【トップインタビュー2021】
広島化成・西浩一社長
変化し続けられる企業風土
広島化成流の「働き方改革」実行
【昨年を振り返って】
前期(2020年12月期)の決算については、新型コロナウイルスによる消費への影響のため、売上高は全社で前期比86・1%となる119億1700万円であったが、収益面では原材料価格が下がり、残業代の労働時間および経費の減少もあって減益幅は売り上げの減少幅よりは縮小された。事業部別でみると、当社のシューズ販売においては4月、5月で、過去にない急激な売り上げ減を経験した。その後売り上げは回復したが、前期比88%となった。その一方で外出自粛の巣ごもり消費が拡大した結果、ネットやカタログ販売といった通販業態は好調に推移し、前期比で150%となり、通販業態の売り上げはシューズ全体の20%の割合を占めた。今年はさらに通販業態への売り上げ拡大を計画している。
工業用品の売上高は前期比75%、化成品93%となり、各事業部とも売り上げを落とす結果となった。工業用品の自動車用品においては、4月以降の急激な生産落ち込みから各自動車メーカーの生産停止、新型車の生産開始延期等が大きな打撃となったが、9月以降になって少しずつ回復している。著しい状況変化に伴ってより生産性の高いラインへの集約化をはじめとして、後工程の成型工程においても関連・協力工場における工程配置集約による効率化を図った。
また、この機会に以前からの課題であった老朽化した生産性の低いラインを廃棄した。コロナ禍前の事業環境とは全く状況が異なることから、中期事業計画を大幅に見直しすることで、新たな開発製品を基軸に売り上げの回復、拡大を計画している。
【新型コロナウイルス感染症に対する、貴社の対応は】
営業活動、海外出張などの業務が自粛に追い込まれた結果、社内で開発・企画・営業・製造などといった部門間ミーティングが活発に行われるようになった。このミーティングから、新発想による新商品の開発や新規分野参入プランが生まれるなど、コロナ禍の中、逆境をチャンスに変える取り組みが進んでいる。シューズ事業での新製品の発表の場である展示会は、少人数の完全予約制で対応を行うなど、会場での十分な感染予防対策を講じて開催を行っている。新たな提案手法として、取引先向けにウェブ上で新商品のPRができる専用サイトを構築していく。早ければ今春より試験的にスタートさせていきたい。また、ホームページの活用ではアクセス状況や閲覧情報を基に更新を行っている。EC販売ページもお買い得情報などを知らせるメールマガジンなどを個別に発信している。今年はさらに情報発信の体制を充実させることで、シューズ部門全体の売り上げ拡大につなげていく。
環境の変化に応じた新しい施策に取り組むことによって、今期は前期分の落ち込みをばん回できるように頑張っていきたい。
【今期の新たな組織的な取り組みとしては】
基幹システムの刷新によって、グループ全社の会計機能とシューズ事業部の販売管理システムを本年春ごろに本格稼働させる計画を立てている。工業用品事業部と化成品事業部の生産管理システムについては、現在仕様を固めている段階であり、本年下半期での開発実施予定で進めている。併せて、新システム上において稼働するBIおよびRPAを導入予定である。これらのシステム刷新により、社内で〝脱ハンコ〟〝バックオフィスの省人化〟〝グループ経営の強化〟が大きく図られるものと期待している。工場内においても社員の省人化・無人化を推進する目的から、産業用ロボットや自動搬送装置(AGV)の導入を進めていきたいと考えている。
【今後の貴社と業界の展望、社会の見通しについて】
日本も人口減社会に入り、これからも特に若手社員の採用難は続くと考えている。しかし、さまざまな外部環境の変化に押しつぶされないよう、工場やオフィス内でも、一人当たりの売上高を高めるための生産性の向上を図っていきたい。昨年、新感覚のソックスシューズ「ニッティー」が2020年度グッドデザイン賞を受賞した。環境負荷低減のコンセプトと履き心地が評価された。今後も大事にブランドを育てていきたい。また、通気防水やストレッチ防水など、自社による独自機能を軸とした商品の充実も図っていく。顧客層は高齢化しているが、マインドの多様化が進んでおり、特に健康に気を遣う人が増えてきた。今後、よりアクティブで健康寿命を延ばせるような商品を提案していきたい。
当社の2021年のスローガンは、「築こう! 夢と未来へ 今こそチャレンジ」、そして、安全衛生スローガンは、「慣れた作業 少しの油断が ケガのもと」を掲げる。世界中で、新型コロナ感染症が猛威を振るう経験にさらされ、コロナ禍以前の状態には戻らないだろうという憶測が広がっている。「風が吹けば桶屋が儲かる」とは言え、この混とんとした世界にあって、これから発展していく分野や事業を見通すことは困難極まりないだろう。そのような状況下ではあるが、時代に必要とされる企業の根底には、環境適応とイノベーションの重要性、そして、基本を大切にしながら、変化し続けられる企業風土やDNAが不可欠であるように思う。コロナ禍がもたらしたライフスタイルやワークスタイルの大きな変化は、昨今のデジタル化の推進をさらに加速させた。国内においても企業のみならず政府や行政でも脱ハンコやマイナンバーの有効活用などといったデジタル化推進が加速化してきた。当社としては、基幹システムの刷新などによる既存業務の抜本的見直しを含めたデジタル化の推進とともに、広島化成流の「働き方改革」を引き続き考え、実行することを進めていきたいと考えている。