2023年1月10日

新年トップインタビュー
フォルボ・ジークリング・ジャパン

再成長へと第一歩
さらなる高みに向けまい進

【2022年を振り返って】
コロナ禍による影響と原料ひっ迫などで生じた事業を取り巻く環境の激しい変化に順応するため、再成長に向けた戦略と施策を打ち立てて推進してきたものの、目まぐるしく情勢は変化し、その対応に追われた厳しい一年であった。メーカーとしてはまず、安定供給を維持するための原材料確保が最優先の課題であったが、需給がタイトな上に材料価格も高騰の一途をたどり、さらには円安進行による原材料などの輸入コストの上昇も追い討ちとなり、従来にも増して厳しい粗利管理の必要性に迫られた。世界的な景気の不透明感が依然として色濃く漂う中、国内については欧米ほど深刻な状況ではないものの、親会社における景気後退局面の強い認識により、フォルボグループ全体で在庫管理の適正化など、キャッシュフローの高度な適正化が急務となっている。経営上、さまざまな制約を受けながらも生産管理・販売管理面とも日々、精査しながら進めていかざるを得ない状況ではあったが、2022年12月期の業績については全社一丸となった取り組みが結実し、売り上げ予算を達成することができ、前年比107%の成長を実現できた。売上計画を達成して、何とか増収増益での着地を見込んでいる。2021年の目標は、まず2019年の水準に戻すことにあり、2022年から再成長への道を歩むというグローバル戦略に基づいて遂行してきたが、何とかそのレベルの販売を達成することができた。しかしながら、利益面については売り上げの拡大に比例するほどは伸びてはいない。原材料の高止まりは当初の想定を超えて推移していることから適正な利益を得るため、さらなる施策が必要となっている。

【需要分野ごとの状況は】
主力需要分野の一つである物流分野が全体の売り上げを大きくけん引した。近年のeコマースの成長によって大手EC事業所の物流施設向けの販売が堅調に推移した。ほかにも既存の物流関係以外の需要先としては、ネットスーパーにかかわるユーザーが倉庫や物流網を整備する動きが活発化しており、需要も販売の大きな追い風になっている。

一方、もう一つの主力となる食品分野についてはまだコロナ禍以前の水準までは戻っていないものの、回復の兆しがうかがえる。当社がこれまで強かった外食産業の拠点、土産物、ギフト市場などにおけるユーザーの稼働率はようやく昨年後半から上がっており、観光需要も一時と比較して勢いを見せていることから、さらなるベルト需要の喚起につながることを見込んでいる。そのほか工業分野については自動車関連が半導体などの部品不足によって顧客の生産が落ち込み、当社の販売にも影を落としている。回復にはまだ相応の時間を要するだろうが、状況が改善していくことに伴ってベルトの販売も持ち直していくことに期待したい。

【今期の計画について】
今年は昨年対比で7%アップの販売増を計画している。現状の成長率を鑑みれば大きな挑戦であることは承知しているが、需要業界を見渡すと物流は堅調さを継続しており、食品分野も半減していた観光需要で徐々に回復の兆しがある。インバウンド需要の激減によって急激に落ち込んだからこそ、今後の復調も早いという見方もあり、高いハードルの計画ではあるが引き続き市場の動向を見据えながら達成していきたい。

【原材料の調達面での取り組みは】
これまで半年先や1年先の需要については、購入予測を提示すれば動いてくれていた原料メーカーも注文を出さないと対応できないため、長期的な注文を出すことで、ある程度の原材料量は確保できている。原材料の調達面および製品の輸入については静岡工場のサプライチェーンに携わる部署が日々、海外原材料メーカーの工場との調整を行っている。ベルトだけではなく、シール製品においても毎週定期的なミーティングを重ねており、当社の製品群の中でも重要度の高いものからサプライチェーンへのプッシュを続け、現状はこれによって原料調達面での不安の解消に努めている。

【今後の拡大に期待をかけている製品は】
ベルト製品については、戦略製品の位置付けであるHACCPコンセプトを支援する「プロサン」をはじめとした搬送・加工工程用ベルト「トランジロン」、軽搬送用平ベルト「エクストレマルタス」、プラスチックモジュラーベルト「プロリンク」などにおいて、食品分野での需要を掘り起こす余地がないか検討を重ねている。また、無心体ベルトの新製品「フルサン」はベルト駆動面と搬送面の両方に歯が付いているタイプのリリースを予定している。そういった顧客ニーズを開発に落とし込んだ製品でラインアップを拡充していくことで差別化の源泉としていきたい。

【代理店向けの製品研修会について】
オンラインを活用した研修会も昨年より再開した。また、お客様の要望に沿った個別でのオンライン研修なども実施しているが、基本的には対面による開催の方が理解度やコミュニケーションの観点から利点が大きいため、今後は対面とオンラインの両方をケースに応じて使い分けながらお客様とのコミュニケーションの拡充を図りたい。

【今年の抱負を】
昨年は起承転結という言葉に例えるなら、まさに“転”の年であったと考えている。再成長へ向けた着実な第一歩を踏み出せたことは何よりであったが、さらなる高みを目指してまい進したい。数値的な目標を達成できていても、中身を精査すればまだまだ多くの課題を残している。今年は一歩踏み込んで「仕事の質」についても一層向上させたいと考えている。具体的な方向性としては中長期的な視点で伸ばしていける需要分野を見定め、製品ごとに立案した戦略を着実な実行へと移していく。そしてお客様との良好な関係を築き上げながら、しっかりと結果に結び付けていきたい。