2021年8月20日

〈2022年3月期第1四半期決算説明会〉JSR

過去最高の収益達成
ライフサイエンス事業で

JSR(エリック・ジョンソンCEO)は8月2日、オンラインを通じて決算説明会を開催。説明によると、売上収益は前年同期比21・9%増の823億1000万円、コア営業利益は同56・5%増の125億5100万円、営業利益は同39・0%増の111億4900万円、四半期利益は同654・2%増の86億4300万円、四半期利益は同623・8%増の81億6300万円となり、売上収益は四半期ベースでは過去最高となった。半導体レジストが販売を伸ばしており、半導体材料事業は過去最高、ライフサイエンス事業についても売上収益、コア営業利益ともに過去最高を達成した。説明にあたった同社の宮崎秀樹取締役常務執行役員は「この第1四半期はコア営業利益、当期利益ともに高水準で推移した。コア事業のデジタルソリューション事業とライフサイエンス事業の成長によって、経営方針に定めた目標に向けて着実に歩みを進めていく」と意欲のほどを示した。

セグメント別ではデジタルソリューション事業部門の売上収益は前年同期比8・1%増の392億7200万円、コア営業利益は同34・3%増の104億4200万円。コア営業利益における損益内容は半導体材料・ディスプレイ材料の販売拡大により22億円、固定費の圧縮で10億円の増収があり、販売価格の下落による影響額5億円をしのいだ。好調な半導体市場を背景とした販売拡大が大きく、売上収益の増加に伴い収益性の高い半導体関連事業にあってコア営業利益も大きく伸ばした。

ライフサイエンス事業部門の売上収益は同29・6%増の163億3400万円、コア営業利益は同44・1%増の11億8400万円。主にCDMO事業、CRO事業およびバイオプロセス材料の販売拡大により売上収益が大きく伸びた。コア営業利益は成長投資による費用の増加はあったものの、売上収益の増加で前年同期を上回った。

合成樹脂事業部門の売上収益は同46・6%増の237億5400万円、コア営業利益は同272・2%増の18億6100万円。コア営業利益における損益内容は、販売増加によって17億円、価格差によって1億円の増収要因があり、固定費の増加による5億円のマイナス要因をしのいだ。売上収益は、昨年度低迷していた自動車生産の回復を背景に販売数量を大きく伸ばした。コア営業利益も前年同期の実績を著しく上回った。

同社は中期経営方針に従い、エラストマー事業構造改革を推進。5月11日にエネオスへのエラストマー事業の事業譲渡契約を発表したが、事業譲渡の前提となる企業価値は1150億円と算定している。同日付けで持分法適用会社の錦湖ポリケム社の株式をKumho Petrochemicalに売却、全エラストマー事業をJSRから分離することにより、エラストマー事業を会計上非継続事業へ分類している。同事業譲渡については来年4月1日のクロージングに向け、移管プロセスを進行中。同事業の今第1四半期の損益内訳は売上収益410億円(前年同期は256億円)、コア営業利益は23億円(同57億円の損失)、構造改革費用および税等でマイナス20億円(前年同期は17億円の利益)、非継続事業からの当期利益は3億円(同40億円の損失)。自動車およびタイヤ市場の回復により、SSBRが伸長したことで販売数量が前年同期比で58%拡大。コア営業利益は販売数量効果に加え、販売価格の改定、スプレッドの改善、コスト削減の影響で増加した。エラストマー事業譲渡契約にかかわるコンサルティングについては錦湖ポリケムの売却、資産分割、プロジェクト推進等の事業構造改革費用を計上している。

資本配分方針については「半導体材料、ライフサイエンスを中心としたM&Aを含めた成長のための事業投資を積極的に行う。事業投資に柔軟に対応できる強じんな財務ポジションの維持と50%程度を目安とした株主還元を行っていく」(宮崎取締役)。

通期については、前回発表した業績予想の修正値のままで据え置き、エラストマー事業を非継続事業としたことで売上収益3180億円(前回予想値4680億円)、コア営業利益430億円(同530億円)、営業利益430億円(同530億円)、当期利益300億円(同350億円)、当期純利益270億円(同320億円)を予想している。