2021年12月10日

長瀬産業
東工大と共同研究契約締結

新素材探索プラットフォーム提供

長瀬産業(朝倉研二社長)は、東京工業大学(益一哉学長)と、マテリアルズ・インフォマティクス(以下、MI)プラットフォーム「TABRASA(タブラサ)」を使用した共同研究契約を締結した。東京工業大学の一杉・清水研究室は、長瀬産業との「新固体無機電解質合成プロセスの探索」をテーマとした共同研究にタブラサを活用、長瀬産業は東京工業大学にタブラサを提供し、東京工業大学による評価を通じて改良、改善、新機能の開発を行う。

東京工業大学の一杉・清水研究室では、「全固体電池の新規無機固体電解質探索」をテーマに新規材料および合成プロセス開発を推進。現在広く用いられている有機液体電解質は、長寿命化が困難で安全性などの課題が挙げられることから、高いサイクル安定性(長寿命化につながる)や難燃性などの特長を持つ無機固体電解質への移行が注目されている。一杉・清水研究室では、より高いイオン伝導度(高イオン伝導度の固体電解質を活用すると、全固体電池の高速充電や高出力化が実現する)を示す無機固体電解質の探索・開発にタブラサを導入することで、効率よく材料を探索。タブラサを活用して科学論文等から抽出した材料の合成条件を抽出し、同研究室の保有する新規材料の自律的合成技術での検証によって最適な合成条件を探索する「プロセス・インフォマティクス」にも取り組む。

長瀬産業は、昨年4月より、東京工業大学が運営する卓越大学院プログラム『「物質×情報=複素人材」育成を通じた持続可能社会の創造』に参画。文部科学省の卓越大学院プログラムは、博士課程を設置する日本の国公私立大学を対象として、2018年度より開始された新規事業で、東京工業大学が運営する物質×情報=複素人材育成を通じた持続可能社会の創造では、持続可能な社会を構築するための新産業創出を担う人材の育成を、企業に所属するプログラム担当者や特定国立研究開発法人の物質・材料研究機構とともに推進する。MIをテーマとするプログラムを通じ、同大学に昨年7月より全固体電池の無機固体電解質の探索を目的としたナレッジグラフを提案。これによりさまざまな形式・種類のデータをAIに読み込ませ、情報を有機的につなげて知識化し、MIに用いることで材料探索の精度を高めることが可能になることから、今回の共同研究に至った。タブラサは、今後も順次新しい機能を盛り込む計画で、材料開発の効率化や創造性、革新性の向上により、イノベーション加速化への貢献を目指す。

MIは、AIや最先端のデータ処理技術を活用して、新しい素材を効率的に探索する材料開発技術として活躍。国内外の大手素材メーカーが研究開発の期間を大幅に短縮する技術として自社開発を進めているが、開発コストや専門人財の確保がハードルとなっている。MI用ソフトウェアサービスのタブラサは、米国IBM社が開発した技術を長瀬産業がSoftware as a Service形態で昨年11月に製品化、高度な知識・技術を備えた専門人財に頼らなくても利用しやすいユーザビリティを持つことから、初期投資を抑えて最先端のMIサービスの利用が可能となる。