2023年2月10日

日本ゼオン
2023年3月期第3四半期決算

合成ゴム関連は堅調
化学品関連 前年同期の実績上回る

日本ゼオン(田中公章社長)は1月31日、オンラインを通じて決算説明会を行った。それによると売上高は前年同期比9・5%増の2942億500万円、営業利益は同23・5%減の278億3500万円、経常利益は同20・5%減の310億8700万円、四半期純利益は同33・2%減の182億8300万円となり、増収ながら減益となった。「原料価格は下落したものの、為替は円安が進行した。新型コロナウイルス感染拡大によるリモート・巣ごもり需要の一服感が継続したことで、高機能樹脂部門における工学フィルムなどの需要が振るわなかった」(同社)。

セグメント別の業績は、エラストマー素材事業部門の売上高は前年同期比13・1%増の1673億3300万円、営業利益は同23・4%減の122億900万円。営業利益における増減要因は、販売価格改定による価格差で222億円、為替差益94億円のプラス要因があったものの、原材料価格の影響やエネルギー価格高騰などによる原価差270億円、海上運賃上昇・間接部門費用配賦増などによる販管費差51億円、出荷量減による数量差による33億円といったマイナス要因が大きく収益を圧迫した。合成ゴム関連では、半導体不足などにより自動車生産台数が伸び悩む状況にあって、国内販売は底堅い需要に支えられたことで堅調に推移、合成ゴムの主力生産工場の定期修理に伴い出荷量を調整した結果、輸出販売数量は前年同期の実績を下回った。しかし、原料高騰分などの価格転嫁が進んだことから全体の売上高、営業利益についてはともに伸びた。合成ラテックス関連では、医療・衛生用手袋の流通在庫が引き続き過剰となり需給が緩んだ状況に加え、原料高騰の影響も重なったことで売上高、営業利益ともに前年同期の実績を大幅に下回った。化成品関連では、原料および物流費上昇分の価格転嫁を進めたことから売上高は前年同期を上回ったものの、価格改定の反動と粘着テープ・ラベル向けの需要減や燃料高騰の影響などを受けた。

高機能材料事業部門の売上高は同1・5%増の815億300万円、営業利益は同18・9%減の165億4100万円。営業利益における増減要因は販売価格改定による価格差24億円、為替差益23億円のプラス要因があったものの、原料価格影響および棚卸資産関連費用などにより50億円、光学フィルム出荷量減による数量差で24億円、海上運賃上昇および新規開発費用増などによる11億円のマイナス要因が利益に響いた。高機能樹脂関連では、医療用途向けの需要は堅調に推移したものの、大型テレビ向けなどにおいて顧客の在庫調整が発生、光学フィルムの販売が振るわなかった。電池材料関連では、コロナウイルスによる中国ロックダウンや、LIB原料の調達難および価格高騰による顧客の稼働率低下などの影響を受けたが、販売数量、売上高ともに前年同期の実績を上回った。一方、原料および燃料高騰の影響や新製品開発費用の増加などにより、営業利益は伸び悩んだ。化学品関連では、合成香料、特殊溶剤用途ともに需要が堅調に推移した状況に加え、為替円安の影響ならびに原料および物流費高騰分の価格転嫁を進めたことにより、売上高、営業利益ともに前年同期の実績を上回った。電子材料関連では、年度後半に入り、半導体メーカーの稼働率低下が顕著な影響を受けた。トナー関連では、テレワーク特需の一巡や流通在庫調整の影響を受けたが、為替円安の影響により売上高は前年同期並みで推移。一方、原料の高騰や棚卸資産の評価損などにより、営業利益は前年同期の実績を下回った。

その他の事業部門の売上高は同13・1%増の484億6400万円、営業利益は同27・2%減の14億500万円。子会社の商事部門等の売上高が前年同期の実績を上回った。

通期については、エラストマー素材事業部門において市場環境の影響などによる需要の落ち込みや燃料高騰、高機能材料事業部門において顧客の在庫調整の影響などを受けたことで売上高、営業利益、経常利益が前回発表の予想値を下回る見込みとなり、当期純利益についても、カーボンナノチューブ(CNB)事業における事業計画策定に際して将来の不確実性を検討した結果、第3四半期連結会計期間において減損損失を特別損失に計上したことで修正を行った。その結果、売上高を前期比7・0%増の3870億円(前回予想値4120億円)、営業利益は同37・0%減の280億円(同395億円)、経常利益は同36・3%減の315億円(同445億円)、当期純利益は同44・6%減の185億円(同320億円)を見込んでいる。

CNT事業における減損損失による影響が大きく、高機能材料事業の大きなマイナス要因となったが「CNTは未知数の可能性を備えた素材であり、先端デバイス業界などとともに共同開発を進めている。真価を見極めながらの製品化を進めており、それらの検討期間を含めて需要が予定よりも後ろ倒しとなったことで、減損損失として見込んだ。しかしながら将来的な伸びが期待できる分野には違いない」(同社)。