【夏季トップインタビュー】バンドー化学
植野富夫社長
人的資本への投資積極的に
「ワクワクする未来を語ろう!」
【社長としての取り組みについて】
今年4月に就任してから4カ月が経過したが、この期間にお客様や取引先を訪問し、従業員などとの交流を図ることによって、メーカーとしての当社の在り方を社長としての立場から再確認した。株主の皆様とも直接対話したことで、期待の高さや責任の重大さを改めて認識した。この4カ月間は瞬く間に過ぎたが、非常に有意義で大きな収穫が得られたと考えている。近年、当社を取り巻く環境が大きく変わり、既成観念や経験則に基づいた判断だけでは通じない局面に直面している。そうした状況だからこそ、変化に惑わされて浮き足立つことなく、地に足を着けて着実にやり遂げていきたい。
【今期の滑り出しである第1四半期の結果については】
第1四半期の業績は、前年同期との比較で売上高は増収となったが、利益面ではコア営業利益や営業利益は減益となった。セグメントによって様相に違いはあるものの、収益力自体は着実に高まってきている。今後の見通しについては、原材料や運送費などといったコストアップ要因の動向を慎重に見極めながら、取り組んでいきたい。
【中長期経営計画(BF―2)の進ちょく状況は】
今期が計画の最終年度に当たる。定量目標の達成は米中貿易摩擦や新型コロナの影響など、当初想定していなかった事業環境の変化などにより、難しい状況に置かれている。ただ4つの指針である「新事業の創出」「コア事業の拡大」「ものづくりの深化と進化」「個人と組織の働き方改革」については着実に進んでいる。
新事業として医療機器・ヘルスケア機器、電子資材の分野に軸足を置いて取り組んでいるが、新しい需要業界との交流の窓口を開く必要があり、互いの信頼度を高めながら事業としての成立を図る。医療機器・へルスケア機器分野においては、グループ企業に加えたAimedic MMTと共同で加速させている。具体的には、当社が昨年2月に医療機器の品質マネジメントシステム「ISO13485」の認証を取得し、伸縮性ひずみセンサ「C―STRETCH」を活用した初の医療機器「ATメジャー(関節運動テスタ)」や、嚥下時の喉頭の動きが可視化できる「嚥下連動モニタB4S」などを上市している。今後も当社の技術とAimedic MMTのノウハウを駆使することにより、事業の育成を図っていく。また電子資材については、新型コロナウイルスの感染拡大によって、人的交流に制限がかかったことや新規案件の開発速度が想定よりもペースダウンはしたものの、事業化に向けた取り組みは着実に進んでいる。他の指針を含め、次の段階に向けて、世の中の変化をくみ上げながらスピード感を持って取り組んでいきたい。
【EV化への流れに対する見通しと対応は】
自動車のEV化は、大きな潮流だが、世界全体の自動車の数がさらに増加していくにつれ、EVやハイブリッドがシェアを伸ばすと同時に、内燃エンジン搭載車の台数も増えていくと見ている。同時に、新しいシステムの搭載や高性能化が進展する傾向にあり、それらを構成する部品の需要も生まれるだろう。また、自動車部品として求められるベルトも、エンジン回りに限らず、自動車の他の用途でも需要は存在し、EV化が進展した場合においてもベルトを拡販していく道筋は残されていると考えている。
【今後の展開と見通しについて】
コロナ禍によって社会全体が影響を受けたが、これによってウェブを駆使したオンラインの活用が普及した。一方で、フェイス・トゥ・フェイスの重要性などを再認識することになったと思う。当社でもホームページやウェブを通じたアナウンス活動を充実させてきた。展示会のブースを再現したコンテンツを開設するなどホームページを充実させるとともに、ウェビナーを定期的に開催することで、時間や場所にとらわれにくいコミュニケーション手法の一つとして力を注いでいる。その一方で、面談によって業務を進める本来の手法も大切に考えており、状況に応じてハイブリッドに使い分けている。社内においてもテレワークの利点も認識できたことから、恒常的な制度として在宅勤務制度を運用しつつ、意思の疎通やアイデアの起点ともなる対面での話し合いも重視している。
原材料の高騰や気候変動対応など、直面する問題には、高効率で実効性の高いモノづくりを推進しながら適正価格への改定や太陽光発電などのエネルギー面の切り口からも取り組んでいく。
企業の発展は、そこで働く人間のポテンシャルがいかに発揮されるかにかかっていると考えており、従業員に対する期待度の高さは変わりなく、人的資本への投資を積極的に進めていきたいと考えている。このため、本年度の経営スローガンとして「ワクワクする未来を語ろう!」を掲げている。価値観が多様化する中、モチベーションを高めるスイッチは個人によって異なり、求める水準も異なるので、一律的な働きかけだけでは難しいが、それぞれが仕事のやりがいや働きがいを呼び起こす要素として自分の仕事が社会や他者に役立つ仕事をしているという自覚を持つことで、仕事に対するワクワク感を感じてほしいと考えている。
当社の創業者である榎並充造氏の理念として「発信だけでなく受信が大切」という考えがある。この言葉の示す意味は、伝えることも大切だが、相手にその意味や狙いを正しく理解させ、腹落ちしてもらうことが大事ということと理解している。
私自身もできるだけ現場に出向き、従業員と対話し気持ちをキャッチするとともに、こちらの思いを知ってもらうという双方向のコミュニケーションを通じて企業としての持続的な成長を続けていきたい。