2021年8月25日

【夏季トップインタビュー】ニッタ
石切山靖順社長

需要拡大へ展開拡大  
幅広い視点から実用性見極める

中長期経営計画「SHIFT2030」で定めた成長戦略に沿って、着実に歩みを進めるニッタ、石切山靖順社長に話を聞いた。

【第1四半期の業績動向は】
コロナ禍で需要が落ち込んだ昨年度に比べ、計画通りに目標を達成することができた。ベルト・ゴム製品事業をはじめ、前年期においては厳しい環境に立たされたホース・チューブ製品事業についても、現状では回復するまでに至っている。

需要業界別では、物流や自動車、半導体分野も活気を取り戻しつつあり、工作機械についても回復基調をうかがわせている。自動車については、需要に対して半導体の供給が追い付かないといった懸念材料は残されているものの、現時点での業況は好調に推移している。

セグメントにおける製品区分の見直しを行い、今期(21年4月)から感温性粘着シート「インテリマーテープ」およびセンサ製品を「その他産業用製品事業」から「ベルト・ゴム製品事業」へ変更した。好調なインテリマーテープについては、新用途を開拓する観点から市場探索の視野を広げる。

また、ロボティクス分野への強化策として、今期からロボットハンド「ソフマティックス」をニッタ・ムアー事業部の管轄とし、メカトロ製品とともに需要拡大に向けた展開を加速させる。

【SHIFT2030の取り組みについて】
この度、「新事業探索チーム」を立ち上げた。公募によって活動に意欲を示した人材を引き上げ、選抜されたスタッフは、アウトソーシングを活用しながら、チーム一丸となって新事業の探索に乗り出す。従来は「ニッタイノベーションクルー(NIC)」がその役割を果たしてきたが、その活躍を評価した上で、技術的な観点に重きを置いていたこれまでから、マーケットインの要素を含めた幅広い視点から実用性を見極め、新事業育成のシーズを多面的に精査して掘り起こす。

【現状で抱えている課題と方策について】
原材料の高騰が続いており、海運のコンテナ不足という背景もあって運送費も上昇している。コスト増という課題が深刻化しており、自社努力によって調整を続けているものの、自社努力で賄えきれない場合は、製品価格への転嫁という選択肢を選ばざるを得ないかもしれない。しかしながら東日本大震災など、数多くの試練を乗り越えてきた当社の経験値を生かし、代替策などで解決を図ることができる。

原材料費の今後の見通しは不透明ながら、全般的な足元の環境は回復に向かっている。半導体不足の問題が想定以上に長引いているものの、半導体産業に深くかかわっているニッタ・デュポンの好調は継続しており、ニッタ化工品についても、鉄道インフラが世界的規模で拡充される見通しにあることから、鉄道車両用空気バネや防振ゴムは中長期的に見れば、成長分野の真っただ中にあると言える。

医療分野の浪華ゴム工業についても、新たな事業プログラムに向けて社屋の刷新に取り組んでおり、新事業に取り組む体制が整いつつある。

【今後の見通しと展望、計画について】
空調分野では、新型コロナウイルス感染症予防対策製品として、病院の待合室や会議室などに簡単に設置可能なファンフィルタユニットを販売開始した。コンパクト化といった製品改良の効果も手伝い、需要に対して生産が追い付かないといった状況も呼び込んだ。当社にとってBトゥC製品は少なく、こういった消費者にダイレクトに技術的な魅力を伝えられる分野についても大切に育てていきたい。

通期については、今期から新会計基準である「収益認識会計基準」を導入し、国際会計基準に準じて収益に対する認識度と透明性を上げていく。海外市場も北米全般、欧州も上向いており、今後も企業努力を継続していく。