住友ゴム工業
天然ゴム生合成メカニズム解明への酵素評価方法
産学の協業で発明
天然ゴムの収率改善等期待
住友ゴム工業(山本悟社長)は埼玉大学の戸澤譲教授、東北大学の高橋征司准教授、金沢大学の山下哲准教授などと共同で、天然ゴム生合成メカニズム解明につながる人工膜(ナノディスク)を用いた酵素評価方法を発明した。従来は天然由来の膜を使用していたが、この人工膜を利用した新たな手法により、不純物を含まない環境において一段と精度の高い評価が可能になった。今回の発明により、今後新たな重要成分の発見を通して天然ゴムの収率改善や、人工的な生合成などにつながることが期待される。
パラゴムノキでの天然ゴム生合成(超高分子量イソプレン鎖の生合成)においては「Hevea rubber transferase1(HRT1)」、HRT1と天然ゴムの蓄積場である膜粒子との結合を補助すると考えられるタンパク質「HRT1―REF bridging protein(HRBP)」、膜の粒子の安定性にかかわると考えられるタンパク質「Rubber elongation factor(REF)」と呼ばれる3つのタンパク質が重要。その事実はかねてより判明していたが、複数の分子結合を行う酵素と考えられるHRT1がどのような条件で機能を発揮するかは解明されていなかった。
HRT1はこれまで、ゴム粒子膜や酵母膜など天然由来の膜上でイソプレン鎖を生合成することは以前より確認。しかしながら天然由来の膜を使用する目的から、不純物の混入が課題となっていた。そこで、天然由来の材料を使わないナノディスクを利用した酵素評価方法の開発を行ってきた。
今回、HRT1をHRBPと一緒に人工膜上に載せることで、HRT1がイソプレン鎖を生合成することを発見。これは人工膜上でHRT1の機能を発揮させた世界で初めての事例となる。
今回の研究成果は、生命科学分野の国際誌Scientific Reports(URLhttps://www.nature.com/articles/s41598‐022‐07564‐y)に掲載されている。