2021年1月20日

ブリヂストン
「パラゴムノキ」高精度病害診断技術

ドローン撮影、AI画像診断用い

ブリヂストン(石橋秀一CEO)は、電通国際情報サービス(名和亮一社長、以下、ISID)と共同でAI画像診断を用いた「パラゴムノキ」の高精度病害診断技術を開発した。タイヤ原材料となる天然ゴムは、パラゴムノキから生産されており、ブリヂストンではパラゴムノキの病害リスク低減による天然ゴム資源の持続的な安定供給に向けた研究開発に取り組んでいる。今回、ドローンによる空撮画像を基に現地農園スタッフによる木の病害判定(罹病木判定)に関する「暗黙知」とAI画像診断技術を融合した病害診断技術の運用試験を開始し、根白腐病の罹病木を見分けることに成功した。

パラゴムノキの根白腐病は、根に発症して見分けにくく放置すると木が枯れてしまうことから、天然ゴムの収量への影響は甚大、有効な対策がないことから拡大する傾向にある。これまでの病害診断は、根白腐病の罹病木に表れる葉のつき方や色味など葉群の特徴を同社農園スタッフの暗黙知で総合的に判断し、罹病木と判定されたものを掘り起こして実施されることから、個々のスタッフのスキルによって診断精度のバラつきがあった。

今回開発された高精度病害診断技術は、同社農園スタッフの暗黙知である葉群に注目した判定を学習させたISIDの画像解析AIにドローンで空撮した農園のふかん画像を取り込み、根白腐病の罹病木を広域な農園内から迅速かつ高精度に見つけ出すことを可能にする。この診断技術は、現地自社農園で運用試験を開始しており、品種や樹齢に関係なく約90%の精度で実施可能であることを確認している。これにより、収量に影響が出る前の早期に、根白腐病の罹病木に手当てすることが可能となり、ゴム農園の生産性向上に貢献する。

「パラゴムノキ」植林計画最適化システム開発

また同社は、ビッグデータを活用し、高収量のゴム農園実現に貢献する「パラゴムノキ」の植林計画最適化システムを開発した。これにより植林や収穫の工数などといったさまざまな制約のある広大な農地に複数の品種を植林するゴム農園において、30年以上先までの植林計画を最適化。これによって、長期にわたって農園の単位面積当たりの収量向上・平準化を実現し、天然ゴムの持続可能な安定供給に貢献する。

この最適化システムは、情報・システム研究機構・統計数理研究所の学術指導を経て、同社のゴム農園管理に関する知見に基づいて土壌や病害予防といった複雑な制約を数理モデル化、収量や面積といったパラゴムノキの農園から得られた膨大なデータに、施設の配置などを検討する際に整数で答えが示される問題解決のための手法である混合整数計画法を適用することで開発された。このシステムを活用することによって、持続的に天然ゴムの高い生産性を確保するために〝いつ〟〝どの品種を〟〝どの程度の量で〟〝どこに〟植林すればよいのかという情報の提供を可能にする。今後、実用面での課題抽出を経て、将来的に自社農園および他の農園に展開することを検討しており、世界の天然ゴム生産の持続可能な安定供給に貢献していく構想を立てている。

2050年には全世界の人口が96億人にも達し、自動車の保有台数も24億台を超え、タイヤ生産に必要な材料量も増えていくと予測されており、SDGsが示すように経済成長と環境負荷のデカップリングが求められている。パラゴムノキの産地が東南アジアに集中していることから、病害リスクや栽培面積の拡大に伴う熱帯雨林の減少が課題となっている。この課題を解決するため同社では、天然ゴム資源の拡充に向けた取り組みの一環として、パラゴムノキ由来の天然ゴムの生産性向上に向けた研究開発を行い、天然ゴム資源の安定供給に貢献する技術を通じて、将来に向けた環境負荷低減と持続可能な事業を両立していく。