2021年9月25日

【ホース・チューブ・継手特集】タイガースポリマー
被災現場での活躍も

用途に応じた要求性能発揮

タイガースポリマーが手掛けるホース事業の現況は、前期(2021年3月期)の上期は、新型コロナウイルス感染症のまん延(以下、コロナ禍)の猛威にさらされたことで、上期は全般的に落ち込んだ。下期になってからは回復傾向がうかがえ、今期の4月から上半期にかけては、前年同期を上回る業績で折り返した。ただし伸長は遂げたものの、コロナ禍前の一昨年の実績には届かなかった。

しかしながら上半期は全体的に取り巻く環境は明るく、ホースでは一部の特殊なユーザー向けの受注を特需的に受けられたほか、住宅向けも堅調に推移している。最近では高気密・高断熱性を備えた住宅に注目が集まっており、ホースが多用されることから需要拡大要因として期待度は上昇。国策で進められている事業でもあり、今後は漸増する傾向として受け止められているものの、新築住宅着工戸数の増減による影響を受けることから不透明感もある。

土木分野においては、公共工事などを取り巻く環境へのコロナ禍の影響が少なかったことで好調を維持した。今年も各地で自然災害による被害に見舞われたが、デリバリー体制の整備によって迅速な働きで被災地の復興に対応。こうした案件以外でも、防災意識の高まりもあって補修や補強工事などが積極的に進められている。引き合いとしては「タイパワーホースWS型」、耐圧・耐摩耗用「タイパワーホースWR型」など、用途に応じて要求性能に対応したさまざまなホースを受注。最近ではタイパワーホースWS型が、被災現場の生活用水の給水現場で採用されて活躍した実例が話題になるなど、災害防止の観点からスピードを要する案件も想定し、受注に対しては在庫を持つことで迅速に対応できるよう備えている。インフラ整備にも期待をかけており、市場展開しているタイパワーホースへの評価も定着していることから、チャンスがあれば着実に取り込んでいく。同社の営業は、個別対応の案件も高い割合を占めていることから、取引先のニーズに応じたプロダクトで事業としてのポテンシャルを発揮。持ち掛けられた課題に対して必要とされる機能を先読みし「タイパワーホース耐油WS型」のほか、耐熱、耐摩耗、耐放射線など、カタログ品への新たな付加価値を付与する手法を含めたち密な対応も強力な強みとしている。

現場第一主義の同社の事業姿勢において、コロナ禍はコミュニケーション頻度を著しく押し下げたが、同社では前向きな姿勢を崩さずに状況に応じて対応。リモートによる業務であっても、デジタル技術の駆使の深度化を図る努力などによって、業務における最大の効果を引き出す。ウィズコロナという時代に置かれたとしても、リモートによる効率化という面を生かしながら、ひとまずはコロナ禍以前の実績を取り戻す。

半導体関連は引き続き好調を維持しており、この分野についても尽力。主に理化学向けの「メディルチューブ」についても、市場での認知度は確実に高まっており、今後の可能性に期待を寄せている。

懸念材料としては、原材料の高騰や供給不足が続いており、ガソリン価格の高止まりもあって運送費の上昇も深刻化。最近では特に、船便におけるコンテナ不足という課題が持ち上がっており、輸入材料の入荷の面でも逆風にさらされている。こうした状況にあって、同社では安定供給を維持する観点から、樹脂ホースなど製品全般の値上げを8月1日出荷分から実施、「もはやお客様に理解して頂くしか手立てがない」(同社営業部長兼新規事業部担当・渡邊剛常務執行役員)として決断に踏み切った厳しい事情についての理由を話す。

今期については、上半期の勢いは衰えておらず、これまでと同様に回復傾向は継続。同社では、今期の業績は前期よりも上回る計画と見通しを立てており「来期辺りで、一昨年のレベルにまで戻していきたい」(同)としている。