2021年9月5日

【2021年12月期第2四半期決算】クラレ

主要事業は増収増益
通期で売上高過去最高計画

クラレ(川原仁社長)は8月12日、ウェブを通じて「決算説明会」を開催した。総括に先立ち、あいさつに立った川原社長は「社長就任から半年が経過したが、ウィズコロナが経営スタンダードとなっている現況において、テレビ会議を通じて世界各国のクラレグルーブのスタッフと話し合った。その対話において、クラレグループの人材が備えている活力や潜在能力を感じ取ることができ、非常に心強く思った。今後もクラレグループを活力と創造力にあふれた企業として持続的成長を遂げられるよう取り組んでいく」と力強く方針を示した。

当期の決算説明によると、売上高は前年同期比15・4%増の3022億9600万円、営業利益は同55・0%増の303億9800万円、経常利益は同61・6%増の284億9600万円、四半期純利益は同27・8%増の117億1000万円となり、増収増益で、特に収益面は顕著に業績を伸ばした。ほぼ全セグメントで増収増益を遂げている。営業利益における増減要因としては数量差で181億円、売値・構成で33億円の増収要因があり、原燃料価格の高騰・為替差損の影響による85億円、その他要因による21億円というマイナス要因を大きく上回った。

セグメント別では、ビニルアセテートの売上高は前年同期比21・9%増の1484億2600万円、営業利益は同45・6%増の246億4400万円。営業利益における増減要因はプラス要因が数量差120億円、売値・構成で30億円、マイナス要因が原燃料価格の高騰と為替差損66億円、その他要因で7億円となり、大幅増益となった。ポバール樹脂は、世界的に需要回復が進み販売量が増加したものの、生産面では今年2月に米国南部を襲った寒波が影響。光学用ポバールフィルムは、前年後半からの大型ディスプレイ向けを中心とした液晶パネルの需要増加により、好調に推移した。PVBフィルムは建築向け、自動車向けともに需要が回復し、販売量が増加。水溶性ポバールフィルムは、洗濯用および食洗器用個包装洗剤向けの販売が拡大した。EVOH樹脂「エバール」は、ガソリンタンク用途の需要が回復したことから、販売量が増加したものの、生産面では米国南部の寒波の影響を受けた。

イソプレンの売上高は同23・2%増の304億6200万円、営業利益は同51・7%増の32億1000万円。営業利益における増減要因は数量差による21億円、売値・構成による3億円。マイナス要因が原燃料価格高騰および為替差損で11億円、その他要因で2億円となり、収益面が大きく上回った。イソプレン関連はファインケミカル、熱可塑性エラストマー「セプトン」ともに需要の回復により販売量が増加。耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」も電気・電子デバイス向け、自動車向けともに需要が伸び、販売が好調に推移した。

機能材料の売上高は同9・4%増の647億2100万円、営業利益は同188・6%増の30億4200万円。営業利益における増減要因は数量差で29億円、売値・構成により4億円のプラス要因があり、マイナス面である原燃料価格高騰・為替差損による6億円、その他要因による7億円を大きく上回った。メタクリルは、飛まつ飛散防止用仕切板やディスプレイ向けなどの販売の増加に加え、市況の回復が進展。メディカルは歯科材料において新製品の投入が奏功し、欧米を中心に販売が好調に推移した。環境ソリューションは、工業用途の需要に回復の兆しが見られ、活性炭の販売は堅調に推移した。

繊維の売上高は同5・9%増の298億9000万円、営業利益は同20・3%増の19億9200万円。営業利益における増減要因は、数量差で13億円のプラス要因が、マイナス要因である売値・構成の4億円、原燃料価格の高騰ならびに為替差損の2億円、その他要因による2億円の損益分を補った。人工皮革「クラリーノ」はシューズ用途、ラグジュアリー商品用途ともに需要が回復し、販売が好調に推移。繊維資材はビニロンでセメント補強向け、ゴム資材向けともに需要の回復が進み、販売量が増加した。生活資材は「クラフレックス」で外食産業向けのカウンタークロスの需要が伸び悩んだ。

トレーディングの売上高は同15・2%増の691億3700万円、営業利益は同11・9%増の23億2600万円。繊維関連事業は資材用途は堅調だったが、衣料用途は市況悪化の影響を受けた。樹脂・化成品関連事業は、国内、中国を含むアジアにおける需要増により販売が好調に推移した。

その他事業の売上高は同1・8%減の217億5400万円、営業利益は同89・9%減の2000万円。国内関連会社の販売が伸び悩んだ。

通期については新型コロナウイルスの感染拡大は依然として続いているものの、米国や中国を中心とする力強い経済回復により、同社グループの主力用途である自動車、電子デバイス、ディスプレイなどの需要は好調に推移。第3四半期以降の同社グループ事業においても、引き続き販売は堅調に推移すると見ており業績予想を修正。売上高が前期比12・6%増の6100億円(前回予想値570億円)、営業利益が同48・8%増の660億円(同550億円)、経常利益が同53・5%増の610億円(同500億円)、当期純利益が330億円(同300億円)と見込んでおり、売上高は過去最高を計画している。