2022年11月15日

【ホース・チューブ・継手特集】
ユーシー産業

エア魂(コン)女子
公式アンバサダーに就任

ユーシー産業の今期(2022年12月期)の上半期の売り上げは前期比7%増となり、計画値もクリアした。しかしながら、輸送費や原材料などの価格高騰の影響を受けたことで利益面は前年同期の実績に届かなかった。コストアップに対応する目的から4月から7月にかけて値上げを打ち出しており、その効果は下半期の業績に反映されるものの、原材料などの高騰は現在も継続。そのため前回の値上げ分では賄えない状況に陥っており、製品の安定供給を果たすための適正価格を維持する目的もあって、異例となる第2次の値上げを11月から随時開始している。下半期の売り上げについては、9月末の時点で前年同期比107%を維持しており、計画値もクリアしている。

市況に関しては、21年度に出荷量が急増した空調機器用換気管については、一時の勢いを失ったものの、新規ユーザーの立ち上がりもあって、前年に近いレベルを維持している。ハウジング向けダクトは昨年下期からの好調が続いており、前年同期比で35%の伸びとなった。キッチンメーカー向け排水ホースは、前期までに同社製品への主要ユーザーによる受注切り替えが完了したことで、前期の生産量は10%以上の伸び幅となったが、今期は通常の需要環境に戻ったことで5%程度の成長率となった。この事業分野については、市場における大きな変化が期待できない状況にあるものの、同社ではリフォーム市場の動向に関心を寄せている。空調機器向けドレンホース市場は、末端需要はおう盛であったものの機器メーカーが半導体不足による影響を受けたことで、ドレンホースについても生産数量の伸び悩みにおける影響を受けた。施工部材市場向けは、機器メーカーの動向による影響を受けることなく、末端需要の伸びが反映されたことで、前年同期と比較して6%を上回る伸びとなった。食器洗浄機向け排水ホースについても、半導体不足が原因と思われる影響を受けた。

製品の動向については、4月に市場投入した「断熱ドレンホースNDH型用新接続パーツ」を発売したが、当初計画を上回るスピードで販売量を伸ばしており、2種類でほぼ1万個を販売した。建築・建設向けフリーパイプ「エバフリー」シリーズについては、市場規模が順調に拡大していることもあって、現時点で前年同期比15%増となっている。福島原発における雨水処理物件も継続的に請け負っていることで、安定した需要が確保されている。建築・建設市場分野においては、空調資材事業においてSNSを利用した情報収集が一定の成果を上げたことから、この分野でもSNSの活用を検討している。

SNSによるインフルエンサーとの協業が進展しており、同社のLINEやインスタグラムのオフィシャルアカウントを作成し、キャンペーンなどを実施。フォロワーを増やしながら情報発信の場として活用している。加えてインスタグラマーやユーチューバーとの協業により、情報発信頻度を上げることで間接的な拡販活動も進展。今年の5月に空調工業業界で高い知名度を誇るインスタグラマー〝エア魂(コン)女子〟さんが、同社の公式アンバサダーとして就任。職人さんのネットワークやユーチューブの出演などさまざまな場で活躍している女性で、今年大学を卒業したばかりだが、大学在学中に法人「エア魂女子」を設立。空調機器の工事という仕事を行う傍らインスタグラムの発信などによって、SNSでも知名度を上げている。同社では「仕事を通して当社の商品を知って頂き、かねてからSNSでも紹介して頂いていた。公式アンバサダーにも就任して頂いた」(永𠮷社長)。

彼女によるSNSの情報発信力の効果、コラボキャンペーンなど店頭でのアイキャッチによる効果が期待できるなど、互いに良好な協力関係が構築されている。

同社の今後の事業の展開については、昨年より「開発専任チーム」が本格稼働。既に複数のロボットを使った自動化設備を製作し、二次加工やリーク検査に応用している。既に実用機を5台作成して導入しており、製造の場面でも補助作業に使うことができる設備を複数台数並行して製作中で、今後の合理化に向けて期待している。新製品開発に向けた活動も推進。今期において開発専用ラインの準備も進めており、年内に完成させる予定。完成後は、量産設備を使用して行っていた試験検証を専用ラインで行うことができるようになることから、開発期間の大幅な短縮が図られる効果が期待できる。

今期は、残りの四半期において、大きなマイナス要因も見当たらないことから、売り上げは前期比107%で着地するものと見込んでいるが、原材料などの価格高騰分を値上げによって、すべてを賄うことが難しい状況にあることから、収益面においては今期も厳しい状況が継続するものと見ている。