2022年1月15日

新春トップインタビュー
ニッタ

Namd事業確立
新事業創出へ向けて第一歩

【2021年を振り返って】
昨年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による大きな影響を受けたが、リーマンショック時のように需要がなくなるということはなく、通常の操業を行う中、第2四半期の業績は好調だった。新中長期経営計画「SHIFT2030」の初年度としては良いスタートが切れたと思う。SHIFT2030の重点目標としている〝新事業の創出〟への取り組みでは、当社独自のカーボンナノチューブ分散技術と独自複合化技術「Namd(エヌアムド)」の事業化を進めているが、さまざまな方面から賞を受けるなど、素材技術として注目を集めており、各方面から数多くの問い合わせを頂いた。今後は、スポーツ用品分野から産業品分野に用途を広げることで事業としての確立に結び付けていきたい。

【投資の状況と計画については】
奈良工場の敷地内にNamd関連の新工場を2棟建設する。第1棟は2022年年末に完成し、2023年には第2棟を建設する予定だ。設備を除いた投資額は21億円となる。組織的な見直しも念頭に入れながら事業化に向けての端緒を開く。Namdについては事業化プロジェクトが活動を展開しており、2030年度は2021年度比で生産量を20倍、50億円の売り上げを目標としている。

また、海外においても必要に応じて積極的に投資を行っていく。北米のグループ企業であるニッタコーポレーションオブアメリカ(NCA)が好調で、主力事業の工業用ベルトや樹脂製のホース・チューブなどの需要が拡大していることから、資本を投じて供給体制の強化を図る。本年は、新事業の創出に向けての第一歩を踏み出すとともに、既存事業の成長にも拍車を掛ける。ベルト事業は安定しているが、物流を中心にグローバル化に一段と力を注ぎ、ホース事業についてはEV化の流れが加速している状況から、投資をかけて柔軟にシフトしながら展開を進めていきたい。EVは温度マネジメントが重要な課題となることから、冷却装置などに向けた製品の展開を見据えている。EVのニーズをくみ上げながら既存事業の成長につなげる。

【新たな事業展開について】
再生医療の分野では「再生医療事業化プロジェクト」を発足させ、足場づくりを行っている。新事業探索チームは、研修後となる今年の4月から本格的な活動をスタートする。新規事業の創出に向け必要ならばM&Aも視野に入れ、リソースを集中させて事業化への可能性を高めていく。既存事業においては、インドにおいて、現地企業と合弁で空調用フィルタの製造販売会社を設立した。インドでは、既にベルトやホース・チューブ製品の加工販売を行っている「ニッタコーポレーションインディア」を開設しているが、現地では薬品関係の市場が拡大していることから、現地企業を開設してフィルタ需要を取り込む。今年の8月からの操業開始を予定している。

【環境対応への取り組みについては】
2030年までに生産段階で含まれるCO2排出量を、2013年度比46%の削減を目指す。例えば電力の再生可能エネルギーへの転換や、太陽光発電など社内の状況を見極めながら効果的な施策を打ち出していく。

SDGsへの取り組みにおいては、当社は北海道の十勝地区に約6700㌶の社有林を保有しており、森林を守り、二酸化炭素の吸収・固定を図ることによって地球温暖化の防止に貢献する。森林を通じた社会貢献として、費用を投じてもこの取り組みは継続していく。

【今後の展望と取り組みについて】
半導体不足や原材料の高騰といった懸念材料も残されているが、半導体に関しては中期的に見れば問題が克服に向かい、半導体産業自体も成長が続くと考えている。原材料の高騰については、1年間で約3億円の影響を受けている。当社では昨年10月から値上げに踏み切ったが、それでも半分もカバーできていない。素材の代替品を模索するなど手立てを打ち、ユーザーへの負担を抑えながら安定供給を図っていく。

今年はSHIFT2030のフェーズ1の2年目となる。昨年は計画を上回る結果となったが、シフトに向けてこれからさらに努力を積み重ねていかなければならない。カーボンニュートラルへの取り組みや、EV化の潮流など、事業環境は大きな変化の時を迎えている。

干支の格言では「丑つまずき、寅千里を走り、卯跳ねる」というが、今年は卯年で跳ねるための準備を整える一年になる。