2022年6月15日

〈2022年3月期決算〉藤倉コンポジット
全項目で過去最高に

高収益企業へと成長果たす

藤倉コンポジット(森田健司社長)は6月9日、ウェブを通じて「決算説明会」を開催した。それによると売上高は前期比27・0%増の371億9000万円、営業利益は同255・0%増の41億6000万円、経常利益は同206・8%増の47億7800万円、当期純利益は同243・5%増の40億6200万円で、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のすべての項目で過去最高を更新した。

営業利益率は11・2%、ROEは14・8%。為替相場の変動による為替差益3億8300万円を営業外収益として計上している。同社の中国子会社において、過年度に計上していた未払債務4億5200万円が消滅、特別利益として計上したことで純利益の伸び幅が大きくなった。増収効果もあるものの、徹底したコスト管理が収益に直結、ROEも上昇傾向を続けており、資本効率が向上、キャッシュフローも安定して推移している。「昨年から受注改善を遂げ、収益改善施策からも大きな効果が得られた。初期計画も大きく上回っており、第6次中期経営計画のフェーズ2の定例目標値(24年度の売上高目標354億円、営業利益23億円、ROE5・6%)を上回ったことで、計画の上方修正を実施する。高収益企業としてワンランク上のステージに上がったものと考えており、自信を深めている」(森田社長)。

配当については年間で1株当たり前期比14円増の26円を計画している。

セグメントについては、主要全セグメントで増収増益を達成した。産業用資材の売上高は前期比23・1%増の234億1600万円、営業利益は同202・4%増の11億5100万円。工業用品部門は、年度後半より原材料価格の上昇や供給の遅れなどが発生し始めたものの、自動車関連・住宅設備関連ともに世界的に好調な需要に支えられ、増収増益。制御機器部門は、引き続き半導体・液晶市場の設備投資が好調を維持し、医療市場も堅調に推移し増収増益となった。

引布加工品の売上高は同2・0%増の42億8900万円、営業利益は同58・2%増の6200万円。引布部門は、自動車および電気・電子関連の好調が継続。印刷材料部門は、輸出の受注回復があり、生産体制見直しの効果と円安の影響もあって増収増益となった。加工品部門は、電力関連向けおよび産業用資材関連は比較的堅調に推移したが、舶用品の国内市場向けが低迷したことで伸び悩んだ。

スポーツ用品の売上高は同60・4%増の91億1900万円、営業利益は同175・2%増の34億900万円。収益認識会計基準等の適用により、売上高は300万円減少し、営業利益は100万円減少している。ゴルフ用カーボンシャフト部門は、米国モデル「VENTUS」と日本モデル「SPEEDER NX」が日米で多くのツアープロに使用され、一般ユーザーへの認知が広がり、自社ブランド商品の販売が国内外で好調に推移した。加えてクラブメーカー向けOEM品の受注が増加した。アウトドア用品部門は、ハイキング市場が回復基調にあるものの、物流の遅れなどにより在庫不足が発生、しかしながら第4四半期に入り海外生産の回復が進み、増収増益となった。

その他の売上高は同0・8%減の3億6400万円、営業利益は同4・9%減の7100万円。運送部門は、売り上げ面では前年度のような主要顧客の休業などの影響もなく堅調に推移したものの、原油価格の高騰の影響を受け燃料費がかさんだ。

当期はスポーツ用品を除くすべてのセグメントで半導体不足の影響を受けており、シリコーンゴム、フッ素ゴム不足も影響を受けた。

当期末の純資産は、当期純利益の計上によって利益剰余金が増加、自己株式の取得により、前年度末に比べて26億5300万円増の274億7300万円となった。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の71・2%から72・8%に上昇した。当期のキャッシュ・フローは、当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」(以下、資金)は、前連結会計年度末に比べ11億2500万円増加(前年同期比19・4%増)し、69億500万円となった。

今後の経済見通しについては、新型コロナウイルス感染症の世界経済への影響および原材料価格や物流費、人件費などの上昇、材料供給不足の継続、ロシア・ウクライナ情勢の影響が懸念されることから、先行きについては不透明な状況。今期については、売上高は前期比2・2%増の380億円、営業利益は同8・2%増の45億円、経常利益は同1・6%減の47億円、当期純利益は同社に対する支払いとして経済産業省の「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」6億円を織り込み、同1・5%減の40億円を見込んでいる。

同社グループでは株主への利益還元について、中長期における事業の持続的な成長を支えるための原資として内部留保を確保した上で、配当性向、株主資本配当率などを勘案しながら安定配当する基本方針を実施。今期(23年3月期)の配当については、現時点の業績予測を前提に1株当たり32円(中間16円、期末16円)を予定している。