2021年10月25日

ランクセス
天然資源のみで作られた複合素材開発

ポリ乳酸と亜麻繊維の組み合わせ

ランクセス(マティアス・ツァハトCEO)は、天然資源のみで作られた熱可塑性プラスチック複合素材を開発したことを発表した。同社ではサステナビリティがビジネス上において不可欠な要素であると考えており、気候保護、エネルギー効率、サーキュラーエコノミー(循環経済)に主眼を置いている。また資源を節約し、化石資源に頼らない生産プロセスを実現するため、バイオベースの再生可能な原材料を使用する取り組みを進めてきたが、このほど、連続繊維強化熱可塑性プラスチック複合素材「Tepeⅹ(テペックス)」シリーズの新製品として開発された。

「ランクセスは天然の亜麻繊維から作られた生地に、バイオ由来のポリ乳酸を母材として組み合わせ、天然資源のみで作られた複合素材を開発した。この複合素材は、大規模生産に適した品質レベルでの生産が可能」と、同社のテペックス研究開発部門の責任者であるステファン・ザイデル博士がコメントしている。

亜麻繊維はガラス繊維と比べて大幅に密度が低く、この繊維を使用した複合素材は、ガラス繊維で強化されたものよりも格段に軽量化が図られている。テペックスの特長である優れた機械的性能は、主に特定の方向に配列された連続繊維に基づいている。亜麻繊維を連続繊維強化生地の形で使用することによって、その特長を発揮するバイオ複合素材が実現した。このバイオ複合素材の剛性対重量比は、同量のガラス繊維強化素材のバリエーションに匹敵。想定される荷重に合わせて複合素材コンポーネントを設計することで、連続繊維を介して大部分の力を伝達することができる。加えてザイデル博士は「これにより、繊維強化プラスチックの特長である高い強度と剛性が確実に得られる」と述べている。

ポリ乳酸などの透明なプラスチックを母材として組み合わせると、強化亜麻生地は天然カーボンファイバーのような茶色の表面を生み出す。「このような外観は、繊維および複合素材全体が天然由来であることを強調し、例えばスポーツ用品などで視覚的な魅力を高める」(ザイデル博士)。この新しいバイオ複合素材はスポーツ用品以外にも、自動車の内装部品や電子機器の筐体部品などへの応用が考えられている。

化石原料のみを使用したテペックスのバリエーションと同様に、新しいバイオ複合素材はクローズドループの素材サイクルの一部で、純粋な熱可塑性システムとして完全にリサイクルすることができる。「裁断屑および生産廃棄物は再造粒され、単独で、または非強化あるいは短繊維強化コンパウンドの新しい素材と混合して簡単に射出成形や押出成形することができる」(同)。

同社はテペックスの製造において、ポリアミド11などの他のバイオベース熱可塑性プラスチックや、その他の天然繊維や再生繊維の使用を中期的に計画している。