2022年5月10日

ブリヂストン
イノベーション拠点本格稼働

21日にオープニングイベント

ブリヂストン(石橋秀一グローバルCEO)は4月21日、東京都小平市のイノベーション拠点「Bridgestone Innoⅴation Park(ブリヂストン イノベーション パーク)」内に、イノベーションセンター「B―Innoⅴation(ビー イノベーション)」とテストコース「B―Mobility(ビー モビリティ)」の2つの新施設を開設し、同拠点の本格的な稼働を開始した。当日は首脳陣が出席してのオープニングセレモニーが挙行されたほか、メディアに向けた内覧会も開催され、今後、同社グループの研究開発と、社会・顧客・パートナーとの〝共創〟を通してイノベーション活動を推進する新拠点の全ぼうが披露された。

同社ではかねてから開発と、生産の中核を担ってきた小平地区の製造・開発拠点の再構築を進めてきたが、その一環として、まずは2020年に企業としての歩みやDNA、事業活動および未来への取り組みを紹介する施設「ブリヂストン イノベーション ギャラリー」を一般公開。そして今般オープンしたビー イノベーションとビー モビリティは社内外での交流をさらに促進させることを目的としており、これらの複合施設によって〝共感〟を〝共議・共研〟へと関係を深め、さらに新たな価値の〝共創〟へと進化させていくグローバル拠点としてブリヂストン イノベーション パークは新たなスタートを切った。

オープニングセレモニーではまず東正浩グローバルCOOがマイクを握り、「3月1日に発表した企業コミットメント『ブリヂトストンE8コミットメント』では当社が共創したい8つの価値をお伝えしたが、その価値をどこでいかにして創出していくのかを具現化したものが本日お目にかけるこの複合施設となる。内覧会では、ここ小平地域に込められた当社の想いをどうか感じ取ってほしい」とあいさつした。

引き続き登壇した坂野真人グローバルCTOは、ブリヂストン イノベーション パークの概要と新拠点を通じて創出するイノベーションについて説明。同社のこれまでの歩みとブリヂストンE8コミットメントに内包された想いを伝える動画が映し出された後、坂野グローバルCTOは「ブリヂストンE8コミットメントは、さまざまなステークホルダーから共感を頂き、従業員・社会・パートナー・お客様と一緒に価値を創造し、持続可能な社会を支えていくことで実現できると考えている。ブリヂストンE8コミットメントを軸にサステナブルなソリューションカンパニーへの変革を加速していくため、ブリヂストン イノベーション パークは構築された。共感を共創につなげていくためのビー イノベーションは、さまざまなステークホルダーとシーズ、アイデアなどを模索し(共感)、当社のコア技術や製品を実際に見てアイデアを膨らませ(共議)、デジタルを組み合わせた設備を駆使して具体的な開発を行い(共研)、それらを通じて新たな価値を創造してビジネスにつなげていく(共創)ための施設。

また、隣接するビー モビリティはパートナーと開発した技術や商品のプロトタイプを実車を使ってすぐに体感・検証できるテストコースとなっており、これらの施設を最大活用することによって生まれたアイデアをすぐに形にして試すことを繰り返し、スピード感と柔軟性を備えたアジャイルな開発を推進していく」と新施設の担う役割と今後の方向性を示した。

ブリヂストンE8コミットメントを軸とする具体的な共創の取り組みとしては、まず〝同社のコアコンピタンスを結集する共創〟として、さまざまなタイヤの使用環境・使用条件において接地を極めるゴムの匠の技にデジタルを駆使した材料、タイヤ性能、製造シミュレーションを組み合わせることでさらなる進化を図る。こうした技術をベースに構築を進めているのがEV時代の新たなプレミアムタイヤ「ENLITEN(エンライトン)」による戦略で、これまでEV車の装着に最適なタイヤ基盤技術として拡大。今後も技術・商品・ビジネスモデルに、その価値にさらに磨きをかけながら事業戦略に拍車を掛けていく考え。ほかにも”新たな仲間との共創”としてはソリューション事業の拡大に向けて欧州ウェブフリート・ソリューションズ社、豪州オトラコ社、米アズーガ社における取り組みをグローバルで推進。〝人類の夢を背負った共創〟では月面探査車で使われる鋼の繊維を使用したエアレスタイヤを開発。さらに〝探索事業における共創〟ではグアユール事業、ソフトロボティクス事業、リサイクル事業でパートナーとの共創に取り組んでおり、リサイクル事業の国内での一例を挙げるとENEOSと使用済タイヤを原材料に戻す技術開発を推進。使用済タイヤのケミカルリサイクル技術の社会実装に向けて2030年までに大規模実証実験を実施、早期の事業化を目指している。

オープニングセレモニーが終了した後の新施設の内覧会ではまずビー イノベーションの2階から3階へと移動。人と人との出会いとコミュニケーションを促進するため開放的なムードを演出する吹き抜け構造を採用しており、1、2階は各種ラボのほかカフェテリアも設置。3階は〝共創オフィス〟を中心にさまざまな機能を有する複合的なエリアとなっている。最初に見学した「オープンイノベーションハブ」は同社のコア技術や製品を実際に体感しアイデアを膨らませていくスペース。パートナーとあらゆる技術やそこに込められた想いを共有し、共議に向けたきっかけを生み出す場となっている。その後、参加者が体験した「バーチャルシアター」では大画面の大型スクリーンに投影された映像が圧巻。ここでは遠方の現場の様子などを映し出すことで、臨場感に包まれる中、五感を生かした議論を行うことができる。社内外の人たちが利用できる共創オフィスや多くの資料や書籍を有するライブラリを見ながら行き着いた「ラフプロトスタジオ」は各種の工作機械を備え、アイデアをすぐに形にする場。3Dプリンターやレーザーカッターなども完備しており、試作品などを速やかに製作することができる。内覧会では最後にビー イノベーションのテラスから隣接するテストコース、ビー モビリティの全景を一望することができた。直線路約350㍍を含め周回路や異なる路面、さまざまな走行テストを可能にする多目的路も有しており、実車を使用して検証できる解析設備なども設置している。

「これまで栃木のプルービンググラウンドでは研究開発のチームから〝もっとすぐに試したい〟〝近くにテストコースが欲しい〟という声があった。また同テストコースはどちらかといえば商品価値の最終的な確認をする場なので、メカニズムを解析し、新しいものを開発して試していくにはそぐわない一面もあった。ブリヂストン イノベーション パークは自分自身が多様な働き方を自由にデザインできるワーキングスタイルを取り入れており、そういった製品開発に向けての一層の効率化と部門間の壁を取り払った共創活動によって既存の技術の進展だけではなく、これまでになかった全く新しいものが生まれることに期待している」(坂野グローバルCTO)。