2021年10月15日

墨東ゴム工業会
SDGsへの理解促進

セミナーを通じて方向性を模索

墨東ゴム工業会(霜田知久会長)は9月30日、新聞社主催のオンラインセミナー「SDGs×RUBBER」に会員を招待し、世界規模で取り組まれているSDGsとゴム業界とのかかわり方について、理解を深める取り組みを行った。主催社はポスティコーポレーションで今回のセミナーが第4回目。第1回開催時には同工業会の堀田秀敏会長(ホッティーポリマー社長)が参加し、ゴム産業にとって有益な情報発信を行った。

第4回目となる今回のテーマは「ゴム業界からのSDGs①パートナーシップやイノベーション」で、ゲストとして日加商工の加藤暢利社長、クリヤマホールディングス社長室の増田昌代室長、ニッタ常務執行役員の篠田重喜コーポレートセンター長が登壇。東京都市大学大学院の環境情報学研究科の佐藤真久教授がビデオ出演した。後半はポスティコーポレーションの馬場孝仁社長が司会を務め、3講師による懇談会も行われた。

最初に、日加商工の加藤社長が「日加商工が運営するゴムリサイクルモデルについて」紹介。ゴムシートメーカーとしてスタートした同社が、工業用品を手掛けるようになったことで工業廃材の問題に直面。ゴム廃材を集積してゴムチップに加工し、建設業を営むグループ企業を通じて、地面の舗装材としてリサイクルを行う事業として成り立たせたことで、環境対応に貢献している。製造からリサイクルまでの入口から出口までを一貫して管理。最近では学校校庭や保育園の園庭、公共施設などに施工されており、本年開催された東京オリンピックにおける施工事例についても紹介した。

クリヤマホールディングスの増田室長はゴム業界からのSDGsに対してパートナーシップやイノベーションという側面から取り組んでいる事業形態について説明。同社では1996年から建機・農機のグローバルなティア1サプライヤーとしてアジアに進出、欧州や南米へのグローバル事業拡大を図る一方、北米におけるホース事業の拡大にも取り組んできた。

国内を起点に4つの中核事業を展開しており、経済価値を創出しながら持続的な成長を目指す目的からSDGs経営を重視。SDGs経営をグループ全社に導入するプロジェクトをスタートさせ、推進に向けた優先順位を設定してバリューチェーン全体を視野にSDGsに向けた枠組みを抽出してきた。その目標と融合させることで、サステナブルに向けた明確なコミットメントを明示。経営と統合し、事業戦略に落とし込んでいる。

パートナーシップを生かしながらイノベーション事業を推進、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる有害物質の除去など自然環境保護から、視覚障害者を助ける点字タイルやノンスリップタイルへのリサイクルまで、製造工程で発生する材料の再利用、資源の有効利用などに取り組んでいる。

ニッタの篠田コーポレートセンター長は、新たに制定した中長期経営計画「SHIFT2030」において掲げた取り組みの柱である〝3大SHIFT〟のうち〝企業価値向上へのSHIFT〟の一環として掲げられているESG推進とSDGsのGoal達成に向けた取り組みについて紹介。同社グループでは、サステナブル経営方針に基づいて活動しており、SDGs目標においては5つの課題に焦点を当て、事業活動を通じて社会への貢献を目指している。

今回は特に、ゴム業界においても珍しい同社の森林経営事業を通じた地球温暖化対策、生物多様性に配慮した環境づくりなどについて説明。同社では北海道十勝地区に6700㌶の社有地を保有しており、東京のJR山手線の内側面積よりも広大な森林地帯として広がっている。この森林によって年間のCO2固定量約148㌧、純吸収量で約3500㌧の効果を上げており、地球温暖化対策に貢献。若手林業就業者の研修の場や現地住民への資材提供などといった地域貢献のほか、北海道が取り組む新技術の試験研究地としての提供、講習を通じた国際協力など、さまざまな方面でボランティア的な取り組みを行っている。

同社では、ベルトの原材料となる皮のなめしに使用するかしわのタンニンを求めて北海道の森林運営に着手。タンニン製造の効率化などによって、森林の必要性は薄れたものの、当時では不要となった土地の払い下げは森林開発に直結しており、同社では森林資源を守ることは重要な社会的責任として判断。現在でも植林・伐採などを30~50年サイクルをかけて行っており、国産材のニーズにこたえた木材資源や苗木の提供などといった森林事業を継続している。「この森林事業の取り組みは、ニッタの多様性と長期的視野をもって地球規模で環境を見据えた姿勢がもたらした事例の一環」(篠田コーポレートセンター長)として表れている。同社では、サステナブルやSDGsといった言葉や考え方のない時代から、社会貢献や環境保全の姿勢を重視した経営を実践。「事業で得られた利益を社会貢献に役立てる創業者の考え方が生き続けており、そうした考え方の下、SHIFT2030の推進とともにSDGsやサステなブル社会の実現に取り組んでいる」(同)。

引き続き、このセミナーの監修を務める佐藤教授がビデオメッセージで参加。日本におけるSDGsの達成ランキングなどを通じて、今後の方向性や意義などについて解説。SDGsを中長期的なチャンスととらえ、環境、経済、社会の統合によって大きな成果が得られることを強調した。