2023年3月30日

朝日ラバー
FTMTと市場拡大図る

サーモモジュール
相互製品の販売特約店契約

朝日ラバー(渡邉陽一郎社長)は、フェローテックグループの国内事業会社で、半導体等装置関連事業製品、電子デバイス事業製品、車載関連事業製品の製造販売を展開しているフェローテックマテリアルテクノロジーズ(所在地・東京都中央区、寄田直康社長、以下、FTMT)との間で、両社が製造・販売する半導体の電子部品であるサーモモジュールにおける相互販売特約店契約を締結した。朝日ラバーがゴムの知見を生かして製造・販売している柔らかいサーモモジュール「F―TEM(エフテム)」およびFTMTが製造・販売している豊富なサーモモジュール(ペルチェ/ゼーベック素子)のラインアップを両社がともに販売することで、半導体・バイオ・医療・光通信・光学・自動車・民生と多岐にわたる分野で顧客の製品開発における新たな可能性を提案する。

1980年代からサーモモジュールと、そのアセンブリの開発・製造・販売に取り組み、世界トップシェアを誇るフェローテックと、70年の創業以来ゴムの無限の可能性を追求し続けている朝日ラバーが、双方の強みを発揮。朝日ラバーが開発に取り組んできたF―TEMの量産に向けてのめどがついてきたことから、両社が培ってきたネットワークを活用し、多岐にわたる分野においてF―TEMや、各種サーモモジュール製品を起点とした、顧客の製品開発における新たな可能性の開拓に向けて提案していくこととなった。

契約の内容としては、海外のグループ会社を含むFTMTが朝日ラバー製のF―TEMを、朝日ラバーがFTMT製のサーモモジュールを互いの販売網を駆使することによって販売し、新規顧客開拓と製品の拡販、アフターフォローの充実につなげる。また、相互に両社の商標の使用を許諾することによって、製品の信頼性を確保する。

サーモモジュールはペルチェ素子、または熱電素子とも呼ばれる半導体の電子部品で、コンパクトなヒートポンプ部品として機能。直流電流を流すと、表面から裏面へと熱が移動するペルチェ効果が発生し、熱の移動によってサーモモジュールの片方の面が冷却されると同時に、反対の面は加熱される。直流電源の極性を入れ替えると、この現象が逆転し、逆方向に熱の移動が行われることから、同じ面で冷却/加熱のいずれの目的にも使用できる。その機能によってセンサー・制御器と合わせて使用することで精密な温度調節も可能となる。サーモモジュールの表裏面に温度差を付け、電気の取り出しを可能とするゼーベック効果は、温度差が大きければ大きいほど、取り出せる電気も大型化、近年注目されている環境発電である熱電発電モジュール(ゼーベック素子)としてサーモモジュールは機能する。火力発電や原子力発電のように、水蒸気でタービンを回す方式ではなく、発電モジュールの表裏面の温度差により直接発電されることから、環境負荷が小さく、熱源を燃焼させる必要もないことから、CO2削減の一環として大きな可能性を備えている。

サーモモジュールは幅広い業界で使用されており、半導体分野ではデバイス製造に欠かせない精密温調、バイオ分野ではPCRや成分分析、自動車分野では温調シートのほか、レーザー光により対象物までの距離の計測や対象物の性質を特定するシステムであるLⅰdar、先進運転支援システムのADASなど利用範囲は拡大。光学分野ではレーザーダイオードやCCD(デジタルカメラや光検出器などで使用される半導体素子)の温度制御、民生分野では小型冷蔵庫やイオン発生器、これ以外にもウェアラブル・計測・医療・分析などの分野にも使用されている。

F―TEMは、FTMTのサーモモジュールを構成する熱電素子を利用し、朝日ラバーが素子配置を工夫してゴムで覆うことによって、柔らかいサーモモジュールを実現。独自の分子接着・接合技術により、曲げた状態でも安定した効果を発揮することができる。曲面に取り付けることができることから、取り付け先の形状に対応することが可能。衝撃や振動に強く、従来のサーモモジュールでは取り付けられなかった使用環境にも適合できる。自動車分野ではドアアームレスト、センターコンソール、座席シート、ヘッドレスト、カップホルダーなどに使用され、快適性と消費エネルギーの効率化を両立させることも可能にする。同様に電動車いすの背もたれ、ひじ掛け、座面やウェアラブルデバイスなどにも、柔軟で衝撃や振動に強い特性を生かすことが可能となっている。加えて熱電発電モジュールとしては曲面に取り付け可能であることから、配管などの廃熱で発電し、各所で使用IoTデバイス用の電源として用いることなどもできる。

今回の提携でシナジー効果を引き出すことにより、27年には10億㌦に達するとされる世界のサーモモジュール市場のさらなる拡大を図る。