2022年4月5日

日本触媒
新・中期経営計画を策定

3年間で基盤構築
ソリューションズ事業拡大

日本触媒(五嶋祐治朗社長)は3月23日、オンラインで「新・中期経営計画策定」に関する記者会見を開催した。会見には五嶋社長、取締役常務執行役員の野田和宏経営企画本部長が出席、2030年に向けた進化の歩みを示した長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」の最初の3カ年(22~24年度)における取り組み内容を、中期経営計画「TechnoAmenity for the future― Ⅰ」として概要説明を行った。同社では、この最初の3カ年を各分野における基盤づくりを行うとともに、変革に向けてのさまざまな取り組みをスタートさせる期間として位置付けている。

同社を取り巻く環境が刻々と変化する時代の流れにあって、グループ企業理念である「TechnoAmenity」の実現に向け、社会から求められるニーズに柔軟に対応しながら、企業価値を向上。具体的には、長期ビジョンで掲げた〝事業の変革〟〝環境対応への変革〟〝組織の変革〟の3つをDX推進によって、全社一丸となってビジョンを加速させていく。事業の変革については、ソリューションズ事業を拡大。ソリューション提案力の強化と注目市場へのリソース集中、戦略製品群の拡販によって収益力の向上を図り、ソリューションズ事業における営業利益を21年度比で2倍に拡大する。主な取り組みとしては、ソリューション提案力強化に向けたプラットフォームを早期に整備。4月に企画部門を新設し、〝強味を生かせる市場の選択(強みを生かせる注目市場の設定、柔軟で機動的なリソース配分)〟〝顧客課題の把握力強化(ターゲット顧客の選定、顧客情報の可視化と共有化)〟〝ソリューション提案力強化(企画・開発・マーケティング機能の設置・強化、市場ごとにエキスパート育成)〟〝タイムリーな生産体制構築(早期の生産技術部門関与、ソリューションズ対応設備増強、日本触媒グループ内設備の効果的活用、外部委託先との積極的連携)〟の4つを重点ポイントとして早急に取り組む。新たな成長分野として設定し、これまで先行投資をかけてきたライフサイエンス分野においては、健康医療・化粧品事業の本格化・収益化に向けた活動に拍車を掛ける。エナジー&エレクトロニクス事業戦略については、強みを武器に電池・エレクトロニクス・環境浄化分野など成長分野においての事業拡大を目指す。具体的には、電池関連材料の市場拡大により、複数のアイテムをグローバルに展開、エレクトロニクス関連は、ディスプレイ分野中心に事業規模に成長させ、用途展開やラインアップの拡充を図る。インダストリアル&ハウスホールドについては、市場全体の課題を把握し、複合的にソリューションの提供を実施する。

マテリアルズ事業強じん化においては、収益力強化とサステナビリティ推進による付加価値向上を図る。事業戦略としては、ベーシックマテリアルズにおいて、安定的なキャッシュを創出し続けるための事業基盤を構築。アクリル事業においては、AA・SAP一体運営によるシナジーの最大化を創出する。SAPサバイバルプロジェクトを継続し、収益性の向上を図る。具体的にはAA・SAPの生産性の向上、既存プラント改修による能力増強、高効率生産技術を導入した設備へのシフト、グローバルでの最適な生産・供給体制を構築する。主力製品であるAA・SAPの原料のバイオマス化、リサイクルへの取り組みを強力に推進、リサイクル面においては、回収済み紙おむつから回収・再生したリサイクルSAP生産の実証に取り掛かる。

EOレジリエンスプロジェクトでは、SAPサバイバルプロジェクトの知見をEOおよび誘導品にも生かし、川崎製造所全体での収益性改善を図る。具体的には高度制御、高効率生産導入による製造コスト削減、稼働計画最適化、原料から物流までの一連の事業強化を実現させることによって、収益体質を構築、持続可能な事業として位置付ける。バイオエチレンへの取り組みについては、バイオ原料を使用したエチレン誘導品の製造・販売に向けた調査を2社と共同で開始する。

環境対応への変革に向けては、資源採掘から最終製品廃棄までの、ライフサイクル全体において環境負荷低減に貢献。生産プロセスのCO2排出量削減に加え、環境貢献製品の開発・販売拡大によってユーザーサイドに立った環境負荷低減を推し進める。カーボンニュートラルにおける社会からの要請の高まりに対しては「当社の技術力によって必ずや貢献できる。社会課題を日本触媒の大きなチャンスとしてとらえ、強みを武器に解決を遂げることで化学会社としての成長を果たす」(五嶋社長)。組織の変革では、個人と組織が成長できる仕組みを実現。人事制度改定、ガバナンス強化、生産性向上施策、権限移譲によって効果を引き出す。

財務目標としては、既存分野から成長分野へとポートフォリオの変革を促すことで、著しい成長を達成。ソリューションズ事業拡大に力を注ぎ、24年度に売上割合で全体の35%、営業利益割合で50%にまで押し上げ、ソリューションズ事業のみでの売上高1350億円(21年度推定1060億円)、営業利益を170億円(同85億円)にまで高める。マテリアルズ事業の強じん化により、同事業の売上高を2600億円(同2590億円)、営業利益で155億円(同105億円)へと利益率を拡大。「営業利益をこの3年間でソリューションズ事業で2倍、マテリアルズ事業で1・5倍にまで高めることによって、全体の営業利益を過去最高益となる330億円にまでもっていく」(同)。ROEは7・5%(同6・6%)、ROA6・9%(同6・4%)、総還元性向50%(同33・4%)、新規製品売上収益280億円(同100億円)と設定している。

投資額は成長投資および競争力維持投資として、3年間累計で1200億円を計画している。カーボンニュートラルにおける目標(国内Scope1&2)は、21年度の推定が14年度比でCO2排出量4%削減のレベルを維持しながら、環境貢献製品売上収益を550億円(21年度290億円)にまで引き上げる。D&Ⅰ 目標(単体)は、事務系・化学系女性採用比率で30%(同21%)、女性管理職(基幹職)比率6%(同4%)、男性の育児休暇取得率についても30%(同6%)にまで引き上げる。