2021年1月20日

十川ゴム
新春トップインタビュー

改善に向けた取り組みを
成果得られるよう人知を尽くす

【昨年を振り返って】
米中貿易摩擦、消費増税など一昨年から経済的な不安定さが続いていたが、半導体産業が回復基調をたどるなど、経済的な見通しに明るさを見いだしていた。しかしながらその矢先、新型コロナウイルス感染症拡大の脅威にさらされ、ほぼ一年間にわたってほんろうされた。顕著なダメージを受けた最初の業種は自動車産業で、秋以降になると全産業が新型コロナウイルス感染症拡大の災禍に飲み込まれた。自動車、家電・住宅設備、建設土木関係についても工事がストップしたことによって建設機械の需要も低迷した。好調を維持していた医療産業でさえも、一般患者が病院への通院を控える傾向が顕著となって、大きく落ち込んだ。

当社はリーマンショックによる経済的大打撃を経験しているが、新型コロナウイルス感染症によって受けた打撃はそれをはるかに上回っており、災禍によってもたらされた脅威の大きさを改めて思い知った。リーマンショックのときは、厳しい環境にあっても、全社一丸となって試練を乗り切り、自らの力で業績を回復に導こうというムードが自然と醸成された。ところが今回は、人間の行動の制限が大きな壁となって立ちはだかり、顧客との打ち合わせや、現場での立ち合いといった最低限の業務もこなすことができなくなった。相手のタイミングを見計らって業務を進めるなど、可能な限りの努力は尽くしているが、制約の中での業務継続を自助努力で乗り切る難しさを改めて認識した。

【みぞうの事業環境において、貴社が行った取り組みは】
現場主義の当社にあって、他社との綿密な交流が果たせない事態が最も憂慮する問題であり、新たな局面に応じた改革を取り入れる必要性に迫られた。そこでICTなどを活用したオンライン体制を構築していた環境を利用し、遠隔地であっても本来のコミュニケーションの取り方に近い方法を考案して実行した。対面がベストには違いないが、それに相応する効果を得ることができなくとも、手をこまねいて何もしないでいるのは無責任であると考え、〝何かをやる〟という意識を全員で共有した。不可能と判断して中止の決断を下す成果はゼロが確定しているが、これを〝何かやる〟という行動によって10%から20%へと成果が得られるように人知を尽くす。健康面などに及ぶリスクは確実に排除し、対面によって得られるほどの効果を生み出すのは難しいかもしれないが、可能な限りの努力でそれを導き出す。ISO監査機関とインターネットを通じて従来通りに監査を行えた。パーフェクトでなくても可能な限りはこの方法を活用していく。今年も厳しい環境が継続していく可能性が高いが、今回の経験を機に時代の変化とともに、固定観念にとらわれることなく、常に自らも変化していく姿勢が大切だと再認識した。

【今後の展望と今期の見通しについて】
工場については、人手不足に苦慮していたが、仕事の効率化、個人の生産性を上げるための体制づくりも人材面の問題解消に向けた一端になるのではないかと考えている。負担を増やすことなく個人の生産性を上げるためには不要な作業を見極め、業務の整理をすることで他の仕事に取り組める。例えば、社内書類の押印を廃止することでスピーディーに作業を進めることができる。固定観念によって織り込まれた組織的な内容を今一度見直す時期が到来しているのかもしれないと考えている。歴史の歩みとともに組織が複雑化しており、多岐にわたっていることから、改善に向けた取り組みを行っていく。急激な変革は困難を伴うが、できる範囲から改善していく。

日本の経済環境をふかんすると、9月から自動車産業が回復に向かっており、第3四半期から工事物件も再開しつつある。2021年においては、新型コロナウイルス感染症に対する抜本的な対応策が打ち出され、人類の脅威ではなくなることを願って、当社としても今期は上半期の落ち込みを挽回することに注力し、前年度の業績に少しでも近づけるよう努めたい。