朝日ラバー
CNT充てんシリコーンゴム
高い導電性と最適硬度の両立達成
朝日ラバー(渡邉陽一郎社長)とGSIクレオス(本社・東京都千代田区、吉永直明社長)は、GSIクレオスの独自開発品であるカップ積層型カーボンナノチューブ(CSCNT)を、朝日ラバーのシリコーンゴムに最適に分散させたCNT充てんシリコーンゴム複合材料を共同で開発。高い導電性と最適硬度の両立を達成し、用途に応じた硬度のオーダーメード化に成功した。
CSCNTは、学術的には切頭円錐形炭素網積層構造炭素繊維と呼ばれ、カーボンナノチューブ(CNT)の一種として分類されている。このCSCNT導電シリコーンゴムは、電子部品の接点として適用可能な導電領域を達成しており、自動車に用いられる導電接点として、長期間にわたる実証試験の結果、このほど、屋内外の過酷な環境でも適用可能な自動車向け部材として採用され、今春から同関連業界向けに納入が開始されることとなった。
本来、シリコーンゴムは環境対応性能が高く、高結晶で強じんなCNTとの親和性は良いとされていたが、CNTの難分散性によって製品化が実現されていなかった。今回の開発成功によって氷点下から高温、多湿、乾燥など、さまざまな過酷な環境にさらされる自動車部材への適用が可能となり、画期的な成果と言える。
従来の導電フィラー(充てん剤)では、シリコーンゴムとフィラー界面の影響で、十分な導電性が得られないだけでなく、過剰な硬化、固化してしまうなど致命的な課題があった。今回の開発品はこれらの課題を解決し、体積抵抗率0・4~0・5Ω㌢という従来導電添加剤では得られなかった低抵抗率領域を達成するとともに、硬度(Duro A)70~90の領域で、用途に応じた調整が可能。耐熱性に優れ、高温下でも体積変化率が少ないといった優れた特長を得ることに成功した。
今回の開発品では、CSCNTが導電フィラーとして用いられているが、CSCNTは高い結晶性を有した優れたカーボンフィラー。この高結晶性フィラーの充てんにより、シリコーンゴムの電気特性の向上だけでなく、硬度、柔軟性の最適調整を含む機械的特性、耐熱性、耐久性の向上、低比重(軽量)などが期待される。これらの優れた特性は、シリコーンゴム部品の超長寿命化をもたらし、地球環境への負荷を軽減するとともに、柔軟性の最適化によって高機能を保持したまま人体へ適用する場合の接触感の改善も可能となる。
朝日ラバーとGSIクレオスは、今後も本導電シリコーンゴムのマーケティングを共同で実施し、サステナブルな社会の実現に貢献する導電ゴムとして自動車や航空機等向けセンサーやケーブル、IoT社会に適用が期待されるウェアラブルデバイスの電極パッド等への用途展開を進める。
なおGSIクレオスは、1月26~28日に東京都江東区の東京ビックサイトで開催される「nano tech2022 第21回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」に出展し、本導電シリコーンゴムのサンプル展示を行う予定。