2021年5月10日

JSR
2021年3月期決算説明会

コア営業利益見通しより上回る

JSR(エリック・ジョンソンCEO)は4月26日、オンラインで2021年3月期の決算説明会を開催し、概要について宮崎秀樹取締役常務執行役員が説明を行った。

それによると、売上収益は前期比5・4%減の4466億900万円となり、第2四半期決算発表時の見込み比では増収となったものの、前期比では減収となった。コア営業利益は同21・9%減の259億6300万円となり、「前期比では減少したが、デジタルソリューション事業の好調、石化系事業の需要回復により昨年10月に見通した195億円を大きく上回って着地した」(宮崎取締役)。営業利益は前期の328億8400万円の黒字から616億3300万円の赤字。当期利益も前期の226億400万円の黒字から551億5500万円の赤字に転じた。利益面においてデジタルソリューション事業は成長したが、新型コロナウイルスの影響を受けたエラストマー事業で構造改革に着手。その一環として公正価値評価を実施し、772億円を減損損失として計上した。

セグメント別に見ると、デジタルソリューション事業部門の売上収益は前期比4・6%増の1514億2000万円、コア営業利益は同11・8%増の345億6800万円の増収増益となった。半導体材料事業はメモリー、ロジック半導体向け材料ともに20年第1四半期以降堅調に推移。主要顧客の先端デバイスが立ち上がるなど、最先端フォトレジストを中心に販売が堅調だった。加えて、最先端半導体向け機能性洗浄剤や実装材料も増収。コア営業利益は、洗浄剤の拡販に伴う費用増があったものの増益を確保した。ディスプレイ材料事業は、注力している大型TV用液晶パネル向けの配向膜が中国向けに販売数量を拡大した。液晶ディスプレイの生産が韓国、台湾から中国にシフトしている中で、一部顧客での生産撤退に起因し、着色レジストおよび感光性フォトスペーサーの販売が減少したが、配向膜の販売が堅調に推移し、コア営業利益を押し上げた。エッジコンピューティング事業はNIR(遠赤外線)カットフィルターの販売減により減収減益。

ライフサイエンス事業部門の売上収益は同9・3%増の551億9700万円、コア営業利益は同11・0%減の35億1000万円。グループ会社のクラウン・バイオサイエンス・インターナショナルが手掛けるCRO事業(医薬品の開発受託事業)、セレクシス、KBIバイオファーマが展開するCDMO事業(医薬品の開発製造受託事業)やバイオプロセス材料は売上収益が拡大。利益面は先行投資による固定費の増加、CDMO事業の米国でのコロナワクチン対応優先政策下における生産受託稼働減、前年同期の一時的な利益の影響により振るわなかった。また、当期に100%子会社となった医学生物学研究所(MBL)は診断薬事業が堅調に推移した。

エラストマー事業部門の売上収益は同19・9%減の1431億8600万円、コア営業利益は売買スプレッドの低下等により17億5800万円の損失から114億2000万円の損失となり、赤字が拡大した。同社が戦略製品と位置付ける溶液重合スチレン・ブタジエンゴム(SSBR)の販売数量は世界のタイヤ生産量が対前期で減少する中でも前期対比では同水準となったが同事業全体の販売数量が伸び悩み、原料市況下落による販売価格の下落も重なり、売上収益は前期を下回った。

合成樹脂事業部門の売上収益は同16・8%減の791億2300万円、コア営業利益は同29・0%減の44億3000万円。新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要低迷によって販売数量が落ち込んだ。

今期については新型コロナウイルス感染症の再拡大による国際情勢の変化等の不透明な環境も予想される中、成長事業である半導体材料事業、ライフサイエンス事業が順調に成長すると予測。売上収益は前期比4・8%増の4680億円、コア営業利益はエラストマー事業でのコスト削減等の収益改善策、減損による減価償却費の減少を受けた利益回復もあり同104・1%増の530億円、営業利益530億円(前期は616億円の損失)、当期利益320億円(同552億円の損失)を見込んでいる。