2023年2月20日

日本ゴム工業会
2023年の新ゴム消費予想

前年、一昨年上回る需要を予測

日本ゴム工業会(清水隆史会長)は「2022年の新ゴム消費見込み」ならびに「23年新ゴム消費予想」を発表した。

それによると22年の新ゴム消費見込みは前年比0・5%減の125万1000㌧と前年よりも減少したが、今年度は同3・8%増の129万8700㌧と予測した。一昨年の125万7100㌧をかなり上回っており、さまざまな不測の事態に見舞われた前年実績がイレギュラーであり、日本経済におけるゴム産業は回復基調から、成長軌道に立ち返っている状況を数値的に裏付けた。前年(22年)は、ウイズコロナへの方針転換により、社会活動の制限が緩和されたことから、前年実績を上回る新ゴム消費量によってゴム産業の復興ぶりを示すものと期待。しかしながらロシアによるウクライナ侵攻、世界的なエネルギー価格や原材料価格の高騰および物価上昇などといった予想以上の向かい風に吹かれた。関連業界においても半導体不足の影響が根強く、国内自動車生産台数は年度後半から回復を示したものの、本来のポテンシャルを発揮し切れなかった。主力の自動車タイヤは、本数ベースでは国内出荷・輸出ともに前年を上回って推移したものの、ゴム量ベースでは前年実績に未達。工業用品についても、自動車生産が遅れた影響から前年を下回った。その一方で今年度は景気回復や半導体不足の解消が進んでいることで堅調な伸びを示すものと予測。前年実績、一昨年実績を上回る需要を予測した。

今年の新ゴム消費量予測を主要製品別で見ると、タイヤ類の生産は前年比3・2%増の105万6890㌧と予測。内訳としては自動車タイヤ・チューブについては、同3・1%増の104万960㌧と見通した。自動車用においては、国内乗用車生産が回復するものと見込まれている状況が背景にあり、市販用についても夏用タイヤ・冬用タイヤともに増加の見通しが立っている。コロナ禍前の19年水準にまで回復するものと読み切った。その他のタイヤ類については、同12・7%増の1万5930と推測。更生タイヤについては、輸送需要の増加や環境志向の高まりによる普及が進むと考えられており、前年を上回るものと判断。その他についても、移動制限の緩和などに伴い、国内外の需要が大幅に回復するものと見込んでいる。

工業用品類の新ゴム消費予想量は同6・7%増の22万3370㌧。内訳は、ゴムベルトについては同2・0%減の1万7720㌧で、主力のコンベヤベルトは国内向けは鉄鋼メーカーなどといった主力需要先の回復により前年を上回る予測を立てているが、輸出向けについては海外景気の低迷による影響から鉱山需要が落ち込むものと見通した。トータルで前年実績を下回ると見ており、コロナ禍前の19年比で7割弱の水準と見積もった。一方、伝動ベルトについては内需は増加、輸出は減少が見込まれるものの、自動車産業および工作機械産業向けの回復も期待されることから、コロナ禍前の水準を上回るものと予測している。

ゴムホース生産における新ゴム消費量は、同5・4%増の3万4690㌧と予測。自動車用ホース(新ゴム消費量ベースでゴムホース全体の約7割を占める)が、自動車向け半導体不足の解消により、前年第4四半期の生産水準が継続するものと見ており、前年実績を上回ると推定した。

その他の工業用品における新ゴム消費量は、同8・0%増の17万960㌧と予測。品目別では、防振ゴムは半導体不足解消による自動車メーカーの生産回復により同8・0%の伸びを見込んでおり、パッキン類は自動車向けなど関連の主要産業が増産する見込みから同5・9%増の見通しを立てている。スポンジ製品も主力の自動車向けで顧客の増産が見込まれていることから同15・2%の伸びを予測。ゴムロールは製紙用において電子媒体化などによる需要減および製鉄用で需要業界における設備統合が進むことで減少傾向をたどっている一方、印刷用では前年比で微増、その他用でも前年を上回るものと見ており、全体では前年並みにとどまると予測した。ライニングは下振れリスクが残り、一部の分野で前年を下回ると見ているが、主力の化学工業用(ソーダ用)、水処理関係などで引き続き大幅増となり、電力関係でも回復が見込まれることから、同10%増と推測。防舷材は先行きに不透明感が漂っているものの、公共事業やリプレースにおける需要が見込まれることから前年並みの水準で推移すると見込んだ。ゴム板はコロナ禍からの回復による成長が見込まれることから、前年実績よりも2・7%上回ると予測した。

その他製品類の新ゴム消費予想量は、同2・8%増の1万8440㌧。ゴム履物はコロナ禍の収束が不透明で、為替の影響など懸念材料があるものの、行動制限の緩和により、需要が回復基調で推移。生産増加が見込まれており、同2・8%増の1120㌧と予測した。

その他のゴム製品についても、新ゴム消費量で同2・8%増の1万7320㌧と増加予想。品目別では、医療衛生用品は新型コロナウイルスの影響が限定的になったことから、販売拡大が期待されることで同2・9%増と推測。運動競技用品は、球技用ボールでは学校行事や各種競技大会の開催回数増加による需要回復、海外需要好調の継続もあって、ゴルフ用ボールも国内外向けで需要増があると見ており同6・1%増と予測した。ゴム手袋は、最も消費量が多い家庭用使い捨てタイプでコロナ禍以降の需要増が継続、作業用についても各業種において需要回復が期待されることから同10・0%増と読んだ。ゴム引布は加工品の大口需要が好調に推移、新製品の本格稼働も進展していることから同8・6%増の伸びを予測した。