2023年6月30日

横浜ゴム
亀裂が進みにくいゴム材料

信州大と共同開発
添加剤不使用で高い耐久性

微粒子フィルムの形成プロセス

微粒子フィルムの形成プロセス

横浜ゴム(山石昌孝社長)は、信州大学学術研究院(繊維学系)の鈴木大介准教授らの研究グループと共同で、高分子微粒子(マイクロスケール・1㍃㍍=100万分の1㍍より小さい高分子の粒子)を活用して有機溶剤や補強剤などの添加剤を使わずに、亀裂(クラック)に対して高い耐久性を有するゴム材料を開発した。同研究で得た知見を基にさらに研究を進めることで人や環境にやさしく、より安全で耐久性の高いタイヤやゴム製品の開発につなげることが期待できるとしている。また、開発されたゴム材料は簡単に劣化なくリサイクルすることが可能で、サーキュラーエコノミーへの貢献も期待される。

同研究はエマルジョン重合法の一つで、超音波を照射することによってモノマーと開始剤を水中内で微粒子化した後に重合する方法のミニエマルジョン重合法によって合成した高分子微粒子(以下、微粒子)およびその微粒子分散水溶液(以下、分散水溶液)を用い、分散水溶液から水を蒸発させて作製した高分子微粒子の集合体である微粒子フィルム(ゴム材料)を活用して実施。この微粒子フィルムは複数の分子が比較的弱い相互作用によって秩序高く会合して形成される分子集合体で、分子を集合させることによって分子の機能を制御したり、新機能を発現することができる超分子化合物として知られるロタキサン分子(環状分子に軸分子が貫通し、その環状分子が軸分子から抜けないようにした構造を有する分子集合体)を微粒子の内部に架橋剤として導入することで、補強剤などその他の添加剤を一切使用せずに、切れ目から亀裂が広がりにくい性質を持たせることに成功した。加えて、この微粒子フィルムはゴム材料としての高い伸縮性も維持している。

さらに、微粒子のみから作製された微粒子フィルムは、環境負荷の小さい水とエタノールの混合溶媒に浸すだけで微粒子個々に分解することができる。その後、揮発性の高いエタノールだけを蒸発させて元の微粒子と水から成る分散水溶液に戻すことができるため、同じ微粒子フィルムを簡単に劣化なく再生することが可能となっている。

なお、同成果は米国化学会のLangmuir誌に日本時間6月17日に掲載された。

同研究で作製された微粒子フィルムの切れ目からの引き裂き試験の様子

同研究で作製された微粒子フィルムの切れ目からの引き裂き試験の様子