2022年7月20日

JSR
高密着・高分散材料開発

高密着性や分散性の発現に成功

JSR(エリック・ジョンソンCEO)は、無機―有機素材などの異種材料の界面制御が可能な新材料「HAGシリーズ」を開発した。極性基の少ない低密着性基材との密着性を確保することができる上、耐熱、放熱、熱線膨張などの物性制御を目的として添加される無機や有機フィラーなどを高密度、均一分散することが可能。物性のトレードオフを改良するための添加材料としての使用も想定される。また、HAGシリーズの原料の一部にバイオ原料由来成分を用いたことからSDGsにも寄与する。

第5世代(5G)・第6世代(6G)移動通信システムや自動運転の本格化などを背景に、通信・モビリティ・エレクトロニクス分野などにおいて高温や振動などといった過酷な環境下での高速通信の実現に向けた低誘電基板材料など、さまざまなアプリケーション、デバイスが開発されており、異種界面制御の重要度はますます高まっている。

同社独自の材料設計技術およびオープンイノベーションから得た新たな技術を駆使することによって、新規な界面制御ユニットを開発、高い密着性や高い分散性を発現させることに成功した。新たに開発した界面制御ユニット「New Core」の金原子への安定化エネルギーは従来のフェニル構造と比べて非常に大きく、密着性や分散性に寄与する界面相互作用が大きいことが計算化学によりサポートされている。溶解性、相溶性、熱特性、吸水性、電気特性などといった物性は、機能性ユニットで設計可能、用途に応じた特性を発現させることができる。末端機能化も可能であり、硬化樹脂と架橋反応可能な官能基を導入したグレードも提供できる。

樹脂に関する幅広い基盤技術を持つ同社の強みを生かして開発されたHAGシリーズは、さまざまな組み合わせの異種材料接合においても強力な密着力を発現。金などの不活性な金属表面に対しても高い密着力を示すことが確認されている。室温ラミネートによる接着性もあり、粘着剤のような用途にも応用できる。接着状態での電気絶縁性については高度加速寿命試験や絶縁破壊電圧評価によって確認されており、高い信頼性を必要とする用途にも使用可能となっている。

シリカフィラーにおいても高い分散性を確認。シリカフィラーをHAGシリーズでプレ分散した分散液を調整後、エポキシ樹脂を追加したフィラー分散液を一晩静置した状態でも、シリカフィラーの沈殿が見られなかったことから、分散剤としての効果が実証された。HAGシリーズを使用しなかったエポキシ樹脂とシリカフィラーの分散液では、シリカフィラーの沈殿が発生した。

HAGシリーズは、主材樹脂として使用することも可能で、フィラーを分散させた分散液は高い保存安定性を示すとともに、フィルム化も容易にできる。フィラー添加系にもかかわらず、しなやかな有機―無機複合フィルムが得られ、伸びやじん性を付与することが可能。冷熱サイクルなどの衝撃試験においても高い信頼性を示すことが期待でき、エポキシ樹脂などを併用することによって弾性を制御できることも確認されており、硬化剤の改質材料としての使用も想定される。

今回の研究内容は、6月29日~7月1日に開催された「第5回5G通信技術展」で展示された。