【夏季トップインタビュー】バンドー化学
吉井満隆社長
果敢に革新に挑む
ウェブで”困り事解決”に一役
既存の事業をブラッシュアップさせながら、新たな事業を着実に育て上げ、その両輪で持続的な成長を目指しているバンドー化学。大きな変革期にある市場環境にあって、自らも果敢に革新に挑むことで、次のステージの企業の成長を自らの使命としながら、トップとしての陣頭指揮を振るう吉井満隆社長に話を聞いた。
【今期の第1四半期から、第2四半期に突入した現在の市況や業績動向は】
8月6日に公表した2022年3月期の第1四半期決算については、売上収益、特に各利益については数字を大きく伸ばした。売り上げ面は、新型コロナウイルス感染症拡大というマイナス要因によって、市況が大きく落ち込んだ前年から大きく伸び、前々年の水準にまでおおむね回復している。利益面についてはコストダウンや経費削減、製品ミックスの改善などが奏功した。国内の回復はいまだ途上だが、海外では、中国をはじめタイやインドといったアジアのほか、欧米も特に自動車部品事業については前年同期から40億円の売り上げが増加したことで、100億円の大台に戻った。自動車生産台数の回復はOEMの受注にも反映されているほか、アウトドア用途で市場を形成しているATV(オール・テレーン・ビークル)向けの変速ベルトも堅調に推移している。またアフターマーケットビジネスも活況だ。アジア市場では農業機械用ベルトだけでなく、一般産業用ベルトも好調に推移した。搬送用ベルトについては、鉄鋼向けの需要が欧米において復調を遂げているが、市場全般でみれば今後の伸びに期待したい。食品や物流向けは好調で、「シンクロベルト」も堅調な伸びを見せている。
【コロナ禍によって突き付けられた新たな課題への対応や、社内組織の見直しについて】
コロナ禍において、不自由さを強いられている業務内容の一つが営業面であり、相手先への訪問がベースとなっていただけに、その融通が利かなくなったことで新たな手法の構築に迫られた。カギとなるツールとしてウェブを重用し、当社のホームページ内に特設サイト「BANDO SHOWROOM for Food Industry」を開設した。当社の製品情報を発信するとともに、バーチャル展示会を開催するコーナーを設け、当社が出展した「2021国際食品工業展(FOOMA JAPAN2021)」の出展ブースも再現することで、時間や場所に関係なく、〝困り事解決〟に一役買うことができる。当社の製品を動画によって紹介するウェビナーも定期的に開催しており、以前のような状態に可能な限り近付けられるよう力を注いでいる。デジタル化とその技術の活用は、今の時代に不可欠であると同時にイノベーションの好機であるとも考えている。社内的には、事務作業の効率化を図るなどデジタル化の流れを進行させている。また、国内での拠点見直しについては、関東において、バンドー・I・C・S関東支店を関東業務グループがあった東京都江戸川区に移転した。関西ではバンドー・I・C・Sの神戸営業所を、神戸市兵庫区のバンドーグループファクトリー神戸内に移転した。効率化を図ると同時に固定費削減という面からも成果が表れている。
【企業として抱えている課題への対応や、新しい施策について】
原材料メーカーからの値上げ要請が相次いでおり、収益の圧迫要因として深刻度が増している。海上輸送のコンテナ不足といった背景もあって、物流コストも上昇していることから厳しい局面にある。上昇を続けるコストの吸収への取り組みには自助努力で何とか持ちこたえていきたいと考えてはいるものの、取り組みには限界がある。
【中期経営計画のセカンドステージ(BF―2)の進ちょく状況は】
針指の一つである「新事業の創出」については医療機器・ヘルスケア機器分野で萌芽の兆しが見え始めている。昨年の10月には伸縮性ひずみセンサ「C―STRETCH」を活用した初の医療機器として整形外科領域の新製品「ATメジャー」、今年の6月には「C―STRETCH」活用の呼吸領域初の医療機器として、呼吸リハビリテーションに適した「ResMO」を発売するなど、医療機器のラインアップの拡充が進んでいる。今後の展望としては、医療機器のグループ企業であるAimedic MMTが持っているコネクションも駆使しながらバンドー化学の技術も織り込んだ製品開発も推し進めていきたいと考えている。一方、電子資材の分野については、高い評価の下でダイヤモンド固定砥粒ラッピングパッド「TOPX」の採用が進んでいる。空気層に充てんすることで視認性を大幅に向上させるOCAシート「Free Crystal」も市場の開拓と需要の獲得を進めているが、いずれも今後の成長が楽しみな製品として期待を寄せている。
指針「コア事業の拡大」については、自動車向けのアフターマーケット市場に力を入れており、アメリカや中国、インドにおいて成果が出始めている。産業資材分野では軽搬送用ベルト「サンラインベルト」の「ミスターシリーズ」において、さまざまな付加価値を追求し、そのベルトに見合った最適な用途で業務を手掛けているニッチな市場の開拓を推し進める。
指針「ものづくりの深化と進化」については、自動車や農業機械用ベルトなどにおける革新製法の確立に取り組んでおり、量産化によるスケールメリットも呼び込んで業績向上に結び付けていく。
指針「個人と組織の働き方改革」については、業務の効率化とも連動しており、業務プロセスの改善や従業員のモチベーション向上によって実現できる課題として取り組んでいる。職種に応じた目標を定め、仕事の効率を全社的に上げていきたいと考えている。当社は経済産業省の「健康経営銘柄2021」や「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定を受けた。健康経営の取り組みの水準は年々上がっているが、企業が進化を遂げるためには、従業員のポテンシャルを最大限に引き出すことが重要であり、そのためには従業員の健康面への配慮が最も大切であると考えている。
【今後の見通しと市場展望は】
通期の業績は売上収益900億円、コア営業利益60億円、営業利益65億円、当期利益は45億円を予想している。中国における自動車の生産台数は減少しているものの、当社の製品の販売状況についてはアフターマーケット市場からの需要拡大もあって130%程度伸びている。そのほか、ATV向けの受注も順調に推移している。タイやベトナムなどアジアの農業機械向けも好調で、国内についても射出成型機、工作機械向けなどで伝動ベルトが伸びを見せている。
持続的成長を目指す企業としては、環境面への取り組みも重要であり、カーボンニュートラルについても、グループ全体での対応準備を推し進めている。SDGsに関してもグループ目標を立てて、実現可能な項目から積極的に取り組んでいる。今後の展望としては、外的要因にも大きく振り回されたBF―2も来年度が最終年度であり、最後まで全力を出し切ってやり抜いていく。この3年間は次のステージに向けた土台づくりという役割を果たせたと確信しており、こういった努力を積み重ねていくことによって、未来への躍進を果たしたいと考えている。