2022年1月5日

新春トップインタビュー
アキレス

創立75周年の節目
売上高1000億円企業へ

【2021年を振り返って】
新型コロナウイルスの感染拡大による市場への影響は今なお残っており、それに加えて世界的な半導体不足や、さらには原材料の高騰など、当社にとっても大きな荒波にもまれた一年であった。2022年3月期第2四半期の業績については、前年同期がコロナ禍によってかつてない需要の減少に見舞われていただけに、市場の回復が進んだことで好転した。一方、需要分野を見渡すと好不調の明暗が浮き彫りになっている印象で、当社の販売面においても、計画を上回って伸びた分野と期待していたほどは伸びなかった分野がある。

シューズ事業は前年比好転したものの、東京五輪開催期間においても新型コロナの感染拡大に歯止めが掛からず、外出の自粛によって小売店、百貨店での販売が苦戦した。一方、プラスチック事業については、車輌向け内装資材は半導体のひっ迫が春先から継続しており、顧客カーメーカーの生産調整によって当社の販売も少なからず影響を受けた。ただ、中国では日系カーメーカーと欧米カーメーカーは苦戦したもののローカルメーカーの回復は比較的早く、当社の現地製造子会社が供給する車輌用内装資材も現在は順調な生産を維持している。また建材関連では、戸建て住宅向けが住宅着工件数の低迷により伸び悩んだが、マンションなど集合住宅向けは手堅い需要があり、全体的には堅調であった。そのほか、北米向けの医療用途のフィルムや半導体工程用のフィルムは近年の需要の高まりによって大きく伸長した。産業資材事業については、半導体関連ではウエハーの緩衝材や搬送用ケースなどトータルで提案する搬送システムが、次世代通信システムの進展を背景に販売量が急速に拡大しつつある。また、大型樹脂成形品も好調に推移した。

【通期の見通しについて】
上期の実績を精査すると今期の計画達成に向けて軌道に乗っている手ごたえはつかんでいる。しかしながら、第3四半期がスタートしてからの市場の動向をうかがうと分野によっては需要の停滞感が垣間見え、いまだ先行きの不透明感は色濃く残っている状況だ。また、昨年来の原材料の高騰とコンテナ不足による輸送費の高騰が収益を圧迫する要因となっており、計画達成に向けて今後注視していく必要がある。しかしながら、製品価格の転嫁を進めるとともに全社的なコストダウンに取り組んでいくことで、今期の業績予想数値の売上高770億円、営業利益16億円、経常利益21億円、純利益13億円の必達に向けて全社一丸となって臨みたい。緊急事態宣言下で需要の停滞に見舞われたシューズ製品についても、感染拡大の収束に伴う市場の活性化によって販売が持ち直してくると見通している。

【今後一層の伸び代を期待する注力分野と製品は】
市場的には自動車産業におけるシェアをまだまだ拡大していけると見込んでいる。車輌用内装資材については、新たな機能を付与した新製品の開発に努め、それを足掛かりに全体の底上げにつなげていく。開発にあたっては車輌用内装資材を扱う事業部が他事業部と部門の垣根を超えた社内協業を行って取り組んでいる。一例を挙げると操安性、EV向けの熱マネージメント、制音などに関係する製品は、既に実用段階までこぎつけているものもあり、そういった新たな機能を発現する製品を展開していくことで、当社は次世代自動車の快適な車内空間づくりに貢献していきたい。ほかにも医療用のフィルムが特に海外で大きな需要があり、引き続き力を入れる。

【製造面での新たな取り組みについて】
マテリアルズ・インフォマティクスの活用によって素材が劇的に進歩しているが、当社では数年前から大学の研究機関と連携してAIを駆使した加工にかかわるノウハウの研究を行っている。新たな機能や物性を発現する素材の組み合わせや配合などを模索しており、現在は基礎研究の段階を経て具体的な機能や特性を絞り込むための次のステップへと移行している。

【環境経営の取り組みについて】
当社の存在価値として重きを置いていることは、幅広い製品群を提案し、その製品を使って頂くことで生活の基盤を支える企業であることだととらえている。歩くことを支えるシューズ製品から防災関連まで、さまざまな側面から社会的な課題を解決する取り組みの推進を大きな指針としており、それはCSRやSDGsなど企業として果たすべき責任に直結する。バイオマス由来の原材料、可塑剤への置き換えや省資源・省エネルギーでの生産には従来から取り組んでおり、製品面でも生分解性フィルムや断熱材といった製品を展開することで地球環境保護の一助となることを念頭に置いている。近年、製造業の重大な指標となっているカーボンニュートラルについても原材料調達から生産・流通、さらには廃棄に至るまで、すべてのプロセスにおける二酸化炭素の排出量の算定を行っており、断熱材などでは製品効果と合わせて、使用することでCO2の排出量抑制に寄与していることも示していきたい。

【今後の展望と意気込みを】
当社は1947年、興国化学工業としてスタートしてから今年の6月で創立75周年の節目を迎える。企業としての歴史をひも解くとシューズ製品だけではなく、さまざまな素材の開発に挑戦し、事業を継続・拡大してきた先達の奮闘努力がある。当社の社風である〝あきらめないでチャレンジし続ける〟というDNAは現在も社員一人ひとりに脈々と受け継がれており、それぞれが目標を見据えて徹底的に考える意識を醸成しながら、それを組織の大きなうねりに変えて今後も成長への起爆剤にしていきたい。今期は現在推進中の中期経営計画の最終年度となるが、計画の進ちょく状況については、コロナ禍による情勢の変化にほんろうされて計画数値とのかい離があることは否めない。過去においては連結ベースで売上高が1300億円に届いた時代もあったが、新しい中計ではもう一度その成長路線を歩むための基盤を築き上げていこうと思いを新たにしている。

具体的な方向性の一つとしてはシューズの復活である。売上高1300億円の時代、その30%近くを占めた当社の顔を改めて再構築していきたいと考える。一方で医療分野や自動車関連など、新たな需要の開拓が見込める分野にさらに注力しながら、防災関連では企業のBCPに役立つような事業も展開していく。シューズの復活と時代に呼応した製品の拡大をさらに推し進めることで、売上高1000億円企業への道筋を描いていきたい。