2022年5月10日

西部工業用ゴム製品卸商業組合
次世代経営者の会「SDGsセミナー」を開催

サステナビリティ経営の概念学ぶ

西部工業用ゴム製品卸商業組合(岡浩史理事長)の次世代経営者の会(糸井宏之会長)は4月22日、大阪市北区の中央電気倶楽部において「SDGsセミナー」を開催した。テーマは「2022年の現状と中堅・中小企業が今取り組むべきこと」で、講師として三菱UFJリサーチ&コンサルティング・コンサルティング事業本部の井上武彦シニアマネージャーを講師に招き、現在最も重要な取り組みとして取りざたされているSDGsによって求められる事業姿勢や、意識の持ち方などについての知識を学んだ。今後の企業姿勢を模索する上での一助となる情報ながら、関心の高い内容だけに次世代経営者の会の会員だけでなく、一般の組合員の参加も募った。

主催者代表のあいさつ、講師の紹介などが行われ、その後、講義を進行。井上氏の専門分野はBtoB製造業の成長戦略、新規事業開発・マネジメン卜強化で、国家事業である外務省の国内製造業保有技術の新興国での普及・実証事業も手掛けている。

講義の第一章として、〝SDGsとはなにか〟をサブテーマに、SDGsに基づく活動の本質と、企業活動に与える影響を改めて説明。「経営に大きくかかわるSDGs、CSR、ESGといったワードの内容の大きな違いは〝視点〟であり、すべての取り組みは、〝サステナビリティ〟の実現に収れんされる」と強調した。SDGsは国際社会による視点で、CSRは社会的責任に焦点を当てた企業の視点。ESGは環境から企業統治にまで踏み込んだ投資家視点であり、これらはすべての目標はサステナビリティという結果に行き着く。サステナビリティに向けられる熱意の高まりに伴い、CSRの捉え方や責任範囲が拡大。取り組みの粒度をそろえる目的で用意された目標がSDGsとなる。企業は、SDGsによってCSRと事業活動との統合が求めれられており、理屈上ではすべての事業活動がサステナビリティにつながる。今後の企業経営の方向性としては、取り組むべき事業課題の解決において、その解決への道筋を自社内におけるインパクトであったものを、SDGsの軸で考えることによって社会へのインパクトとして大きく働かせる。

現状において、CSRと事業との統合によるビジネスモデルの革新が巻き起こっており、SDGsの動きを受けて起きている企業目標・行動の3つの革新例について紹介。その一つが自社起点から社会起点への転換で、これまでは自社目標を掲げて社会課題を見いだしていたビジネスモデルを、社会課題をくみ上げて自社目標に組み込んでいくSDGs発想への変換が進展。二つ目は、短期から長期視点への転換が進んでおり、来年の成績から企業の持続可能性へとSDGs発想に沿って軸足が変換されてきた。三つ目が、社会変化と事業、財務の連動が図られ、従来はリスクであったものがチャンスとして意識が変換。事業拡大に向けての機会創出のタイミングとしてSDGs発想でとらえられるようになっている。

講師は、ここまで解説してから講義の内容をシフトチェンジ。サブテーマを〝大企業がSDGsに取り組む理由~理想と現実〟に切り替え、一段と現実的な内容に踏み込んだ。ステークホルダーからの要請を受け、サステナビリティ経営へと巻き込まれている企業が大多数を占めるのが現状。実態としては、経営とCSRの統合に取り組めている企業は少数派であり、統合報告書においても、マテリアリティについての記載が約6割、取締役会での関与が約4割程度にとどまっており、今後においてはサステナビリティに関した開示が要求され、取り組みが強くなっていくものと講師は見ている。

最終サブテーマとして〝中小企業として取り組むべきこと〟について言及。企業規模・業種にかかわらず、SDGsへの対応はサプライヤーとしての義務となり、やがてはサステナビリティ対応が、売り上げに直結する時代の到来を予測した。そうした前提の下で、将来的に自社が目指す理想的なゴールは何であるかを探り当てる重要性を強調。普遍的なテーマへのチャレンジは変わらないものの、環境変化をチャンスに変える体制づくりが肝要であり、現状での『商品サービス』『顧客・市場競争関係』『経営資源』といった要素を踏まえながら、カーボンニュートラルなどといったサステナビリティ面での対応方針を定めて推進し、会社としての理想的なゴールを目指す。

講師は、まとめとして「SDGsはサステナビリティ実現のためにプレイヤーである国や企業に与えられた共通のゴールであり、いずれ大企業はサステナビリティ経営を志向することになる。企業規模によって差は生じるものの、多くの企業が取り組み始めた段階であるだけに、数年後にはトップランナーの水準に並ぶことができる領域ではある。サプライヤーとして考えるべきことは、既存の取り引きを維持する取り組みは絶対条件ながら、環境変化によって新たに生まれる市場をとらえるだけの準備と力量を整えておいてほしい。環境変化は、成長市場を生み出す最大の要因であり、事業活動の軸足への変化を促す重要な変数となる。理想的なゴールは、新領域での事業形成によって成し得ることから、皆さんの力によって明るい将来を築いてほしい」と期待の言葉を述べ、セミナーの幕を降ろした。