2022年6月15日

アシックス
「第6回インベストメントデイ」開催

3つのテーマ柱に事業展開説明

アシックス(廣田康人社長)は6月3日、「事業説明会(第6回インベストメントデイ)」を東京都千代田区のステーションコンファレンス東京の会場において実施、ライブ配信も行いハイブリッド形式で開催した。今回のテーマは〝Road to OREGON〟で、①パフォーマンスランニングの全体戦略②C―Project③オレゴン世界陸上――の3つのテーマを柱に今後の事業展開を説明。同社では来月米国オレゴンで開催される世界陸上競技選手権大会において、大会期間中に「アシックス アップリフト オレゴン5K」を実施。市民ランナーや陸上ファンが世界最高峰のマラソン選手の足跡を体験できる機会を創出するが、その開催におけるイベントなどを通じたマーケティング施策、アシックスブランドの価値向上に向けた取り組みなどの説明も行った。

当日は廣田社長、マーケティング/スポーツマーケティング統括部の甲田知子常務執行役員、高岡典男執行役員・パフォーマンスフットウエア統括部長が出席。冒頭、あいさつに立った廣田社長は「実際に会場を設けてインベストメントデイを開催するのは3年ぶりとなる。過去2年間、スポーツ市場はコロナ禍による規制もあり厳しい状況にあった。しかしながら、コロナとの共存に舵を切った国が多くみられるようになり、特に最近ではリアルイベントが再開されており、健康意識の向上によって今後のスポーツフットウエア全体の市場規模は年平均で8%を超える成長を遂げるものと期待されている。コロナ禍においては健康意識の高まりによって、ランニング人口が増えた。行動制限の緩和に伴い、再び個人スポーツからチームスポーツ、デジタルからリアルへ戻るといった傾向もみられる。今年からいよいよ本格的にリアルイベントが行われるようになり、当社が協賛している東京マラソン、ロサンゼルスマラソン、パリマラソンをはじめとした世界各国のマラソン大会が開催され、さまざまなスポーツ大会が再び有観客で行われるようになってきている。スポーツイベントや大会において、消費者や選手・チーム関係者と直接対話して意見が聞けることの喜びを感じており、何よりもスポーツの場面で人々の笑顔が戻ってきたことを本当にうれしく思う。コロナ禍においては、デジタルを通してお客様と直接つながることを学び、リアルが戻ってきた現在、オムニ戦略を加速させた新しい顧客体験の在り方を早期に確立していく。デジタルを中心としたランニングエコシステムを基盤にして、トレーニング、シューズトライアルのほか、各種イベントや大会、直営店でのブランド体験、レース体験といった当社の強みであるリアルでの価値提供も組み合わせていくことで、他社との差別化を一層図っていく」と今後の展望について述べた。

引き続き、今後の事業展開について説明。パフォーマンスランニングカテゴリーでは、パフォーマンスランニングやレーシングの分野において、ナンバーワンのブランドを目指してミッションを展開。若年層の顧客や、新興市場でのビジネス拡大を中核的な戦略として位置付けており、製品戦略、マーケティング戦略、販売戦略、加えてそれらを支えるデジタル戦略、サステナブルな戦略の方向性を統合し、アシックスブランドの価値向上を目指す。その結果として、主要KPIであるマーケットシェアの拡大と粗利益率の向上により、全社目標の達成をけん引していく。

パフォーマンスランニング戦略を遂行する上での基本方針として、2022~24年では、力を注いできた商品の改善という基盤を元に、若年層の消費者や新興国でのビジネスを拡大。〝躍進〟をスローガンとして、新規消費者への認知拡大とファンづくりに注力し、ナンバーワンパフォーマンスランニングブランドの実現を目指す。

続いて、同社が頂上作戦として位置付けているC―PROJECTについて解説。このプロジェクトからハイパフォーマンスシューズ「METASPEED(メタスピード)」が誕生。世界のマラソン選手の記録を足元から支え、箱根駅伝でも着用率が高まるなど、高い評価と大きな支持を集めた。引き続きアスリートとともに商品開発を行うことで、反転攻勢を継続、頂上の奪還を目指していく。

来月15日から世界陸上オレゴン大会がスタート。同社では世界陸上連盟のパートナーとして、同大会を最大限に活用して認知度を高める。トップのランナーのみならず一般の市民ランナーを巻き込み、今までとは違う戦略によってアメリカ市場でのアシックスの存在感を高めていく。

引き続き、甲田常務執行役員がブランドメッセージのフレームワークおよびオレゴン世界大会のマーケティング施策について説明。ブランドのタグラインであるSound Mind Sound Bodyの下、#Live Upliftedをシーズンテーマに〝カラダ動かす、ココロが羽ばたく〟というメッセージを発信していく。Live Upliftedを全カテゴリーの共通テーマとしてブランディングし、アシックスメッセージの認知拡大に努める。同社では来月、アメリカのオレゴン州で開催される世界陸上選手権を次のアクティベーションのターゲットとして設定。〝#Uplift Oregon〟として、3つのゴールを設けており、一つ目はC―Projectを通して中長距離の種目で15%のシェア獲得。二つ目はアメリカのランニング専門店において22年度末までに11%のシェア達成を目指す。加えてさらなるONE ASICSの会員獲得を目標としている。Uplift Oregonのキャンペーンは、4月末にスペインのマラガで行われたMETA TIME TRIALSからスタート。今月からUplift Tourが全米を横断し、7月の本大会でマーケティングを最大化させる。

続けて、高岡執行役員がランニングカテゴリーの躍進に向けてのロードマップについて解説。廣田社長が説明したパフォーマンスランニングの全体戦略のうち、特に力点を置く施策などについて話した。特に重視しているポイントとして2点を強調。1つ目が、注力販売チャネルで、ランニング専門店に注力している現状の同社の施策の背景について説明した。2つ目が、新規顧客の獲得において重要な、顧客の志向の変化と同社の取り組みについて解説。アメリカ市場を中心にランニング専門店に注力していることで、ランニング市場全体に与える影響力が非常に大きく働く。この市場でブランド価値を上げることがランニングビジネスで勝つための重要な要素の一つとして重視。資金力を前面に、マーケティング投資によってブランド価値を上げていく一般的な手法ではなく、同社ではきめ細かな対応によって商品の良さを訴求し、ブランド価値を上げる手法を選んだ。

顧客の志向の変化と同社の取り組みに関しては、国ごとにさまざまなブランドの立ち位置を正確に把握、適切な戦略を立てることで、グローバルな成長を遂げる。BODY(肉体的)、MIND(精神的)など、走る目的の切り口によって、ランニングに対するランナーのモチベーションの変化を情報としてち密に把握。今後も、より情緒的な価値を考慮しながら、多様化するランナーのニーズにこたえられるようサービスや体験、製品を提供していく。