2021年12月10日

アシックス
第5回インベストメントデイ2021

「デジタル戦略」のテーマで開催

アシックス(廣田康人社長)は11月17日、神戸市中央区のアシックススポーツミュージアムから、スポーツ用品メーカーとして今後の方向性を示す「インベストメントデイ」のライブ配信を行った。第5回を迎える今回のテーマは〝アシックスのデジタル戦略について〟で、廣田社長をはじめ、同社デジタル統括部長の富永満之常務執行役員CDO(最高デジタル責任者)・CIO(最高情報責任者)兼アシックスデジタルCEO、アシックススポーツ工学研究所の原野健一所長がそれぞれの事業領域における情報を発信。戦略目標として掲げている〝デジタルを軸とした経営への転換〟を具現化するさまざまな取り組みや、そのロードマップについて説明した。

同社では長期ビジョン「VISION2030」において、だれもが一生涯、運動・スポーツを通じた心も体も満たされるライフスタイルを創造するために、プロダクトだけではなく、ファシリティー&コミュニティー、アナリシス&ダイアグノーシスを新たな事業ドメインとして定義。パーソナライズされたプロダクトを基に、最適な環境や仲間とのつながりを創造し、パーソナルデータに基づいたコーチングによって、スポーツによってもたらされる幅広い可能性を追求する。テーマ貫通の手法として同社ではデジタルをとらえており、全社一丸となって取り組みを加速させている。富永常務執行役員をCIO(グローバルインフラストラクチャーセキュリティ兼務デジタル担当)に選任。CDOオフィスを設置しCDO・CIOを兼務する富永常務執行役員の下で、400人を超えるプロフェッショナル人財がアシックス全体をデジタルドリブンカンパニーへと革新するための中心的な役割を担っている。具体的には北米に拠点を置くランキーパーやレースロースター、アシックスデジタルを筆頭に、オランダにエンタープライズのITシステムをリードする部門、日本ではサプライチェーンや企業連携を行う部門を設けており、それぞれが有機的に連携しながらデジタルに関するプロジェクトを推進。スポーツ工学研究所とも緊密に連携しながら取り組みを進めている。

廣田社長の概要説明に続き、富永CDO・CIOおよびスポーツ工学研究所の原野所長が同社のデジタルビジネス戦略について説明。富永CDO・CIOは日米のIT企業に30年間勤務していた経歴を持ち、アシックスには4年前にCIOとして入社した。アシックスのデジタル戦略としては、デジタルビジネス、デジタルマーケティング、デジタルサプライチェーンの3本柱で企業価値創造を推進。デジタルビジネスでは、ランナー向けのトレーニング、レース参加、リカバリーをサポートするデジタルプラットフォームを作成し、グローバルに統一されたプラットフォームを各国それぞれのマーケットに合ったローカルコンテンツで展開していく。ランナーとのタッチポイントをデジタルを通じて拡大。ユーザーの新規獲得と既存顧客に対して継続的に新たな価値を提供する。

デジタルマーケティングにおいては、デジタルビジネスプラットフォームをフル活用することで、一段とパーソナライズされたメッセージを会員プログラムであるワンアシックスを通じて発信。利用者が必要とするタイミングに最適なメッセージを届けることで、より効率的なコミュニケーションを実現し、マーケティング投資に対する収益率向上を目指す。

最初の取り組みとして、ランナーを中心としたカスタマージャーニーを構成、デジタルを利用することでランナーがトレーニングやレース参加、商品購入の検討、アフターサービスの時点での接点を最大化することによってブランドとの密接度を高める新しいビジネスモデルを作成した。ランキーパーとレースロースター、ワンアシックスを統合したモデルを確立することで、レース、トレーニング、商品のトータルサポートを行いロイヤリティ顧客を獲得。具体的にはアシックスレース登録システム、ランニングアプリと会員プログラムをつなぐことによってランナーに対してレース前に必要なトレーニング、レース当日のスケジュール、最新の商品についての情報をパーソナライズされたメッセージとして単一のプラットフォームで届けることで、アシックスロイヤリティの高い顧客の拡大を図る。

同社では、新たにオーストラリアならびにニュージーランドにおいて、レース登録事業でナンバーワンのシェアを誇るレジスター・ナウを子会社化。同社が展開するアプリと、ワンアシックス、ランキーパーとの連携を図ることで、ランニングエコシステムを早期に立ち上げる。今後の展開としては、子どもの足の成長をデジタル手帳で登録できるアプリ、テニスコーチ向けに進めているテニスアカデミー、トライアスロンなど、他のカテゴリーにおいてもデジタルエコシステムを順次展開していく方針。