2023年8月5日

【2024年3月期第1四半期決算】
日本ゼオン

利益重視の販売実施
前回発表予想数値上回る

日本ゼオン(豊嶋哲也社長)は7月27日、「決算説明会」を行った。それによると、当期の売上高は前年同期比5・8%減の919億2700万円、利益面では営業利益は同43・0%減の61億1400万円、経常利益は同35・8%減の83億600万円、四半期純利益が同33・0%減の58億3500万円となった。市況回復の動きは依然弱いものの想定為替レートに対して円安で推移、エラストマー素材事業部門において利益重視の販売を実施し、加えて全社でコスト低減に取り組んだ結果、売上高は前回公表予想値を上回った。利益面についても前回発表予想値を上回った。

セグメント別では、エラストマー素材事業部門の売上高は前年同期比2・5%減の522億1800万円、営業利益は同39・3%減の24億6400万円。営業利益における増減要因は、為替差益11億円、出荷減による販直費減、海上運賃軟化における14億円のプラス要因があったものの、合成ゴム、ラテックス、化成品とも出荷減による数量差で16億円、エネルギー費用高騰による原価差15億円、販売価格改定(合成ゴムアップ、化成品ダウン)による価格差で10億円といった収益圧迫要因が上回った。合成ゴム関連では中国景気減速に伴い、出荷は伸び悩んだものの、為替影響や棚卸資産関連費用の戻し入れなどにより全体の売上高、営業利益を押し上げた。合成ラテックス関連では、医療・衛生用手袋の流通在庫が引き続き過剰で需給緩和となり、売上高、営業利益ともに前年同期の実績を下回った。化成品関連では、景気悪化に伴う粘着テープ・ラベル向けの需要回復遅れによる出荷減およびこれに伴う販売価格対応などにより、売上高、営業利益ともに伸び悩んだ。

高機能材料事業部門の売上高は同16・2%減の251億9600万円、営業利益は同42・7%減の39億9800万円。営業利益における増減要因は、化学品、光学樹脂販売価格改定による価格差による11億円、為替差益により3億円のプラス要因があったものの、電池材料、光学フィルムなど出荷減による数量差で34億円、エネルギー費用高騰、定修生産減による製造固定費単価悪化による原価差で8億円、新規開発費用増といった販管費増による1億円の収益圧迫要因があり、前年同期の実績を下回った。高機能樹脂関連では、大型テレビ向け光学フィルムは回復基調にあるものの、スマホ、モバイル端末向け光学フィルムについてテレワーク特需の一巡および経済不況による需要減からの回復の動きが依然弱く、高機能樹脂関連全体の売上高、営業利益ともに前年同期の実績に届かなかった。電池材料関連では、出荷は回復基調にあるものの、中国における需要の落ち込みによる現地在庫調整の影響を受けた。化学品関連では、合成香料・特殊溶剤ともに主力生産工場の定期修理に伴う出荷量調整を行ったことなどにより、売上高、営業利益ともに前年同期の実績を下回った。電子材料関連では、半導体メーカーの稼働率低下の影響を受け、売上高、営業利益ともに伸び悩んだ。トナー関連では、テレワーク特需が一巡し、売上高、営業利益ともに前年同期の実績を下回った。

その他の事業部門の売上高は同1・8%増の153億7400万円、営業利益は同51・0%増の6億3700万円。子会社の商事部門などの売上高が前年同期の実績を上回った。

通期については、エラストマー素材事業部門で利益重視の販売を実施したことなどにより、直近公表の予想を修正。売上高を前期比1・4%増の3940億円(前回予想値3990億円)、営業利益を同1・2%増の275億円(同240億円)、経常利益を同0・3%増の315億円(同260億円)、当期純利益を同122・3%増の235億円(同190億円)と見ており、増収増益を見込んでいる。