2021年5月15日

〈2021年3月期決算説明会〉日本ゼオン
純利益が過去最高に

SSBRが後半大幅伸長

日本ゼオン(田中公章社長)は4月28日、決算説明会をZoomウェビナーによるライブ配信によって実施した。説明会には田中社長、取締役執行役員の松浦一慶管理本部長をはじめとする役員が出席。松浦本部長が決算説明を行った。

当期の売上高は前期比6・2%減の3019億6100万円、営業利益は同28・0%増の334億800万円、経常利益は同34・5%増の386億6800万円、当期純利益は同37・2%増の277億1600万円となり、当期純利益は過去最高を達成した。特殊ゴムが好調に推移し、ラテックスも医療・衛生用手袋向け需要が引き続き堅調に推移したが、化成品において当期は定期点検のタイミングの年度に当たっていたことから生産量が減少し、固定費が上昇したことで売り上げに響いた。特殊ゴムの売り上げだけで2000億円に上り「第4四半期だけの業績でみれば、前年同期比で増収増益。利益面は全項目で過去最高を達成した」(松浦本部長)。その一方で、質疑応答の場で田中社長は「特殊ゴムの貢献度が高く、特にSSBRの後半の伸びが大きかった。通期の純利益は過去最高を達成することができたものの、決して胸を張れるものではなく、従業員によるコスト削減努力、新型コロナウイルスの影響を退けながら操業を続けてこられた成果だと考えている。みぞうの事態で状況が見通せない中、従業員が賢明に頑張った結果であり、本当に感謝している」と述べた。

営業利益の見通しについて、昨年10月の時点では160億円と予測していたが、市場要因として102億円、エラストマー素材が14億円、高機能材料が17億円上振れしたことで133億円のプラス、市況要因15億円、内部要因26億円上乗せされたことで334億円という予想を上回る利益を呼び込んだ。内部要因については、今年1月の予想時点では13億円程度のプラスと見積もっていたが、不急費用の圧縮効果などが発現したことで、結果としては26億円の上積みとなった。

セグメント別では、エラストマー素材事業部門の売上高は前期比9・6%減の1616億2600万円、営業利益は同27・4%増の122億8300万円。営業利益における前年度との増減要因は出荷量減による22億円、価格差72億円減、為替差損15億円に対して、原料価格面では、原価差110億円、コスト圧縮などによる販管費差による26億円の増収分が減収分を打ち消した。合成ゴム関連では、年度の後半は主要市場である自動車産業向けを中心に、需要は回復傾向となったものの年度前半の落ち込み分をばん回するには至らず、全体の売上高ならびに営業利益ともに前年同期を下回った。合成ラテックス関連では化粧品材料や一般工業品、樹脂改質用途などの需要低調により、全体の売上高は前年同期間を下回ったが、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした医療・衛生用手袋市場の需要拡大による販売価格上昇により、営業利益は前年同期間比で増加。化成品関連では欧米、アジアとも需要が底堅く、販売数量は前年同期間を上回ったが、原料市況に伴い製品価格は下落した。

高機能材料事業部門の売上高は同4・1%増の954億6500万円、営業利益は同26・9%増の219億6000万円。光学樹脂、光学フィルムともに販売が堅調に推移し、高機能樹脂関連全体の売上高、営業利益の業績を押し上げた。高機能ケミカル関連では、トナーおよび電池材料は売上高、営業利益ともに前年同期間に及ばなかったものの、化学品は売上高、営業利益ともに前年同期間を上回った。電子材料は、売上高は前年同期間を下回ったが、営業利益は前年同期間を上回ったことで、高機能ケミカル関連全体の売上高のマイナスを打ち消した。

その他の事業部門の売上高は同12・1%減の469億7700万円、営業利益は同2・8%増の21億5600万円。子会社の商事部門などの売上高が前年同期間を下回った。

今期については、売上高は前期比2・7%増の3100億円、営業利益は同1・2%減の330億円、経常利益は同9・5%減の350億円、当期純利益は同9・8%減の250億円を見通している。売上高予想の内訳は、エラストマー素材1580億円、高機能材料940億円、その他・消去等が580億円。営業利益予想はエラストマー素材117億円、高機能材料220億円を予想。配当(1株当たり)については、中間期末12円、期末12円の24円を予定しており、対前年度比2円増で、10年以降では最高の配当額となる。