2023年3月10日

横河電機
FKDPP活用サービス開始

生産性の向上に貢献

横河電機(本社・東京都武蔵野市、奈良寿社長)は「OpreX Realtime OS―based Machine Controllers(e―RT3)」のオプションサービスとして、装置を制御するエッジコントローラ上で自律制御AI(強化学習AI、アルゴリズム)の「Factorial Kernel Dynamic Policy Programming」(FKDPP)を活用できるサービスを開始する。同サービスは、制御箇所に応じてパッケージや導入支援のコンサルティング、トレーニングプログラムを提供するもので、パッケージに関しては国内および海外においてコンサルティングサービス、トレーニングプログラムについては国内から順次、海外に提供していく。

実プラントでは物理的、化学的な事象が複雑に影響する状況における制御の難しさから、熟練運転員の介入が不可欠な制御箇所が数多く存在。そういった箇所は、品質や収益に直結する難しい制御であるケースも多い。既存の制御技術には、PID制御と高度制御(Advanced Process Control、以下、APC)があり、プロセス産業やファクトリーオートメーションの一部の基盤制御技術で、流量、温度、レベル、圧力、成分などの制御において幅広く一般的に使用。現在の値と設定値との偏差に応じたP(比例)、I(積分)、D(微分)の各動作の計算結果を足し、合わせた操作量で、目標値に向けて制御するもので、特徴から設定値を上回ってしまうオーバーシュートという状態になることがある一方で、オーバーシュートを避けると整定までに時間が掛かるという課題があった。複雑な制御をPID制御やAPCを使って行うためには、長い時間と多くの労力をかけた調整が必要となる場合があった。PID制御やAPCが適用できないことから、運転員による制御となり、使用する操作量を運転員自らが考えて入力する手動制御しかできていない箇所も存在。こうした背景から自律制御AIを活用し、人手に頼ることなく複雑な制御を実現したいという要求があった。

自律制御AI(FKDPP)による制御は、PID制御、APCとは異なる新しい制御技術で、2022年には、このAIを利用し、制御の状態を乱す大きな外的要因(外乱)も存在する状況下、世界で初めて化学プラントにおいて既存の制御手法が適応できず、手動制御以外では対応できなかった箇所を35日間、自律制御することに成功した。

同サービスはこの自律制御AIによってAI制御モデルを作成し、エッジコントローラに実装して活用。導入メリットとしては、AIの高度な専門知識を必要とすることなく、使用者側で制御モデルを生成してコントローラに組み込むことができるよう、使いやすさを追求している。既存の設備を生かしながら、部分的にエッジコントローラを後付けすることによって自律制御AIが適用可能。制御周期は0・01秒から対応しており、高速性が求められる装置の制御にも対応可能としている。

PIDやAPCが組めなかった制御箇所に対し、自律制御AIを適用させることによって自律化と最適制御を同時に実現。外乱に左右されにくい安定した制御ができる。制御対象ごとに効果は異なるものの、オーバーシュートの状態を抑制する。オーバーシュートの不要な加熱などによるヒーターへの負荷を低減する効果から、装置の寿命を延ばす効果が期待できる。PID制御に比べ、整定時間を大幅に短くする目的から、省エネと生産性の向上に貢献。制御箇所によるものの、品質を維持しながらエネルギーの使用量を削減するといった複雑な条件を満たすことも可能となる。

同システムの利用にあたっては、別売りのエッジコントローラ、自律制御AIを用いた学習サービスの申し込み、AI制御モデルを実装するためのエッジコントローラ用ソフトウエアパッケージ、AI制御モデルを実行するためのライセンスが必要。用途に応じて、導入を支援するトレーニングプログラム、関連するコンサルティングサービス、エンジニアリングなどの提供も行われる。

主な市場として資源・エネルギー(石油、化学、天然ガス、電力、再生可能エネルギーなど)、素材(繊維、紙パルプ、塗料など)、エレクトロニクス機器(半導体製造装置など)、食品・農業、製薬、上下水道などを想定しており、温度、圧力、水位/流量制御などの用途で貢献できると期待されている。

価格は汎用OS対応CPUモジュールは要問い合わせとなっており、AI制御ライセンス「SFRL19―MPC(F3RP70用)」が1台につき10万円。AI制御学習サービス「SFRL18―MPC(F3RP70用)」が年間2万円。販売目標(海外を含む)は、年間30ユーザー、600セット。コンサルテーション費用およびトレーニング費用は都度見積りが必要となる。