2022年3月15日

【トップインタビュー2022】
ユーシー産業

高い占有率を維持
ネットワークの拡充目指す

【前期(2021年12月期)の実績と、現在の業況の推移について】
前期の売上高については前期比107%となり、計画もクリアした。しかしながら利益面においては原材料や輸送費などといった各費用が大幅な上昇を続けた影響を受けたことで、売り上げの伸びを生かしきれずに微増にとどまった。第1四半期に急増した空調機器用換気管の出荷量が昨年と比べてわずかにスロースタートとなったものの、新規ユーザー向けの出荷が立ち上がったことで、換気管の売り上げ増に貢献した。ハウジング向けダクトは昨年上期は前年実績に届かなかったが、後半になって予定通りの出荷量となったことで大きくばん回した。今期に入ってからも同様の出荷レベルを維持しており、前年を大きく上回る売り上げとなったことから、1月はその他一般消費財向けなどにおけるマイナス要素をカバーして売り上げは前年を上回った。2月に入ってからは、半導体不足の影響などにより各家電向け商材において出荷調整が行われたことから、継続していた好調な動きがわずかにスローダウンし、3月以降のフォーキャストも当初予定より大きく後ろ倒しとなっており、不透明感が出始めている。

【時代をとらえた新たなビジネススタイルの展開については】
SNSを活用し、空調施工者とのネットワークづくりに向けて取り組んでいる。昨年は「無料サンプル配布キャンペーン」を実施し、一定人数におけるコミュニティを形成することができ、製品紹介もダイレクトに実施できることから、拡販にもつなげていきたい。現在は「スマートウォッチプレゼントキャンペーン」を展開しており、ネットワークの拡充を目指している。空調業界における有名ユーチューバーや、インスタグラマーとの交流も始めており、インフルエンサーの力も借りながら、ネットワークの拡大を図り、さらなる拡販につながる活動へと発展させる。当社ブランド品の別分野においてもSNSを使って拡販につなげていきたい。

【今年2月に東京ビッグサイトで開催された「HVAC&R JAPAN 2022」に出展された手ごたえは】
2年に一度のペースで開かれる展示会で、今回は4年ぶりの開催となったが、まん延防止期間中だったこともあり、来場者数は4日間合計で例年の5分の1程度の5000人程度にとどまった。そうした状況ながら主要ユーザーや当社と交流のある工事店インスタグラマーとの面談もできたことから、この機会を生かして当社の製品に対する思いや開発に向けた考え方などを伝えられたことで、今後も当社製品を継続的に使用して頂けるだけでなく、アンバサダーとして情報発信もして頂けることになり、当社としては一定の効果は十分に持てたと考えている。

【需要業界における今後の市況については】
1社占有であった空調機器用換気管市場はコロナ禍において順調に市場が拡大し、前期後半に2社目が立ち上がったことでさらに広がりを見せている。市場は今後、一定の比率を確保するものと見ている。ハウジング向けダクトも”換気関連市場”の一つとして注目されており、前期後半より順調に市場が拡大している。今期も需要は一段と伸びると予測しており、コロナ収束後であっても換気関連の拡大した市場は維持されるだろう。そうしたすう勢にあってOEM商材はここ数年で大幅に売り上げを伸ばしている一方、自社ブランド品の販売の伸び率は微増にとどまっている。売上構成比率が低下しており、利益面においても売り上げの安定性においても自社ブランド品の比率をしっかりと維持していく。

【国産化の推進による鳥取工場の現状は】
ここ数年にわたって急増している換気関連商品は、すべて鳥取工場での生産品であることから、鳥取工場における売上比率は年々高まっている。昨年度だけでも10%増となっており、2016年の中国撤退前と比較すると、鳥取工場の生産売上比率は15%増加している。ただし、旧中国工場からの供給が完全になくなったわけではなく、現在でもコストの問題により、数社のユーザー向けで残っている。しかしながら、度重なる値上げやコロナ禍における供給不安もあり、国産化に対する検討も一部で再び始まっており、今期中に国産品として競争力を備えた製品の開発を完了させ、各ユーザーへ提案していきたい。輸入品を手掛けている数社のユーザーの品目が国産品に置き換わることで、鳥取工場の生産比率は85%を超える。2年以内に達成させたい。

【原材料費の高騰に対する対応は】
コストは継続的にアップしていることから、当社としても値上げを実施せざるを得なくなった。価格改正案を作成しており、自社ブランド品については4月より一斉に実施する予定で、OEM品については各社個別に交渉を開始しており、既に多くのユーザーから了承を得ている。今後の原材料価格の動向によっては、年内に再度値上げに実施する可能性も有るが、できる限り回避したいと考えており、そのための努力は続けていく。

【空調機器分野の新規製品における市場での動きは】
空調関連新製品では、HVAC&R JAPAN 2022で紹介した断熱ドレンホースNDH型用接続パーツ(VP管異径ジョイント30Aサイズ)を4月1日に発売する予定。接続パーツを充実することによってNDHの拡販にもつなげていきたい。新NDHシリーズも発売から一年が経過し、スムーズに市場に受け入れられている。供給面において安定性が高まったことで、市場の変動にもフレキシブルに対応できるようになり、機会損失を排除することができた。NDHタイプドレンアップホース(仮称)については、EDUで確立したドレンアップ用断熱ドレンホース市場において、今期に廉価版としてNDHタイプのドレンアップホースの投入を予定している。

【キッチンメーカー向け、空調機器メーカー向けのホース市場での動きについて】
キッチンメーカー向け市場においては、昨年までの2年間で大きく伸ばした結果、非常に高い市場占有率を確保した。今後もユーザーに一段と安心して喜ばれるための製品の投入を計画しており、来期までには提案できるよう開発を進めている。空調機器メーカー向けについては、前期および今期とも売り上げ増に貢献している換気管関連商品の増加により、空調機器メーカー向け商材の構成比が増えた。アフターマーケット(空調機器施工市場)と機器メーカー向けを含めると売り上げ構成比の55%を超える貢献度となっており、機器メーカー向けだけでなく、自社ブランド品によるアフターマーケット市場においても確実に売り上げを増加させておくことによって、バランスの取れた売上構成比を維持しておきたい。

【建築・建設向け「エバフリー」シリーズについては】
エバフリーシリーズは、屋内・屋外・埋設のいずれもが安定して売り上げに貢献してきたが、ここ数年はコロナ禍によって拡販に直結する活動が思うようにできなかった。その一方で、市場のニーズにこたえ、バリエーション追加による拡販策を検討中で空調施工市場で進めているSNSを使った拡販活動をこの分野でも開始できるよう準備を進めている。空調施工市場とは違った取り組みを展開し、認知度向上に結び付けていきたい。

【ホース・ダクト業界の今後の展望などは】
家電関連においては、空調関連商品を中心に食洗機などといった当社の技術が生かされる分野が、今後とも現状以上の市場展開を維持するものと見られており、当社製品を絶えず選んで頂けるような製品開発を続けていく。ハウジング向けダクトについては、換気に対するニーズの高まりから今後も成長がしばらく続くものと考えられ、そのニーズに対応できるよう生産体制を整えておく。自社ブランド品においては、空調施工市場だけでなくエバフリーの建築・建設分野においても、さらなる市場拡大につながる活動を続ける。各市場から求められる商品開発の継続は不可欠であり、確実に差別化された独自の製品によって、今後とも各市場において高い占有率を維持し、安定した売り上げ確保につなげていく。当社では、数年前より新商品開発に向けた専任チームを発足しているが、今期において開発専用ラインの導入を決めており、現在予定している各テーマに沿って開発スピードを上げていきたい。