2023年9月10日

島津製作所
マイクロプラスチック抽出・回収処理を自動化

世界初の自動前処理装置
MAP―100を発売

島津製作所(山本靖則社長)は8月31日、マイクロプラスチック自動前処理装置「MAP―100」を発売した。新製品は海や河川、湖沼など環境水中のマイクロプラスチックの抽出・回収工程を自動化した専用前処理装置で世界初の装置となる。機器によるマイクロプラスチック分析の前には、夾雑物や表面に付着する物質を除去する工程が必須で、これまで煩雑で手作業が中心だった前処理工程を装置に置き換えることによって「業務の効率化」「前処理結果の品質向上」「安定した再現性」「安全性」の確保につながる。
MAP―100

マイクロプラスチックは、波や紫外線などによって砕かれ、5㍉㍍未満となった微細なプラスチックで、生物が摂取して臓器に蓄積することで、人体をはじめとする生態系全体への影響が懸念されている。その分布実態の把握には、試料(環境水)に含まれるマイクロプラスチックの特定が不可欠。正しい結果を得るためには、規定に従って採取した試料から夾雑物やプラスチック表面に付着している物質を取り除く前処理が必要となる。マイクロプラスチックの前処理は、草木や微生物など有機物を溶かす「酸化処理」と、砂や粘土といった無機物を分ける「比重分離」で成り立つ。手作業中心の前処理は煩雑で難易度が高く、工程の効率や品質にバラつきがあるという課題があった。MAP―100は、環境水から得られるマイクロプラスチックを含む試料に対し、両工程および試料に含まれる粒子の回収までを自動で実施。新製品は、環境省が今年3月に公開した「河川・湖沼マイクロプラスチック調査ガイドライン」の附随書において「標準的仕様作成のために検討した装置」として掲載されている。

島津製作所は、プラスチックの種類を判別するフーリエ変換赤外分光光度計や、個数や形状を測定する粒子画像撮影装置など、マイクロプラスチック分析に活用可能な製品を多数販売。マイクロプラスチック分析の入口となる前処理工程を新製品によって自動化することによって、多角的な環境調査・研究に貢献していく。

MAP―100の特長としては、煩雑な手作業を専用前処理装置に置換。マイクロプラスチック分析の前処理は手間が多く、ピンセットを用いて処理後の粒子を捕集するなど煩雑な手間を伴っていたが、MAP―100は自動で流路を制御して微細なプラスチック片を取りこぼすことなく捕集する。作業の属人性を排除し、信頼性の高い分析につなげるだけでなく、酸性試薬を扱う頻度の低減により安全性を高めた。

MAP―100による前処理は環境省の河川・湖沼マイクロプラスチック調査ガイドラインに準拠。標準的なマイクロプラスチック分析の前処理工程を装置で自動化することによって、マイクロプラスチックの分布実態の把握に貢献していく。

試料に含まれる夾雑物の量や状態によって、酸化処理の時間などといった条件の設定が必要とされていたが、MAP―100の制御ソフトウェアはシンプルな画面で構成されており、各条件を直感的に設定可能。処理の進ちょく状況や完了予定時刻を確認できることから、業務効率を改善する。

希望販売価格(税抜)は200万円からで、販売目標は発売後1年間で国内外合わせて20台。

【煩雑な手作業を専用処理装置に置き換え】

【煩雑な手作業を専用処理装置に置き換え】