2020年4月25日

【ホース・チューブ・継手特集②】
八興

柔軟フッ素ホースシリーズ
専用継手とのセット販売増加
ユーザーの安心面で付加価値追求

ホース・チューブ・継手の専門メーカーである八興の前期(2020年3月期)の業績は、売り上げに関しては3期連続で過去最高を更新した前年同期の水準を維持したが、計画比では2%程度届かなかった。上期は前期の堅調さを維持し、下期以降に市況における不透明感が漂っていたものの、売り上げをけん引する食品・飲料向けのユーザーの個別案件などの勢いが根強かった。

注力する製品は、昨年から販売を開始した「積層チューブ専用樹脂コネクター」「導電スーパー柔軟フッ素スプリング フェルール継手加締品」、柔軟フッ素ホースシリーズから、新たな付加価値として提案したフェルール継手加締品のオプション加工「電解研磨仕上げ」、袋ナット式のフェルール継手であるエイトロックフェルールの継手本体内面に「PFA樹脂ライニング」を採用した4つの新シリーズで、いずれの製品も問い合わせが多く、受注も増加している。特に導電シリーズについては、その特性を必要とするユーザーにとっては必須のアイテムとなることから、受注においては有効な付加価値となっている。同様の理由からジョイントセット品の引き合いも多く、好調の要因の一つとなっている。

積層チューブ専用樹脂コネクターは、同社の積層チューブ「柔軟フッ素チューブシリーズ」「KYチューブ」とのセット使用が可能な専用樹脂継手。材質はPFAとPPの2種類をラインアップしている。ユーザーに対して、チューブ本体が安全なフッ素仕様ながら、継手の金属には腐食面でのリスクが伴うといった懸念を払しょくした。ナットを内ネジの本体に挿入する構造を採用しており、コンパクト設計になったことでチューブと継手の着脱も容易にした。

一般的に、積層チューブには内面シールが必要で、これがなければチューブ端部(カット面)が流体に触れ、腐食劣化の原因となる可能性が生じていた。同社の積層チューブシリーズに対応した内面シールの樹脂コネクターでは、腐食性の高い流体であっても安心して流すことが可能。用途例としては高純度薬品の輸送配管、理化学・実験機器、分析機器などの配管部品、金属を嫌う環境、流体の搬送継手などで有効性を発揮する。

導電スーパー柔軟フッ素スプリング フェルール継手加締品は、内面は導電性フッ素樹脂(ETFE系)で、これに導電性ポリアミドエラストマー、導電性ポリウレタンを積層し、ステンレス鋼線を巻き付けて外層をポリウレタンで覆っている。バキュームが可能で、耐溶剤性に優れており、食品衛生法にも適合。用途としては化学・薬品工場の可燃性液体の移送のほか、アルコール類・香料などの揮発性液体の移送、静電気対策を必要とするホース配管などに適している。

柔軟フッ素ホースシリーズ フェルール継手加締品のオプション加工として、新たに追加された電解研磨仕上げは、柔軟フッ素ホースシリーズ フェルール継手加締品の継手接液部におけるSUS316Lに電解研磨仕上げを加えた。一段と衛生性を向上したことに加え、♯400クラスのバフ研磨を掛けることによって、従来品と比べて非常にきめ細かい鏡面のような仕上げを実現。清潔なイメージに加え、ニップル先端の液だまりを軽減することによって、衛生面における高い効果を発揮する。

袋ナット式のフェルール継手であるエイトロックフェルールの継手本体内面には「PFA樹脂ライニング」を採用しており、金属が使えない流体に対しても安心して使うことが可能。エイトロックフェルールが備えた現場での施工の容易さ、ホース交換時の継手の再使用が可能などといった利便性を確保しながら、金属を嫌う半導体関連装置・FPD製造装置、食品・化粧品・医薬品の製造装置、化学薬品・有機溶剤の製造装置に使用することができる。

販売面の最近の傾向については、主力の「柔軟フッ素ホースシリーズ」などにおいて、ホースと専用継手のセット販売が増加傾向を見せている。別のメーカーのホースとジョイントを継続使用するとホースの抜け、漏れ、破損・破裂など不具合の発生につながりやすく、同社としては「ユーザーが安全および性能を重視した結果の選択」と見ている。加えて同社では、食品衛生法改正、RoHS2などの規制に対しても積極的に対応。全製品でRoHS2規制製品の不使用を実現するなど、ユーザーの安心面から付加価値の追求に万全の体制で望んでいる。

主力の国内販売はもちろん、タイをはじめとする東南アジア地域など海外販売への取り組みも一段と強化。ホームページからの問い合わせが年を追って増えており、そうした販路においても今後の強化の対象に置いている。海外展開の強化という切り口に向けても、ホームページなどといったネット系を主軸とした拡販、PRを積極的に行っていく。現地はローカルメーカーや中国メーカーの台頭もあって市場競争が激化しているものの、同社の強みである独自の機能ホースや、安全面をさらに打ち出した継手とホースのセット販売によって一段と浸透を図っていく。

今期については、コロナウイルス肺炎の感染拡大の影響で相当に厳しい市場環境、需要状況を予測。半導体、医療機器以外の業種については、見通しが難しいものの影響が出るのは必至とみている。同社としては、状況を注視しながら直面する問題への対応に力を注ぎ、売り上げについては前期比103%を計画している。