住友理工
新経営ビジョン策定
23年度から3カ年の新中計も
住友理工(清水和志社長)は5月30日、同社が創立100周年の節目を迎える2029年度を最終年度とする経営ビジョン「2029年住友理工グループVision(2029V)」と、2025年度を最終年度とする中期経営計画「2025年住友理工グループ中期経営計画(2025P)」を策定した事を発表。同日、同社グローバル本社が所在する愛知県名古屋市のJPタワー名古屋において開かれた記者発表会では、清水社長と山根英雄常務執行役員らが出席し、新たな経営ビジョンおよび新中計の骨子についての説明にあたった。
同社では2029Vにおいても、グループの理念として掲げる住友事業精神(萬事入精、信用確実、不趨浮利)に則り、高い企業倫理と遵法の精神を信条として事業を推進。新ビジョンで目指すべき企業グループ像としては、前ビジョン2022Vで制定した「Global Excellent Manufacturing Company(常に世界を俯瞰し、社会から必要とされるモノづくりとは何か、自問・探求し続ける企業)」という姿勢を踏襲し、同社の存在意義として〝素材の力を引き出し、社会の快適をモノづくりで支える〟事を念頭にまい進する。同社が2029年にありたい姿とは、「理工のチカラを起点に、社会課題の解決に向けてソリューションを提供し続けるリーディングカンパニー」を目標として「素材力」と「モノづくり」にいっそう磨きをかける。さらには技術領域の深化・融合やオープンイノベーション、アライアンスなどによる価値共創を推進していくことで、モビリティ、インフラ、ライフ&エレクトロニクスといった事業領域において製品・技術・サービスの付加価値拡大につなげていく。こうした施策を中心に、新ビジョンでは2029年度の売上高は7000億円規模、ROICを10%以上、ROEは10%以上の目標数値を設定。コア技術を駆使した製品の拡販によって着実な成長を遂げ、これまで実施してきたグローバル生産拠点の構造改革も引き続き推し進めながら、さらなる収益基盤の強化を図っていく。
非財務的な目標としては、これまで同様にダイバーシティマネージメントの推進、コンプライアンスの遵守の徹底、カーボンニュートラルなど地球環境保全の取り組みにも注力。また人材育成の取り組みについても、同社の将来を担い、未来を切り拓いていく自律型人材の育成に重点を置く。
一方、3カ年の中計2025Pにおいては、25年度には22年度比でグローバルの自動車生産台数が約12%増の9200万台になると想定。これを前提として定量目標としては売上高6200億円、事業利益280億円、ROE、ROICとも8%以上の目標を掲げている。自動車用品、一般産業用品とも22年度比約15%の売上高アップを見込んでおり、事業利益280億円は必達目標として、引き続き構造改革の完遂に力を入れていく。「売上げの着実な拡大もさることながら、利益面では昨年度の実績から30%以上の伸びを達成させていきたい。これまでの5年間でさまざまな事業基盤を構築できたので、これからは収益を刈り取って行く(清水社長)」。
中計の大きなテーマに据えるのは「さらなる収益力向上と持続的成長に向けた経営基盤の強化」。自動車用品においては日系カーメーカーとのパートナー関係をさらに強化し、先行開発などへの参画と提案を推進する。また海外OEMにおいても地域・パートナー別での拡販戦略とEVシフトに追随した高付加価値製品の開発をいっそう加速させていく考え。一般産業用品については、産業用ホースは主力の国内、中国向けに加えてインドやアジア地域など成長市場における需要の取り込みに注力。ほかにもセンシング・水素デバイス・熱エネルギーマネジメントといった特定領域での新商品開発にさらに拍車をかけながら、全体の底上げを図る。
収益戦略の主眼としては北米、欧州、化成品事業など課題となっている拠点への対策に全力をあげる。そういった各種の施策の遂行によって最終利益の改善を進め、より効率的で安定した収益基盤の確立を目指していく。