【夏季トップインタビュー】タイガースポリマー
澤田宏治社長
現場力に秀でたチーム構築
製品拡販で社会、地球環境に貢献
【前期の振り返りと直近の状況について】
2023年3月期の決算については中国を除く日本、米州、東南アジアのセグメントで増収となり、全体の売上高は前年比2ケタの伸びとなった。日本では、自動車部品分野が半導体不足に起因する顧客カーメーカーの減産に伴って販売が減少したものの、家電用ホースやシート製品などの工業用品分野が好調に推移し、自動車関連の落ち込み分をカバーした。また米国、メキシコ、タイ、マレーシアにおいては自動車部品、産業用ホースともに販売は堅調であったが、特に米国やタイでは価格改定の効果と、円安による為替差益の恩恵を受けたことで増収を遂げた。一方、中国では各地で実施されたロックダウンによるマイナスの影響を被り、自動車部品や家電用ホースが減少に見舞われた。顧客日系カーメーカーでは、純然たるEV車を生産していないことも自動車販売の苦戦の一因となっていたが、国家の施策であるNEV(新エネルギー車)購入補助金制度が昨年をもって終了したことで、NEVのシェア変動に伴う現地自動車市場の動きを注視している。
今期がスタートしてから第1四半期を経たが、今後も原材料だけではなく物流費、エネルギーコストの上昇など厳しい事業環境が継続することを想定している。改めて気を引き締めて臨みたい。ただ、多くの需要分野が回復基調に乗っていることから市場全体のムードは決して悪くはなく、自動車分野では顧客メーカーの生産動向に当社の販売も左右されるものの、工業用品は全般的に堅調を維持している。好調であった太陽光発電関係は一服感が漂っているものの、北米向けの産業用ホースの販売が好調に推移しており、一般工業用途のほかにも石油関係や農業用など多岐にわたる分野において拡販が進んでいる。そういった米国の勢いに追随してメキシコの自動車部品はこれまで以上の拡大を見込んでおり、国内の自動車関係についても半導体不足は下期へかけて緩和が期待できることから、この流れに乗って盛り返していきたい。
【現状の課題を挙げるとすれば】
前期においては、昨年実施したホースやゴムシート製品の値上げの効果もあって、原材料をはじめとする急激なコスト増がもたらした営業利益の低下にある程度の歯止めをかけることができた。しかしながら、経常増益を果たしたとは言え、円安進行に伴う為替差益に助けられたというのが実状であり、今後の見通しとしては決して楽観的にはとらえていない。原材料のほかにも物流費、ユーティリティなどあらゆるコストの高止まりが続いており、いまだにコストアップ分をすべて吸収できているとは言い難い。今期も引き続き徹底した業務の見直しを図り、工場の生産性の改善をはじめ、全社的な効率化を推し進める。
また、国内では人口減少を背景とする人手不足が深刻化しており、その対応には常に頭を悩ませている。万全な生産体制を維持していくためにも、採用活動にはこれまでにも増して力を入れるが、同時に生産現場の自動化を推進し、省人化・省力化に向けた取り組みを加速させる。一方、営業職においても、活動の本義としてソリューション提案に軸足を置いていることから、人員の確保だけにとどまらず最大限に機能を発揮できる組織体制を整える。お客様の〝困り事〟に真摯に耳を傾け、当社の製品を通して課題解消のお役に立つため、現場力に秀でたチームを構築して事業の推進力としていきたい。
【製品開発の方向性については】
新製品の展開としては〝持続可能な社会の実現に貢献する〟ことを主眼に、原材料の一部でバイオマス材料を使用したPVC製ダクトホースと透明チューブを、「バイオマス(BM)シリーズ」として昨年8月から市場投入した。ホースおよびチューブ製品にバイオマス原料を採用したのは当社が国内では先駆けであり、地球環境への配慮に関心が高いお客様からは好評を頂いている。環境製品については、今後はチューブやホース以外の製品でも展開していく方針で、当社としては、こういった製品の拡販によって社会と地球環境に貢献を果たしていきたい。
【通期の見通しと今後の展望を】
ウクライナ情勢などに端を発する経済環境の変化や、あらゆるコストの上昇といったさまざまな課題が山積しているものの、決して臆することなく、今期の計画必達に向けて全社が一丸となって取り組んでいる。定量目標としては、売上高を前期比3・6%アップの478億円を掲げており、半導体不足の解消と自動車生産台数の復調に伴って戻ってくる需要を着実に取り込んでいきたい。ここ数年、検討を重ねてきたホース製品の海外展開については、ターゲットとする地域を精査した結果、やはりアジア圏でのスタートとなるだろう。当面は、現地ディストリビューターの力を借りながら輸出製品の販売が中心になるだろうが、いずれは現地生産拠点の設立も実現させ、海外販売拡大の礎となるようなビジネスを目指す。
また、組織のブラッシュアップに向けては、事務系、技術職だけではなく営業サイドでも女性の登用を進めていく。雇用環境の整備という観点だけではなく、例えばお客様と打ち合わせを行う場合でも、先方の気持ちを的確に把握できる洞察力やコミュニケーション力において、女性は秀でた人材が多い。そのような持てる能力をフルに発揮してもらうことで、取引先とのミーティングや社内での討議においても、より活性化につながっていくことを期待している。