2020年6月15日

ダイセル
新長期ビジョン、中期戦略を策定

変化する社会情勢に柔軟に対応

ダイセル(小河義美社長)は6月8日、オンラインのライブ配信によって記者会見を開催し、新たに策定した第四次新長期ビジョン「DAICEL VISION4・0」ならびに、それに基づく新しい中期戦略「Accelerate2025」を発表した。同社は昨年創業100周年という節目を迎えたことで、激動する世界情勢を踏まえ一段とスピード感にあふれたフレキシブルな会社への変革を決断。そのための基本的な考え方と方策を、新しい長期ビジョン、中期戦略にまとめた。新しいビジョンや戦略を新たな指針とし、国際社会や地球環境をめぐる諸課題やAI、IoTの活用による急速な技術の進歩、大きく変化するこれからの社会情勢に柔軟に対応し、事業活動を通じて、持続可能な社会の実現と企業グループの成長の両立を図っていく。

会見では小河社長自らが概要を説明。策定に込めた思いとして「時代が変化しても変えてはいけない本質として基本理念やサステナブル経営方針に〝企業の存続基盤である安全・品質・コンプライアンスを最優先に、人にやさしいモノづくりの実現に取り組んでいく姿勢〟を掲げている。今回は〝大胆に変えなければいけないこと〟を長期ビジョン、中期戦略で明確にした」としている。

新長期ビジョンのDAICEL VISION4・0の経営方針に息づく基本理念としては、〝価値共創によって人々を幸せにする会社〜サステナブル・バリュー・トゥギャザーで、その下にサステナブル経営方針を設置。その内容として、人々の豊かな生活を実現する新しい価値を創造して提供(サステナブル・プロダクト)、すべてのステークホルダーとともに地球環境と共生する循環型プロセスを構築(サステナブル・プロセス)、多様な社員が全員、存在感と達成感を味わいながら成長する〝人間中心の経営〟(サステナブル・ピープル)を指針として進める。

事業面での4つの成長トリガーとしては、健康(ヘルスケア)、安全・安心(セイフティ)、便利・快適(スマート)、環境を考えており、健康分野で目指す注力市場としては、コスメ・健康食品・メディカル、安全・安心はモビリティ・インダストリー、便利・快適においてはディスプレイ・IC/半導体・センシング、環境は水処理・生分解性樹脂分野を市場としてターゲットを定めた。これらの背景となる同社の強みとして、バイオから特徴ある有機合成技術の蓄積、スーパーエンプラから汎用樹脂まで幅広い製品群の構築、セルロイドから展開したセルロース技術、火工技術、AI、IoTによるノウハウを活用する仕組み(ダイセル式生産革新)を市場攻略の柱として次のステップへと駆け上がる。

成長&加速戦略としては、現在のダイセル領域においては、現状の事業に加え注力するドメインを含めた領域を成長、新ダイセルに向けては、既存事業の周辺領域においてM&Aや提携による領域を拡大する。新企業集団として、垂直統合型のサプライチェーンに水平方向の統合を視野に入れたクロスバリューチェーンを構築する。

新中期戦略Accelerate2025策定の意味合いとしては、新型コロナウイルス感染症対策への貢献、景気低迷に対する足元固め、ウィズコロナへの対応を観点にフレキシブルに対応する体制づくりを目指して策定。現時点での中期戦略の骨格について明確化し、新型コロナウイルス感染症の今後の影響などの状況を見定めながら、経営目標について随時見直しを図っていく。

全社戦略としては、クロスバリューチェーン実現に向けた取り組みとしては、サプライチェーンの垂直/水平方向との連携を高密度化。新企業集団を見据えた組織変更に対し、柔軟に組み替え可能なデジタルアーキテクチャの構築を図る。事業ポートフォリオにおいては健康、安全・安心、便利・快適、環境における価値提供型事業へのシフトに取り組み、従来の68事業を33事業に集約。ビジネスユニット(BU)の特性に応じたKPIの設定とその進ちょくによる資源配分を実施する。

事業戦略としては、事業領域(ヘルスケアSBU、メディカルSBU、スマートSBU、セイフティSBU、マテリアルSBU、エンジニアリングプラスチックセグメント)ごとのありたい姿の実現と主要施策の強化を図る。

機能別戦略としては、事業創出力として、R(リサーチ=ユーザー目線によるシーズの掘り起こしとD(ディベロップメント=事業化力の強化)の自立。「いろいろな視点に目を向け、全員が営業マンとなってお客の前に出ていく。ニーズとシーズのミスマッチをフォーカスし、〝守り〟から〝攻め〟に転ずるキーテクノロジーを掘り起こす」(小河社長)。プロアクティブIP=開発、事業化のアンテナ機能)、R、Dの相互作用による事業創出を図る。

「新商品を開発してもそれが事業化されておらず、サービスを創出しても形になっていない事例を排除し、戦略を通して結実させる」(同)。

経営目標ついては、25年度ターゲットとしては、EBITDA1000億円超(19年度実績は605億円)、営業利益は最高益更新、ROIC(投下資本利益率)10・0%(19年度は4・1%)と設定している。

資本政策、株主還元に向けては、資産効率の最大化と最適資本構成を実現し、資金調達力維持のための健全性を確保した上で、安定的かつ連結業績を反映した配当を行う。