バルカー
新中期経営計画「NF2022」概要発表
環境変化に耐えうる体制を実現
バルカー(本坊吉博社長COO)は今年5月、創業100周年を迎える2027年3月期に向けた長期経営目標を設定するとともに、今期から(21年3月期~23年3月期)を実行期間とした新中期経営計画「NF(New Frontier/ニューフロンティア)2022」を策定し、既にスタートさせている。その計画の骨子に加え、期中の取り組み内容の詳細について、21年3月期第2四半期決算発表と同時に公表した。新中計は20年3月期に着地した前中期経営計画「NV・S8」までのNVシリーズの成果を刈り取り、〝創業100周年に向けた改革〟を織り込んだ成長戦略のフレームワークを構築、同社の企業としての存在価値の高さを決定付ける重要なマイルストーンとしての位置付けも担っている。
NF2022が目指す基本方針として、環境変化に耐えうる体制を実現し、次の時代に通用する価値創造力の獲得を目指す。「創業100周年を超えて次の時代さらなる健全で、持続的な成長を持続するために、”THE VALQUA WAY”の下、グループ一丸となって大胆でダイナミックな事業基盤を再構築する」。前中計のNV・S8で培った一部の戦略を進化させ、これを継続させながらNF2022においてはチャレンジによる成功例を積み上げる。
NV・S8を通じて得られた成果としては、先端産業市場向け戦略製品の生産体制の整備や、汎用製品のグループ内生産の見直しといった選択と集中を実践、コーポレートガバナンスの深化や、リスクマネジメントやコンプライアンス体制の確立といった持続的な成長を支える企業基盤の整備を整える目標を達成した。ただし、基幹システムのリプレースの着実な推進、AIの活用も含めた新生産技術の確立といったIT活用による効率化と業務、商品品質の向上については理想通りに進行したとは断言することができず、戦略投資(販管費増)の効果早期発現、機能樹脂製品事業の収益性の向上についても改善の余地を残した。先端産業市場向け以外の戦略製品の開発と市場投入といった項目でも継続した努力が必要で、R&D拡充効果の現出・新事業分野への展開という施策についても十分な満足度が得られない結果で終わった。NF2022では、これら課題への対応についても、〝チャレンジ〟の一環として前向きにとらえ、解決件数を積み上げることで、収益拡大だけでなく風土改革にもつなげていく。
基本方針の柱の一つとしては、選択と集中による既存事業領域の収益拡大と新規事業領域の獲得を図る。成長市場向け戦略への集中投資を行い、H(新商品)&S(サービス)コンセプトの浸透による新たな事業機会を獲得する。設備投資額としてNF2022では3カ年総額で120億円を計画(NV・S8での2カ年総額80億円)。主要投資案件として、生産関連では高機能シール製品(日本・中国・韓国)、機能樹脂特殊タンク製品(台湾)に投じて戦略製品の生産能力増強・高度化に取り組むほか、R&Dでは、高機能シール製品(米国)などに対する先略製品専用R&D拠点の開設を目指す。基幹システムの刷新やリモートワーク体制、情報セキュリティの強化といった基盤整備にも経営資源を振り向ける。
長期的価値創造に向けたR&D戦略としては、AI導入・体制強化などといった研究開発費については年率20%程度を目途に増額。オープンイノベーションを推進し、外部技術の活用による開発プロセスの加速と領域の拡大を図る。
次世代R&Dインフラの構築への取り組みとして、グローバル開発拠点の整備とイノベーションセンターの設置を計画している。社員一人ひとりの〝人財化〟による価値創造力の向上、ITの徹底活用による全部門の効率化と顧客サービスの追求に取り組む。新基幹システムによる業務品質と新生産技術による製品品質の向上を実現させる。
ターゲットおよび個別戦術として、コア事業領域では次世代半導体製造装置用高機能シール製品開発の強化、予知・保全など顧客の安全操業・運転に寄与するH&S商材の拡大、新エネルギー市場向け専用製品の拡充、使用原材料の見直しなどといった先進的な環境対応の実現を目指す。
新事業領域に向けては、H&S商材による新分野への展開の加速、センシング等の新規開発技術との融合による事業領域の拡大(ヘルスケア・環境・情報通信等)に取り組む。これらの成果として、R&Dテーマの増加と開発速度の短縮、シェア・事業領域の拡大により27年3月期の新商材売上高比率20%を目指す(20年3月期は約7%)。
定量的な数字としては、計画の遂行によりNF2022の最終年度(23年3月期)の売上高は550億円(20年3月期482億1200万円)、営業利益55億円(同42億1400万円)、純利益37億円(同29億1800万円)、営業利益率10・0%以上(同8・7%)、ROEは10・0%以上(同8・8%)を目指しており、長期経営目標の達成に向けたファーストステップとして、念願の営業利益率10%への回復と強じんな企業体質を確立する。