2023年1月10日

新年トップインタビュー
バンドー化学

実効性備えた施策
さらなる成長戦略打ち出す

【昨年を振り返って】
昨年は変化の激しい一年であった。コロナの影響はいまだ続き、ロシアによるウクライナ侵攻など地政学的リスクも顕在化した。原材料や運送費の高騰、エネルギーなどのユーティリティの価格上昇によるコスト圧迫、急激な為替変動の影響も受けた。

経営面では2022年度は現中長期経営計画の最終年度であるとともに、2023年度からスタートする次の中長期経営計画の策定期間となった。現中長期経営計画の成果を総括しながら、次の計画実行を担う世代のメンバーと積極的に対話し、議論を重ねてきた。産業構造が大きく変わる中、その時々の事業環境を的確に見定めながら、実効性のある取り組みに注力し、現状にとどまることなく事業領域を広げていく必要がある。次期中長期経営計画の具体的な内容はまだお話できないが、新事業の創出、コア事業の拡大を推し進め、持続的な成長を目指すという大きな方向性は変わらない。

2022年を象徴する一文字を〝繋(つなぐ)〟としたが、次期中長期経営計画でのさらなる躍進を達成させ次世代へバトンをつないでいきたい。

【新事業の現状と取り組みについて】
注力分野として、電子資材事業と医療機器・ヘルスケア機器事業に焦点を当てている。電子資材事業においてはコロナ禍で滞っていた対面営業も徐々にできるようになった。今後需要も回復していくと見通している。

具体的な製品を挙げるとダイヤモンド固定砥粒パッド「TOPX(トップエックス)」は、高い加工レートによりお客様の生産性向上や環境負荷低減に貢献する製品として評価されている。自動車分野ではカーナビやモニターなどの視認性を高める光学用透明粘着シート「FreeCrystal(フリークリスタル)」の評価が高く、着実に需要が増えている。

医療機器・ヘルスケア機器事業においては、健康に対する意識、クオリティ・オブ・ライフの位置付けが一段と大きなものとなる高齢化社会において、グループ企業であるAimedic MMTと連携を取りながら事業の柱へと育てていく。医療費を抑制しようとする流れもあり、償還価格引き下げというリスクもあるが、革新的な付加価値を織り込んだ新製品を継続的に市場投入することで、当社グループを支える大きな事業の柱へと成長させることができると信じている。また、当社が開発した伸縮性ひずみセンサ「C―STRETCH(シーストレッチ)」を活用した製品の上市などシナジー効果も発揮している。さらに、当社の表面処理技術と、Aimedic MMTの知見を融合して開発しているインプラント製品についても進行中だ。

【既存事業の現状と今後の展望について】
自動車部品事業については半導体不足による新車組み付けへの影響は受けたものの、アフターマーケットでの需要は伸びており、この需要を取り込むとともに、EV向けベルト需要も取り込んでいく。EV化の進展は国や地域によって濃淡があり、先行きは読みづらいが、今後も当面はエンジン搭載車が大半のシェアを占めると見られることから、現時点では事業展開の軸足を極端に移す必要はないと考えている。

産業資材事業は、半導体不足問題も解消に向かっており、経済環境も通常に戻りつつあることから反転攻勢に移り、新たな需要を掘り起こしていきたい。その中でも農機用ベルトへの期待は大きく、世界的な人口増加傾向を踏まえ、食品需要はグローバルで期待できることから、積極的に拡販していきたい。

高機能エラストマー製品事業は、新事業と親和性が高く、新しい需要拡大に対応しながら拡販に取り組んでいきたい。

【今後のテーマと見通し、次期中長期計画の方向性について】
2022年度の第2四半期の業績は、売上収益において過去最高を達成したが、利益面は原材料やユーティリティの高騰によるコスト圧迫の影響を受けた。今期の見通しとしては、コストアップによる影響は続くと見ているものの、円安基調を踏まえ売上収益と親会社の所有者に帰属する当期利益を上方修正した。売上収益が当社としては初めて1000億円を超える大台に乗せる見通しを立てており、現中長期経営計画の目標水準には達していないものの、まずまずの成果が出せるかと思う。来期からは、この成果を引き継ぎ、さらなる成長戦略を打ち出すことになるが、さまざまな環境の変化を常に想定しながら、柔軟に対応することができる体制を構築し、素早く手を打つことで、常に最適な選択肢を引き出していく。次期中長期経営計画に取り組んでいく中で、2026年に創業120年という節目の年を迎える。ただの通過点とならないよう、しっかりと目標達成を目指して取り組んでいきたいと考えている。