2021年5月15日

〈2021年3月期決算説明会〉日本触媒
収益面で大きな打撃

今期と来期でV字回復へ

日本触媒(五嶋祐治朗社長)は5月11日、Zoomを通じて決算発表記者会見を開催した。出席者は五嶋社長ならびに常務執行役員の小林髙史財務本部長で、前期の概要を振り返るとともに、今期の展望について明示した。

当期の売上収益は前期比9・6%減の2731億6300万円、営業利益は159億2100万円の損失(前期は131億7800万円の利益)、税引前利益は129億2600万円の損失(同157億4800万円の利益)、当期利益は108億9900万円の損失(同110億9400万円の利益)となった。新型コロナウイルス感染症の影響による世界景気の減速などを受け、原料価格や製品海外市況の下落に伴って販売価格が低下、販売数量も減少したことにより売上高が伸び悩んだ。利益面についても、生産・販売数量の減少に加え、原料価格よりも製品価格の下がり幅が大きくスプレッドが縮小、同社の連結子会社であるニッポンショクバイ・ヨーロッパN.V.(以下、NSE)の固定資産に対する減損損失119億300万円およびシラス社におけるのれん代や技術関連資産などといった減損損失として92億8200万円、日本触媒と三洋化成工業との経営統合の中止に伴う関連費用17億1300万円を計上したことなどで収益面が大きな打撃を受けた。収益のプラス面として、為替差損益が改善されたものの、営業利益や持分法による投資利益の減少などによって収益面では前年実績を大きく下回った。当年度は中期経営計画の最終年度であり、目標達成に向けて懸命に取り組んできたものの、海外における予想外の市況の悪化などによる影響を受け、計画通りの目標を達成することはできなかった。「今後は日本を中心に革新的な事業改革に取り組み、今期と来期の両期においてV字回復を果たす」(五嶋社長)。

セグメント別では、基礎化学品事業の売上収益は前期比8・2%減の1102億6100万円、営業利益は同27・4%減の45億3500万円。スプレッドの縮小や、在庫評価差額などの加工費が増加したことなどが圧迫要因となった。アクリル酸およびアクリル酸エステルは、国産ナフサ価格の下落に伴う原料価格の下落などによって販売価格が低下。酸化エチレンは、販売数量は増加したものの、国産ナフサ価格の下落に伴う原料価格の下落により、販売価格が低下したことで減収となった。エチレングリコールは、製品海外市況の下落による販売価格の低下、販売数量の減少などによって伸び悩んだ。セカンダリーアルコールエトキシレートは、販売数量は増加したものの、原料価格の下落などに伴って販売価格が低下した。

機能性化学品事業の売上収益は同8・9%減の1552億7200万円、営業利益は191億1900万円の損失(前期は430億円の利益)。生産・販売数量の減少や、スプレッドの縮小、NSEおよびシラス社の減損損失を計上したことなどの要因によって大きく伸び悩んだ。高吸水性樹脂(SAP)は、原料価格や製品海外市況の下落に伴う販売価格の低下などにより減収。「SAPの需要の落ち込みは欧州を中心に著しい状況にあったが、前期から後期にかけて回復してきた。当社としてはSAPサバイバルプロジェクトを強化し、事業としての立て直しを図る」(同)。特殊エステルは、製品海外市況の下落などに伴い販売価格が低下、新型コロナウイルス感染症などによる世界景気の減速に伴い需要が低迷しており、販売数量が減少した。コンクリート混和剤用ポリマー、エチレンイミン誘導品、洗剤原料などの水溶性ポリマーおよび塗料用樹脂は、需要低迷で販売数量が減少、無水マレイン酸は、販売数量は増加させたものの、原料価格の下落などにより販売価格が低下した。電子情報材料および粘着加工品は、販売価格は上昇したが、販売数量は減少した。樹脂改質剤は販売価格は下落したが、販売数量を増加させたことにより、増収となった。ヨウ素化合物は、販売価格の上昇や、販売数量を増加させたことにより、増収となった。

環境・触媒事業の売上収益は同34・8%減の76億2900万円、営業利益は同75・9%減の2億300万円。プロセス触媒、脱硝触媒および排ガス処理触媒は、販売数量が減少したことなどにより伸び悩んだ。燃料電池材料は、販売価格が低下した。リチウム電池材料は、販売数量が増加したことなどにより、増収となった。

今期の見通しは、前年度比で増収増益の見込み。売上収益は原料価格の上昇による販売価格の上昇に加え、機能性化学品を中心とした販売数量増加を見込み、増収するとみている。利益面では販売費および一般管理費が増加するマイナス面はあるものの、前年度に計上した減損損失や経営統合関連費用が消失し、販売数量の増加や、在庫評価差額などによる加工費の減少などにより増益するとみている。売上収益は前期比9・8%増の3000億円、営業利益は前期に比べて289億2100万円増益の130億円、税引前利益は同279億2600万円増益の150億円、当期利益は前期に比べて208億9900万円増益の100億円を見込んでいる。