2022年10月25日

【ホース・チューブ・継手特集】特集トップインタビュー
ユーシー産業

独自製品で独自の市場構築
合理化、自動化は継続的なテーマ

【今期(2022年12月期)の状況について】
上半期の業績は、売り上げは前年同期比107%となり、計画値もクリアした。その一方で利益面については、材料費や輸送費などといった諸費用の大幅な高騰による影響を受けており、それに対して、適正価格に向けた価格改定を打ち出したものの、値上げによる効果が下半期に表れることから上半期は前年同期の実績を下回った。下半期に入ってからも、売り上げは9月末の時点で前年同期比107%を維持しており、計画値もクリアしている。ただし利益面については、今年の4月以降から7月にかけて値上げを実施したが、その後も継続して原料などが高騰し続けており、前回の値上げではコストアップ分を賄うことができない局面に立たされている。製品を安定供給する意味からも適正価格を維持する必要があり、こうした状況をカバーする対応として11月からの異例となる2回目の値上げを打ち出し、価格交渉に入った。ユーザーの多くにおいては現状の環境に対する理解が得られており、協力的に早期に理解を得ることができた。

事業を取り巻く今期の環境としては、前期において大きな伸びをみせた空調機器用換気管の出荷量が減速したことによる厳しいスタートとなったものの、新規ユーザー向けの出荷も立ち上がったことから前期並みのレベルを維持した。ハウジング向けダクトについては、前年下期からの好調な流れが続いており、前期比35%増と伸びている。4月に市場投入した「断熱ドレンホースNDH型用新接続パーツ」については、2種類で当初の計画を上回るスピードで販売量を伸ばしており、販売してから約1万個の販売実績を挙げた。

【空調機器、建築・建設資材などにおける需要業界の現況は】
空調機器向けドレンホース市場は、半導体不足の問題が空調機器メーカーの生産状況に影響をもたらしたことで、末端市場における販売数量に対して生産数量がリンクしなかったことから、前年の実績を下回った。その一方、施工部材市場向けは、機器メーカー向けの数量とはリンクすることなく、末端での販売台数との関連性も強いという側面がある。そのため機器メーカー向けほどの影響を受けることなく、前期比106%となり、前年実績を上回った。学校施設向けの市場については、前年度までにエアコンの一定の普及が完了していることから、今期においては特定需要としての手ごたえには至らなかった。食器洗浄機向け排水ホースは、ユーザーごとに出荷量の違いはあったものの、基本的に半導体不足による影響を受けている印象を受けた。

【建築・建設向けフリーパイプ「エバフリー」の展開は】
フリーパイプは急激に大きな拡大が見込まれる市場ではないが、順調に市場規模の拡大が進んでおり、現時点では前期比115%となり、着実に成長を遂げている。福島原発における雨水処理物件については、今期も対応を請け負っており、例年にわたってコンスタントに数量を維持している。今後の展開としては、現時点における具体的な計画は立てていないものの、市場ニーズには常に敏感に耳を傾け、それらに応じた商品開発は継続的に行っていく。空調部材市場においてSNSを使った情報収集という手法が一定の成果を得たこともあり、建築・建設市場においてもSNSの活用を検討している。

【ウィズコロナ政策における今後の業務の進め方について】
営業活動を含めたコミュニケーション活動の手法を、従来通りの直接的な面会方式へと切り替えた。ただし完全移行という体制ではなく、ウェブにおけるメリットがコロナ禍において実証されたことから、地方ユーザーや工場スタッフを交えたミーティングなどは、直接的な訪問と合わせ、ウェブによる参加を交えたハイブリッド形式を採り入れた。これにより従来以上に効率的な活動が可能になり、有効に活用していきたい。SNSを駆使し、インフルエンサーとの協業も進展したことから、当社のLINEやインスタグラムのオフィシャルアカウントを作成し、キャンペーンなどを実施しながらフォロアーの増加を促し、情報発信の場として活用している。インスタグラマーやユーチューバーとの協業により、情報発信頻度を上げ、間接的な拡販活動も進めている。空調工事業界でも知名度の高いインスタグラマーが今年5月に当社の公式アンバサダーに就任し、販促のPOPにも起用させて頂いたことで、より多くの人々に当社製品のことを知ってもらい、今後に向けての大きな成果につなげていきたい。

【今期の業績見通しと今後の取り組み、業界展望について】
今期も残りの四半期において、換気機能付きエアコン市場で新たに2社が立ち上がるという明るい材料があり、その他市場においても大きなマイナス要因が見当たらないことから、売り上げは現状の前期比107%を維持できるものと考えている。利益面に関しては、今期内で2次値上げを実施した状況においても、材料などの価格高騰分をカバーしきれない厳しい環境に置かれている。

メーカーである以上、合理化や自動化は継続的なテーマであると考えており、新規設備導入は当然のことで、昨年から本格稼働している〝開発専任チーム〟によるロボットを使った合理化・自動化設備を継続的に充実させ続けている。コスト面への取り組みだけでなく人財不足に対しても貢献しており、社内のムード面では「改善提案制度」の運用を「ポイント制度+インセンティブ制度」として行っており、スタッフのモチベーションを高めている。各部門からさまざまな提案が途絶えることなく寄せられており、今期も100件程度の案件が提出されている。細かな改善であっても、積み上がることで大きな成果につながる。単なる提案制度にとどまることなく、各スタッフの改善に向けた目が確実に育ってきており、教育訓練の機会としても役立ってきている。当社では今後も独自の製品で独自の市場を構築することによって、確実に安定したマーケットポジションを取り続けていく。