上回った。2019年通期の連結業績についは、売上収益は増収になると見込んでおり、収益面でも事業利益は減益となる見込みながら、営業利益、当期利益は増益となると見ている。

【主な取り組みとしては】
 タイヤ消費財事業についてはプレミアムカー戦略に基づいて、トヨタ「RAV4」やマツダの「マツダ3」、ポルシェの「カイエン」などにヨコハマタイヤが装着された。ウィンタータイヤ戦略においては、欧州市場向けオールシーズンタイヤ「ブルーアース―4S AW21」の販売が好調な伸びを見せた。ホビータイヤ戦略では、「ジオランダーX―MT」を日本で発売したほか、さらには「アドバンA08BスペックG」を発売するなど、自動車ユーザーの趣味に対応する新商品の開発と、既存商品のサイズラインアップ拡充を進めている。タイヤ生産財事業においては、ATG製のOTRタイヤの納入を国内大手建機メーカーに開始したほか、農業機械用タイヤの日本向けサイズを開発した。栄誉の面では、世界最大の農業機械展「アグリテクニカ2019」において、「アライアンス398MPT」が、「イノベーション・アワード・アグリテクニカ」で銀賞を獲得した。愛知タイヤでは昨年3月より、同社製のフォークリフトタイヤを新たにヨコハマタイヤ販売会社のラインアップに追加したほか、トラック・バス用タイヤについては、3月にヨコハマタイヤ・マニュファクチャリング・ミシシッピが北米の日系メーカーに向けてOEタイヤの納入を開始した。新商品では4月より北米向けに「712L」の発売を開始し、国内においては「302C」「LT751R」「507U」「902L」などを発売した。

 昨年で事業展開50周年を迎えた北米市場においては、年間で9商品のアドバンやジオランダーの新商品を投入し、そのプロモーションを積極的に展開した結果、SEMAショーの「ニュー・プロダクツ・アワード」において、「ジオランダーX―AT」「ジオランダーX―CV」「アドバン・アペックスV601」がタイヤ関連部門における3つの賞を独占した。モータースポーツ活動については、6月に開催されたニュルブルクリンク24時間耐久レースで当社がサポートした「コンドーレーシング」が、日本から参戦したチームにおいては最高位となる総合9位を獲得した。そのほか「ジオランダーA/T G015」装着車がオーストラリアのオフロードレースで、日本人ドライバーとして初優勝を果たした。

 MB事業では、昨年6月に世界最大の超大型空気式防舷材の納入をスタートさせている。スポーツ事業においては、昨年4月に「RS REDドライバー」と「RS Eドライバー」、7月に「ニュースーパー・エッグ480ドライバー」、9月には「ニュー・エッグ5500ドライバー」の2モデルの発売を行った。

 ブランド戦略では、イングランド・プレミアリーグ「チェルシーFC」の日本でのプレシーズンマッチ開催を実現し、日本のサッカーファンにチェルシーFCの魅力に間近で触れることのできる機会を提供することができた。

 経営基盤の強化策の一つであるESGでは、”持続可能な天然ゴムの調達方針”に基づき、天然ゴム農園での労働状況調査や商流調査を開始したほか、ヨコハマタイヤ・フィリピンの生産工場に太陽光発電システムを設置し、再生可能エネルギーの使用率を高めた。

【今年の取り組みに向けては】
 「GD2020」の最終年度でもあり、タイヤ消費財事業においては、引き続き〝プレミアムタイヤ市場における存在感の更なる向上〟を目指して活動を行っていく。プレミアムカー戦略としては、国内外のプレミアムOEへの納入をさらに進め、ウィンタータイヤ戦略では、オールシーズンタイヤ「ブルーアース―4S AW21」の販売を日本国内で開始する。「アイスガード6」を中心としたスタッドレスタイヤのさらなる拡販を実施するなど、引き続きウィンタータイヤの性能ナンバーワンを目指して活動していく。ホビータイヤ戦略では、アドバンやジオランダーの新商品の拡販を図り、レースやクラッシクカー、オフロードなどといった自動車ユーザーの趣味に対応する新商品の開発と、既存商品のサイズラインアップの拡充を進めていく。モータースポーツ活動に関しては、全日本スーパーフォーミュラ選手権において、2020年も引き続きワンメイク供給を実施する。「TCRジャパン」のコントロールタイヤとしての役割からも、引き続きレースの盛り上げに貢献する。タイヤ生産財事業についても、OHTを成長ドライバーとして〝次の100年の収益の柱へ〟を掲げて活動していく。ATGについては本年も積極的な拡販に努め、国内においては、昨年投入したトラック・バス用タイヤなどの新商品の拡販に取り組む。MB事業においても、引き続き〝得意分野へ資源集中〟を掲げ、〝自動車部品ビジネスの拡大と海洋事業を確固たる世界ナンバーワンへ〟を戦略の柱として活動していく。

 昨今の環境変化は非常に早く、先行きの不透明感も増している。そうした環境にあって、収益を伴った成長をしていくためにも、全社員一丸となって挑戦を継続し、本年以降の20年代においても飛躍を続けることでさらなる成長を果たす。