2023年3月30日

【ホース・チューブ・継手特集】
十川ゴム

特殊用途中心の製品を開発
新分野で新技術加味

十川ゴムが手掛けるホース・チューブ事業の状況は、2023年3月期第3四半期(4―12月)の実績が前年同期比2ケタ増となり、顕著な伸びを示した。ゴムホース関係は全体的に好調で、特にガス、食品機械、設備装置、油圧機器、土木・建設機械産業用などが伸長。自動車産業用も前年同期と比較して非常に大きな伸びを見せたが、昨年度の落ち込みが激しかったことから、計画値にはわずかに及ばなかった。樹脂ホースは農業・園芸産業用の落ち込みが大きかったものの、その他の各分野については比較的好調に推移した。

ウィズコロナのムードが定着するにつれ、社会生活や生活環境も通常の状態に戻りつつあり、同社の業務を取り巻く環境もコロナ禍前の状態を取り戻そうとしている。テレワークやウェブ会議の装備が整っていることから、今後も時間の有効利用や仕事の効率化に役立てる。そのため業務の簡潔化や閲覧可能環境を構築した上でデータをち密に落とし込み、効果を有効に引き出せるように注力。加えて、人材におけるスキル向上も重要な項目となっており、分かりやすく魅力的なプレゼンを行うことができる能力を各自が身に付ける。有効性については、ウェブを通じたお客様からの問い合わせが増えるなど、確かな手ごたえを得ており、今後もホームページやウェブを通じたコミュニケーションの充実を図り、情報収集力や時代の変化に対応する感性の向上といった面でも効果を上げる。リアルな面談による助言も素早くくみ上げることによって、お客様が本当に求めている製品開発を推し進める。

製品開発については、これまで中心的なポジションを占めていた大量生産型製品から、ソフトロボット産業関連や特殊金具仕様バンドレスホース、持続可能な開発目標に関する製品など、今後は特殊用途を中心とした世の中に求められる製品開発に力を注ぐ。現在、販売品目全体の約75%程度が特殊用途製品で、汎用品は25%程度になっている。顧客との共同開発品や独自開発品に対しても積極的に取り組んでおり、毎年10%以上の割合で新製品を打ち出している。顧客の開発案件を推進する目的から、シリコーン3Dプリンターや3Dスキャナーの導入に加え、液状シリコーンゴム製造設備や特殊インジェクション設備などを導入した。医療機器産業用設備の拡充、特殊ホース自動成形設備の導入などについても検討中。共同開発はユーザーとの取り組みだけでなく、同社と同じゴム製品や樹脂製品分野のメーカー、異分野企業との共同開発も進めており、それぞれの得意分野を生かしたモノづくりに積極的に取り組んでいる。

EV、医療分野、半導体、第一次産業製品などといった各方面に向け、同社が顧客との製品製造技術によって培ってきた技術を応用した製品、新規素材配合技術によって貢献。従来の匠の技術をAI化した新規設備、クリーンな製造環境による製品製造などといった設備導入についても新たに検討しており、幅広い製品対応が可能な体制を整えていく。

原材料や物流費、ユーティリティコストなどの大幅な高騰が継続的に続いており、世界的な各種原材料不足による需給問題も深刻化。同社としては、安定調達に力を注ぎ、原材料価格の高騰への対応も自助努力によって懸命に取り組んできたが、自社による取り組みだけでは限界を超えるレベルに達していることから、コストアップの推移に合わせた顧客への価格面の依頼を進めている。原材料不足だけでなく、原材料や薬品メーカーなどによる生産中止品目も増えている状況の中、早急な代替原材料の検討、顧客の承認申請作業といった工程も新たに発生しており、原価アップ要因となっている。

環境面への取り組みについては、使用素材を環境対応素材に置き換える展開に目を向け、同社では主に樹脂ホースにおいて適切な素材選定の提案を推進。燃料の空気中への拡散防止の観点から、環境対応超低透過燃料ホースの構造設計にも取り組んでいる。建機などはバイオ燃料使用による流れをくみ上げ、特殊なバイオ燃料に対応したゴム素材配合、構造設計を推進。自動車のEV化の流れにおいても、ホースにおける対応だけでなく、環境に対応する設計を見据えたシート、型物などといった全方位で製品設計を推進する。素材としての要素を見据えて抽出性、絶縁性、耐熱性などといった特性を利用した製品設計に臨んでいる。

不確定要素は強いものの、同社では通期予想として前期比8%程度の伸びを見込んでいる。今後もガス、油圧機器、設備装置、一般機械産業用については比較的好調に推移すると見ており、今後においてもこれらの事業分野に向けた製品の拡販に力を注ぐ。自動車のEV化、建設機械も化石燃料からバイオ燃料へと内燃機関が変化するなど、開発の方向性も多岐にわたっており、同社としては培ってきた独自技術に加え、新分野においてはさらなる新技術を加味しながら、失敗を恐れることなく常に前向きに取り組むことで、ホースメーカーとしての重要な役割を担っていく。