2022年9月15日

西部工業用ゴム製品卸商業組合
中堅社員向け「部下とのコミュニケーション実践研修」

業務の指導力向上
常識のギャップ改善法伝授

西部工業用ゴム製品卸商業組合(小島孝彦理事長)は9月2日、大阪市北区の中央電気倶楽部において「中堅社員向け研修」を開催した。今回のテーマは「部下とのコミュニケーション実践研修」で、今年も例年同様、同じ内容の研修を2日間に分けて実施。新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、感染防止対策を万全に整えながら、人数も絞って行われた。2日目となる当日は、組合員企業からチーフや課長などといった役職を担う中堅社員16人が参加、4つのグループに分かれてグループワーキング形式を軸に研修が行われた。

冒頭、あいさつに立った人材育成部会の矢島友雄部会長は「コロナ禍の収束も見えない現状にあって、現在も仕事や日常生活における制約も解消されることなく、厳しい環境の下で仕事に励んでいることと思う。本日は、研修会への参加を通じて自らを磨き、講師の話の内容によって指導する立場に求められる物事の考え方や接し方を身につけていってほしいと考えている。

今回の研修は、部下とのコミュニケーション実践がテーマであり、年齢差という隔たりによってもたらされる部下や後輩とのコミュニケーションギャップを埋めることで、業務を少しでも円滑に進めていく方法についてグループディスカッションを通じて習得していってほしい」と述べ、期待の気持ちを伝えた。

講師として、社会人教育/コンサルティング企業であるインソースの川北真也氏に依頼。営業という他の業種から畑違いであるコンサルティング業務に鞍替えし、さまざまな企業でこれまで700回以上の研修を実施してきた実績があり、企業の組織力を高めることによって企業のポテンシャルを引き出す講習内容が高い評価を得ている。今回の研修の要点としては〝上司と部下の間に広がる常識の差〟〝なぜ上司の話は部下に伝わらないのか〟〝タイプ別の部下とのかかわり方〟〝相手の特性に合わせて伝える、確認する〟〝よくあるコミュニケーションの悩みを解決する〟という5つの課題解決に向けた講習を実施した。

講師はまず、大前提として時代を問わずに世代間によって常識のとらえ方に違いがある事実を強調。変化の緩やかだった昔の時代においては、大人の世代の常識を社会的な規範とし、若い世代に全面的に従わせる指導法も一定の合理性があったものの、変化が激しい現代においては、従来の常識が時代遅れになっている可能性があることも指摘した。「若者に時代遅れの常識を押し付けることで、会社は変化しなくなり進化も止まる」(川北氏)。こういった状況が表面化した事象として、講師の身の回りに起こった最近の出来事を紹介。コロナ禍に見舞われたことによって、製薬会社からの研修依頼が一気に増加した例を挙げた。年配者は対面をアプローチの基本としているが、コロナ禍においては対面におけるアプローチは不可能に近い状況に陥り、病院などといった顧客とのコミュニケーションもほとんど途絶えてしまった。業務自体がストップし、全社的に対応策のねん出を迫られるものの〝会って仕事を進める〟という業務を常識として進めてきた会社のスタイルの代替策は皆無。ところが、若者世代はオンラインでスムーズに業務を進めており、相手側に赴くことなく、従来通り仕事をこなしている。古い常識にこだわって業務を継続しようとしていた年配世代にとっては、まさに青天のへきれきだった。そこで講師は「時代に適合しているのは若者世代かもしれない。年配世代は既成概念にとらわれてしまう傾向が強いが、若者世代は状況に応じて新しい常識を受け入れることができる」と解説。とはいえ、デジタル時代で育ってきた若者とは違い、オンラインにおける業務の進め方になじめない年配世代としては急きょ、研修に頼って新たな常識に適合することになった。

ゆとり世代という言葉が若者に当てはめられるケースも多いが、それは〝個性を尊重し否定しない〟という教育方針の中で生きてきた結果であり、先輩や上司の世代よりも傷付きやすい精神の持ち主であるのも確か。教育にあたる上司や先輩としては、否定ではなく個性を伸ばしていくことで仕事の上達に結び付けていく。指示を出す場合も従わせるのではなく、理由を理解させた上で動いてもらうことが大切であり、与えて当然の仕事であっても、相手の気持ちになった上で、理解が得られるよう物事を考えてから指示する。これまでの上下関係で当たり前であったことが、不条理な方向に受け取られることがないよう、指示者自らの思考の切り替えが必要となっている。

世代間においては、コミュニケーションが希薄化する傾向にあるが、その根源に存在する元凶は〝無関心〟。組織体制が頻繁に変更され、流動性に流されて部下の教育内容も変動。親密度も浅くなり、プライベート重視の若者には好都合になっている。そんな状況において、無関心を解消するためには部下・後輩に積極的に関与する覚悟が必要であり、任せっ放しは単なる放任・怠慢。「何をやっているのか分からない、何を考えているのか分からない存在へと追いやる前に、上司や先輩が意識的に一歩踏み込む勇気を持つ必要がある」(同)。職場のリーダーによる部下・後輩への関与は〝成果を上げる〟〝問題を解決する〟という結果が不可欠。職場における問題は、主に人間同士のかかわり合いで生まれるが、無関心におけるトラブルは、コミュニケーション不足によって引き起こされるケースが数多く存在する状況を講師は指摘。コミュニケーションは、仕事上の的を射た有効な方策を練り上げる土台として働くが、コミュニケーション不足は、同僚への理解度が失われることでメンタル面にも影響を及ぼす。「たとえプライベートな情報であっても、職場内で情報共有することによって問題の回避につながることがある。家庭内のトラブルで突発的な事態(休暇など)になったとしても、周囲が当人の状況を理解できていればフォローもスムーズに進む。当人にとっても安心感があり、会社にとっても従業員にとってもプラスとなる要因と言える」(同)。

引き続き、タイプ別の部下や後輩のかかわり方について解説。〝目標達成志向型〟〝リスク回避重視型〟〝省エネ志向型〟〝段取り下手型〟〝優柔不断型〟〝頑迷型〟といった性格を代表的なタイプとして取り上げ、接し方やコミュニケーションをとるポイントなどについて説明した。このタイプ別をテーマに、各グループでケーススタディを実施。講師は、会場を回遊しながら、各グループで出された結論や対応策に対し、それぞれの意見に相づちを打ちながら、最善として考えられる考え方や接し方をアドバイスして回った。