2021年10月5日

日本ミシュランタイヤ
新フリートデジタルソリューション展開

富士運輸と協業
「MRN GO」共同開発

日本ミシュランタイヤ(須藤元社長、以下、ミシュラン)は9月24日、オンラインによる記者会見を開催し、「新しいフリートデジタルソリューション」に関する説明を行った。同社では、富士運輸(本社・奈良県奈良市、松岡弘晃社長)との協業姿勢を取り、富士運輸のグループ会社であるドコマップジャパン(本社・東京都港区、浦嶋一裕社長)とともに、ミシュランレスキューネットワーク(以下、MRN)のプロセスを効率化したデジタルアプリケーション「MRN GO(エムアールエヌ ゴー)」を共同開発し、11月1日から提供を開始する。タイヤ業界における大型トラック向けレスキューサービスのデジタルアプリケーションの運用は今回が初めて。

会見にはミシュランの須藤社長、B2B事業部の田中禎浩常務執行役員、富士運輸の松岡社長、ドコマップジャパンの浦嶋社長が出席。冒頭、あいさつに立った須藤社長は「日本の物流業界はさまざまな課題を抱えており、特にドライバー不足は最も深刻な状況で、その背景には賃金や時間外労働の問題などがある。運送業界においては、直近の深刻な問題として2024年問題という課題を抱えており、2024年にはドライバーの時間外労働の上限が960時間に制限されるにもかかわらず、労働時間の高止まりの状況に対する解決策が見いだせていない。運輸業界が持続可能な成長を遂げるためには、生産性、安全性、収益性の3つの要素が満たされる必要があるが、すべてのモビリティ領域においてサステナビリティを前面に打ち出してきた当社としては、タイヤを超越したソリューションの提案によって解決策をもたらす。タイヤを使用するプロセスのDX化こそが有効な手段であり、今回の協業によって運送業界に貢献していく。新しいサービスを生み出すことによって現状のサービスを一段と進化させ、持続可能なモビリティの環境づくりこそがミシュランの描く未来であり、そのための尽力は惜しまない」と意欲を示した。

MRNは、トラックバスタイヤを使用する運送事業者に対して提供される有料レスキューサービスで、04年4月からミシュランによって展開。先月時点で約1300店のサービス拠点を構えており、約2000社、4万台の車両が登録を済ませ、サービスを活用している。サービス開始以来、登録車両が業務運行中にタイヤトラブルに見舞われた際、コールセンターに連絡が届けられることで確実なレスキューサービスの提供を実施。しかしながら、増え続ける物流需要、少子高齢化や人手不足の影響を受ける労働環境にあって、一層の効率化が望まれていた。

MRN GOは、このMRNをさらに一歩進めたサービスとなり、スマートフォンにアプリケーションをダウンロードし、緊急時にSOSボタンを押すことで必要な情報を送信する。レスキューサービスを受ける前に、事前にタイヤの故障状態を画像でコールセンターへ送信できることが最大の特長。TPMS搭載車両は、ブルートゥースでタイヤ内温度や空気圧情報を送信することが可能となっている。

トラブル車両のドライバーがコールセンターにレスキューを要請すると、コールセンターから出動依頼を受けたMRN登録作業店が迅速に現場へ駆け付けて故障に対応。MRN GOによって必要な情報を事前に送信されることで、情報の精度が向上し、コールセンターは作業店にドライバーの位置情報およびトラブルの正確な情報を伝えることができる。作業店は効率的に出動準備を行うことが可能となり、結果的に故障車両のダウンタイム(トラブルによる車両の稼働停止時間)削減につながる。

MRN GOはアプリストアから無料でダウンロードが可能。加えて、ドコマップジャパンが取り扱っているアプリケーション「docomap GO」を併用することで、対応可能なTPMSの装着車両であれば、1台につき550円でTPMSのトラッキングを含めた動態管理システムが利用できる。

今回のサービスの実用化に向けて、ミシュランとドコマップジャパンは昨年10月から協業体制を構築。富士運輸は、物流業界での幅広い活用を目指してGPSによる車両位置情報管理システムを自社開発し、17年8月にドコマップジャパンを設立した。ミシュランでは、車両のダウンタイム削減のためにはMRNのDX化が必須と判断、ドコマップジャパンが提供するdocomap GOをプラットフォームとすることで、両社の共同開発が実現した。

富士運輸は、78年の創業以来、あらゆる貨物の輸送を手掛けており、これまで培ったノウハウとフジグループの全国拠点ネットワークを組み合わせることによって、顧客にとって満足度の高い最適な輸送サービスを提供している。長距離輸送のロジスティクス・プロバイダーとして、大型トラックの保有目標台数を25年には3000台、30年には4000台、35年には5000台を目指しており、200拠点による体制を計画。松岡社長は「ミシュランさんとは、物流分野が重要な社会インフラとしての認識から、持続可能な成長が遂げられるためのサービス向上への貢献を目指して手を組んだ。さまざまな課題を解決し、DX化を通じてすべての見える化を可能とすることで、輸送効率とドライバーの労働生産性を向上させていく」と、今後の提携の意義について話した。